かわいい動物とは

 特に詰まるところもなく最初のステージをクリアしたなぎとなつだったが、次のステージへ進んだことで一瞬言葉を失う。可愛らしさ満点の雰囲気から一変ホラー映画もかくやといった恐怖演出が二人を襲った。


「嫌な予感はしてたんだよ!ただかわいいだけで評判になるはずないよなって!!あ“ぁ”こっち来んなぁぁ!!」


「もうちょっと引きつけといて!あと少しでアイテム集まるからね!!」

「無理無理無理急いでハリーアップ!!」


 先程まではデフォルメされた熊がじゃれあいのように追いかけてきていただけだったが、現在はホラーテイストに描かれたキメラのような生物がプレイヤーを本気で捕食するためだけに追いかけてきているのだ。恐怖を感じざるを得ない。


「なぎお前次からはちゃんと下調べしてから持ってこいよ!!!今日はまったりゲームできると思ってたのに緩急エグすぎて頭がおかしくなあぶねええぇぇ!!!おいこのバケモノ足早すぎだろ止まりきれてないぞ!直線入ったらゲームオーバーほぼ確だな!!」


「あははは!ひひっ!なっ、なつが楽しそうで私もすっごい楽しいよ!!」


「ありがとよ!!!その綺麗な目には何が映ってるんだろうな!!」


「はしゃいでるなつしか映ってないよ!!はいアイテム集まった!出口前いるから頑張って!!!」


「ナイス!マップ分かれば結構余裕あるな。安全マージンどのくらいかだけ調べとくか」


 そう言った皙は追われているにも関わらず後ろを振り向き、具体的にどれくらいの早さで突撃してくるかを計り出した。


(このくらいまでは大丈夫そうだな)


 化け物がぶつかる瞬間に脇道にそれたことで、勢いがついたまま皙の横を通り過ぎていく。


「おい怖すぎだろこのゲーム!小さい子がやったら100%トラウマになるだろ!」



コメント

【なぎちゃんほんまにかわいい】

【うっ】

【本人たちにその気がないのは分かってるけどさ...】

【この二人からしか得られない栄養ってあると思うんだ】

【ここで振り向く!?】

【こいつ何やらせても上手いな】

【ゲーム理解度が高すぎる】

【怖がってるのにプレイだけ冷静過ぎるだろ】



 そのまま出口へと進み2つ目のステージをクリアした二人はその後も難なくゲームを進めていき、配信開始から数時間で最終ステージまで到達していた。そしてなぎがすべてのアイテムを集め終わり、皙は出口の前に向かっていた。


「いろんなギミックあったけどやっぱりマップリフレッシュが段違いでキツかったな」


「結構運も絡んできてたもんね!突然マップが変わって直線の真ん中に居たら流石に厳しかったな〜!!」


「よし到着。さっさと脱出しちまうか」


「あれ?アイテム一個使ってないのにもう終わりなのかな?」


「え?余ってんの?」


 どんなアイテムが余っているのか聞こうとするとムービーが始まった。


 深い闇が広がる長い通路から化け物が二人に全力で向かってきている。万事休すかと思考を張り巡らせていると、なぎのアイテム欄が光り出す。きっとこのアイテムを使って解決するのだろう。そのアイテムとは


「ショットガン!?え!?やるのこいつのこと!?」


「出来るだけ引きつけてタイミングよく撃つのかな?」


「冷静すぎないなぎさん?なんでそんなに覚悟決まってるの?」


「えい」


 気の抜けた声と同時に引き金は引かれ、化け物は二人の目の前で爆散した。そのまま脱出口を進み、ゲームが暗転しスタッフロールが流れ出す。


「なつが最初にあの子の動きを観察してくれてたから落ち着いて撃てたよ!やっぱり私たちのコンビネーションは最高だね!!」


「...そうだね。あっ、実績解除された。『シリアルキラー』だってさ」


「解除条件は最高のタイミングで引き金を引くことみたいだよ!バッチリだったね!!!」


コメント

【かわいい()】

【躊躇いが一切ない素晴らしい射撃でしたね】

【結局一回もゲームオーバーならなかったな】

【連携が上手過ぎるんよ】


「いやぁまさかホラー系だとは思わなかったね!怖がってるなつかわいかったし面白かったよ!!」


「次はジャンルだけでも調べてきてくれよ。」


「ふひひっ!」


「...まぁいいか。今日の配信も見てくれてありがとう。良ければ俺となぎのチャンネルを登録してくれるとめっちゃ喜びます」


「今日のコラボもありがとねなつ!また今度コラボするからその時もみんな見てね〜!!お疲れ様!」


「おつ〜」


 皙は配信終了ボタンを押して深く息を吐く。そして軽く伸びをしてなぎに確認を取る。


「配信切ったぞ。今日もコラボしてくれてありがとな」


「あっ、...今配信切ったよ。なつのデレ聞かれちゃった!」


「そんなんじゃない。別に気にしてないから大丈夫だよ」


「ありがと!次のコラボいつにする?予定入ってない日だったらなつに合わせれるよ!!」


「あー、それじゃああとで大丈夫な日教えてもらえる?」


「おっけー!送っとくね!!」


次のコラボ予定について軽く話し合い、その日の通話は終了した。

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