第4話 初旅 -屋上-

息を細めていると上がってきた人物の顔が見えた。


といっても、まったく知らない顔。


ネクタイのラインからして、2年・・・同級生か。


うちの学校は、女子が赤いネクタイ。男子が青いネクタイ。


学年ごとに斜めに、黄色、ピンク、水色のラインが入っている。


僕ら、2年は黄色のラインが入っている。


彼女は、黒髪を三つ編みにしていて如何にも学級委員!って感じの見た目だった。


眼鏡もしている。


とてもじゃないけど、いい意味で目立たないタイプだ。


「あれ?先客がいたのね・・・えっと?」


「ごめん、なんか今日は逃げていてね。


僕は2年A組の新藤 尚弥」


「え!」


僕が名前を告げると、彼女はひどく驚いていた。


なんだろう?


「どうかした?」


「私の知ってる新藤くんって・・・そのもっと弱弱しくてオタクくんだったはずなんだけど」


「ああ、僕を知っていたのか。

たぶん、それは夏休み前までの僕だね。

夏休みまるまる使って自転車旅行に行ってきたんだよ」


そう言うと、彼女は絶句していた。


この子は、誰なんだろう。


僕にこんな知り合いはいなかった気がするけど。


でも、どこか懐かしい雰囲気がする。


「凄い見違えたね、凄くカッコよくなってる。

そこまで変わると奇異の目を向けるはずだよ。

すっごい、イケメンになってるもの」


「そうなんだ、自分ではわからないや」


「そうなの?あ、私は2年B組の篠田 未桜みお


隣のクラスなのか。


僕、そういえば瀬里以外の知り合いいないから知らない同級生の方が多いな。


クラスメイトですら、把握できてないし。


「僕たち接点はなかったよね?」


「ないけど、前嶋さんとよく一緒にいるのを見ていたから」


「ああ、そう言うことか」


確かに、瀬里とはよく一緒にいたな。


幼馴染みとして彼女とはよくつるんでいた。


まあ、今となっては迷惑だったんだと思うけど。


この旅行で彼女への想いは完全に断ち切れていた。


さっきは、視線は気にはなっていたけど瀬里に何かしたい気持ちはもう起こらない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る