この学生配信者、ゲームが上手すぎる!

@vamflo

二足の草鞋

 机の上に置いたデジタル時計は既に日を跨いだことを告げている。


「じゃあお疲れ様〜。お前らもちゃんと寝ろよ」


 俺は流れるコメントを見ながら配信終了ボタンを押した。


「明日は1限からか。最悪だな...行かないって選択肢もありか」


 なんてことを考えながら脱衣所へ向かう。


「風呂入ってさっさと寝よ」


 鏡に映る見慣れた自分の姿

 常磐 皙(ときわ なつめ) 今年はたちになる19歳の男

 動画投稿サイトPtubeのチャンネル登録者数90万人超えのストリーマーでありながら、都内の大学に通っている学生でもある。

 白い髪に赤みのかかった黒い眼。身長は182cmジャスト。そして


「やっぱこれかっけぇな」


 耳から外したピアスを見て満足気に笑みを浮かべ、ケースに仕舞ってからシャワーを浴びる。

 ついさっきまでやっていた配信や明日の学校のことを考えているとあっという間に体を洗い終わっていた。



 風呂を上がった後、あくびをしながら布団に入る。疲れが溜まっていたのかすぐに眠ってしまった。




 翌日の学校は2限で終わり、皙は配信をするためにすぐ帰宅した。そしてパソコンを立ち上げると、よく知っている相手からの通知が届いていた。


「今日のコラボは15:00からだからね!30分前にはおしゃべりするよ!」


 今の時刻は13:30なので昼食を食べて少しゆっくりする時間はありそうだ。


「自炊もしていかなきゃだな」


 冷凍食品を食べ終わりスマホを見ていると、約束の時間に差し掛かっていた。コラボ用のサーバーを見ると、すでに相手は通話を開始しているようだ。待たせていることに申し訳なく思いながら、急いでイヤホンをして通話に参加した。


「おっすおっす」


「おはよーなつ!学校行ってたんだっけ?お疲れ様〜!」


「おうありがと。そんで今日やるゲームはインストールしといたけど、これで大丈夫だった?」


「…うん大丈夫!すっごい評判良いからなつと一緒にやってみたいなって!なんで評判良いかは知らないけど」


「またかよ…この前みたいな虚無ゲーじゃないだろうな」


「あれはあれで楽しかったけどね!今回はどんなのかな〜」


 今日のコラボ相手は「なぎ」という名前で活動している同い年の女の子だ。顔出しをしておりその容姿の美しさに男女問わず魅了され、配信を見にきて彼女のトークにさらに惹き込まれるという風に視聴者を無意識に沼らせる天性の配信者、それが「なぎ」。



 二人がなんてことのない雑談をしていると、予告時間を迎えようとしていた。もう長いこと活動をしてきたので緊張することはないが、気合を入れるために少し深く呼吸をする。


「じゃあ始めよっか!」


「おっけ」


「みんなおはよ〜!!ウルトラ美少女のなぎちゃんだよー!」


「やかましい。はい、なつです。今日もなぎが持ってきた全く知らないゲームをやっていくぞ」


コメント

【おはよ〜!】

【ウルトラ美少女なぎちゃん】

【なつもっと優しくしろ】

【こんなつって言え】

【なぎちゃんまた知らないゲーム持ってきたのかw】


「ほら言われてるよ!もっと優しくしてくれていいんだよ?」


「リスナーさんが優しくしてくれてるから俺まで優しくしたらなぎが傲慢に育っちゃうだろ。なぎのためだよ」


「そうなん!?わ〜ありがとなつー!!」


「な?こんなもんよ」


コメント

【同い年ですよね?】

【親面すんな】

【かわいい】

【かわいい】

【うーんこれはなぎ検定1級】


「じゃあ早速やっていこっか!話題になってるからリスナーのみんなにも知っている人多いんじゃないかな?」


「『Happy animals! Hide and seek 』っていうんだな。動物とかくれんぼするゲームなのか」


「絵柄めっちゃかわいくて目に入った瞬間これやるっ!ってなったんだ〜!」


コメント

【あっ】

【おっと】

【かわいい絵柄だな】

【えっ】

【これか】


 ...なんだ?コメ欄の雰囲気が変わった?


「二人で協力しながら鬼に見つからないようにマップに散らばっているアイテムを集めて行くってゲームなんだね!」


 まぁいいか


「鬼を挑発して引きつけるとかもできるっぽいな。とりあえず二手に分かれてアイテム集めていくか」


「おっけー!」


 よくあるゲームの絵柄をかわいくしただけか?それだけで評判になるとは思えないけど...ここから特徴とかでてくる感じか?



 そして数分後、皙の予感は的中した。

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