休日っていい言葉だよね

 なぎとのコラボを終えてからも毎日学校に通いつつ配信をしていた皙だったが、今日は配信をしないで一人で買い物に出掛けていた。日用品や食料を買うだけではなく、今日は趣味の一つであるピアス巡りをしにきており、皙は楽しそうな雰囲気を周囲に撒き散らしながら街を闊歩していた。


 やっぱりたまにするピアス巡りは精神を落ち着かせてくれるな


 すれ違う人たちからするとまったく落ち着いている様子は見られない。客観的な視点を持つことの重要性が確認できるが、当の本人はこれから出会うピアスのことで頭がいっぱいだろう。


 アクセサリー店に着き一通り並んでいるピアスを眺めていると、若い女性店員が話しかけてきた。


「失礼致します。本日はピアスの方をお探しになられていらっしゃいますか?」


「はい。ロングバーベルを買おうかなって考えているんですけど、そこにもう一つアクセントがある感じのってありますかね?」


「そうですね...こちらなんてどうでしょうか?」


 そう言って店員が見せてきたものは、ロングバーベルとフープがチェーンで繋がれたものだった。


「お客様が今つけていらっしゃるものとはまた少し異なる魅力がある品になっています」


「うわっ、えっぐ!!めっちゃかっこいいですね!これ買います!!!」


「かしこまりました。お値段の方は・・・」




「店員さんのおかげでいいものと出会えました!今日はありがとうございました!!」


「っお求めのものが見つかって良かったです//またのご利用を心よりお待ちしております」


 満面の笑みで店員さんに感謝を伝え店を後にした。気分が良いから買い溜めする冷凍食品の量は普段の半分にして、自炊に挑戦してみようかな。



 帰宅した皙はレシピを見ながら料理に挑戦していた。料理初心者でも簡単に美味しくできるものを選んだので、自炊の入門としてはマッチしているだろう。できあがるまで少し時間があるので、皙は買ってきたピアスを机の上に置いて様々な角度から鑑賞していた。


「いやぁいい買い物したな!しかも自炊まで始めちゃって!!俺めっちゃ充実した一日過ごしてるな〜」



 自画自賛しながらピアスを眺めていると料理ができあがり、その出来の良さに舌鼓を打っているとあっという間に完食していた。想像していたよりもはるかに手間がかからなかったので、皙はこれから徐々に自炊の頻度を上げていくことを視野に入れた。



「...満足してるはずなんだけどな。なんか物足りないというか寂しいというか」


 充実した1日を過ごしたと思っていたのに、ふと落ち着いてみると何かが欠けているように感じた。理由は考えずともすぐに分かった。毎日当たり前のように行っていることが一日の中から抜け落ちるとこんな風に感じるのだと。


「今から配信するって告知するか。速攻枠立てて何やるかはそのあと決めよう」


 配信活動がすでに生活の大部分を占めていることを再確認しつつ、皙はパソコンを立ち上げて配信開始ボタンを押した。



「おっす〜。何やるかは全然決まってない。」


コメント

【おっす】

【おっすおっす】

【まじでゲリラだね】

【今日何してたん?】

【アンケート取ろうぜ】


「今日は買い物行ってからなんと自炊してみたんだよ!!最近のウェブサイトって凄えのな。初心者でも簡単なレシピがゴロゴロあんの!あー、アンケートいいね。今から選択肢作るからちょっと待ってろ〜」


 アンケートの結果でやることになったゲームを楽しんでいると、その日の配信もまた日を跨いでいた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る