第8話 初旅 -遭遇-

10分ほど、購買でジュースを飲んで過ごした。


やがて、講堂の渡り廊下が賑わってくる。


どうやら、始業式が終わったようだ。


その喧騒は、購買までやってくる。


通例通りならこのあとSHR《ショートホームルーム》で今日は終わる。


そのSHRは、10分くらいのインターバルを挟んだ後にある。


だからか、購買にも長々と続いた式の疲れを癒すためか所狭しと生徒が入ってくる。


僕は、購買を出ることにした。


そして、購買から出ようとしたときだった。


「あの?君ちょっといい?」


そんな声が聞こえた気がしたがどうせ僕の事ではないと思って歩を進める。


「ちょっと待ってよ」


僕は、購買を出る。


誰かが僕の後ろをついてくる。


視線を後ろに向ける。


ただし、気づかれないように。


そこにいたのは、今一番会いたくない奴だった。


前嶋 瀬里。


どうやらさっきから僕に話しかけていたのは彼女だったらしい。


でも、「君」とか言っていたから話しかけた相手に気づいていない?


こいつは、相当に薄情な奴だったんだと思い知らされた。


そして、瀬里は僕の袖を掴む。


「何か用ですか?前嶋さん」


僕は、「瀬里」ではなく、「前嶋さん」と呼ぶことにした。


嫌悪感を表すように睨むようにして。


「あれ?私のこと知ってるの?

前嶋 瀬里っていうの。貴方の名前は?」


「はぁ?お前バカなの?

僕は、お前にフラれたんだから関わってくるなよ。

うんざりしてるんだから」


そう言って、僕は瀬里の手を振りほどき教室へと向かった。


ただし、チャイムが鳴るギリギリまで男子トイレに篭り、直前で教室の自分の席に座るのだった。

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