蒼の中から

 どこからともなく、声が聞こえる。


「……き…………じょ……ぶ…………」


 今にも消え入りそうなその声が頭の中で優しく反響して、それが自分に向けられているものだと認識すると、頭の中が少しずつハッキリしていく。


「……きて……起きて…………」


 身体全体で重力を感じる。それはいつもよりふわふわとしているような気がして、やわらかく自分の身体を引いている。起きて、とその言葉で意識がなくなっていたことに気づき、瞼をゆっくりと開ける。


「……! 起きた……だいじょう、ぶ……?」


 瞼を開くと、青みがかったような光とともに、先ほどから聞こえていた声の主であろう可愛らしい顔が、目の前で心配そうにして私の目に入ってきた。


「ん……ここは……?」


 その子にぶつからないようにゆっくり身体を起こす。ぼやける視界でその声の主を見ると、小さな女の子だった。フリルのあしらわれたふわふわのドレスを身に纏っていて、お人形のような可愛らしさ。その子は地面にぺたんと座り込んで私を見つめている。長く流れる深い青の髪の毛は地面についている。


 続けて周りを見渡した。草むら、というよりかは、庭みたいだ。綺麗に手入れされた色とりどりの花が行儀よく並んでいる。少し見ただけでもとてつもなく広く、花畑といった方が正しい気がした。


「えっと……私の……お家の、庭……だけど…………あなたは……どうして……ここに、いるの……?」


 眠くなりそうなほどゆったりとした優しい声色に尋ねられる。私は数瞬自分の頭の中を巡って、その質問にぽつりと答える。


「どうしてって言われても……ごめん、わからないや。……また、記憶が抜け落ちてる」

「……? 記憶……?」

「ああごめん、気にしないで!」


 独り言で小さく言ったつもりのそれはその子に聞こえていたみたいで、手を振ってそれを忘れさせる。


 ここに来るまでの記憶はない。一生懸命に思い出そうとして思い出せたのは、朝起きて服を着替えてご飯を食べて……そんないつも通りの日々を過ごしていたことくらいだった。私は今の状況を確認するために先ほどよりも慎重に周りを見渡す。


「……えっ!?」


 上を見上げたとき、目の前に広がっている景色が現実じゃないような気がした。なぜ先ほど見渡したときに気づかなかったのかわからなかった。


 ――空に、海が広がっていた。魚が悠々と泳いでいて、水の中で光がゆらゆらと揺れながら淡く反射している。遠くに行けば行くほど青が深くなって、そのまま眺め続けていれば、魂が深海に吸い込まれてしまいそうな気がした。


「どうしたの……?」

「いや、だって、海が!?」

「……? 海は……いつも通り、だよ……?」


 その子が不思議そうに首を傾げるのを見て、私は上を指差しながら固まった。なに当たり前のことを言っているんだこの人は、という顔で見つめられて、まるで別世界にぽつんと一人で迷い込んでしまったみたいだ。そしてその世界では空が海なのが普通らしい。


 もう一度見上げると、海の中に悠々と月が浮かんでいる。それを見て私は思考が停止してしまい、一縷の望みをかけるかのように私は自分のほっぺたをつねった。


「痛っ……」

「だいじょうぶ……!? いきなり……どうしたの……?」

「あーいや、ちょっと確認をね!」


 その奇行の結果は頬に痛みを加えただけだった。古くから伝わる夢と現実の判別方法を信じるならば、多分、今のこの状況は現実。もう一度上に浮かぶ月を眺める。私がいるこの場所は、海の中なのだろうか。そうであるなら濃い青が広がる空を見るあたりかなり深い場所に感じる。なのに、月はやけにはっきりと浮かんでいて、水面に映るかのようにゆらゆらと揺れている。息だっておかしいくらいいつも通りだ。しかし、私に海へ潜り込んだ記憶はない。それに、月以外の普段空に映るものはない。こんなにはっきりと月が見えるのならば、星だって一等星くらいなら見えてもおかしくないだろうに。私は戸惑いながらも深呼吸をして、その子に色々尋ねてみることにした。


「えっと、ここってどこ?」

「……? さっきも、言った……私の家の……庭……」

「あーいやそうじゃなくて。この、海に囲まれた、この場所のこと」

「……? ……あ……街の、こと……? えっと……『アランヴェール』っていう……街……」

「アランヴェール……ごめん、わかんないや」


 別段地理に詳しいわけではないけれど、少なくとも自分の住んでいた街の近くにはそんな名前のところはなかった。でも、海の中にある街なんて、普通は有名になりそうだが。


「お嬢様ー! どこに行かれたんですかー!」


 ふと遠くから女性の声が聞こえて、目の前の女の子の身体がビクッと反応した。


「……っ! 隠れて……!」

「えっ、ちょ、なに!?」


 途端その子が慌てた様子で立ち上がり、私を無理やり立ち上がらせて近くに立っている大きな木の幹の裏に押し込んだ。


 私の身体よりも大きなその木は、庇うように私の身体を隠した。それと同時に、後ろにある渡り廊下のようなところから、メイド姿の女性が駆け寄ってきた。


「お嬢様! こちらにいらしたんですか。もうお休みになられる時間ですよ。……今日もまたお花を眺めていらっしゃったんですか?」

「ナギ…………うん……綺麗、だから……」


 ナギ、と呼ばれたメイドさんはその女の子と同じくらいの深い青の髪の毛をしており、それ以外にも顔立ちや声などもどことなく女の子に似ている気がした。そのメイドのナギさんは困った様子で少し腰を曲げて小さいその女の子に目線を合わせている。


「綺麗なのはわかりますけど……パジャマ姿のまま夜のお外に出られては、風邪をひいてしまいますよ? それに、寝る時間が遅くなっては、身体にも悪いですし」

「わかってるから……もう少しだけ……」

「だめです! ほら、帰りましょう?」


 そう言ってナギさんはその女の子の手を取って連れ戻そうとする。私は待って、と口から出て行きそうだったのを寸前でバレてはいけないと呑み込んでじっと見ていることしかできなかった。


「待って……お願い…………もう少し……あと少し、で……いいから……」


 するとその女の子が一生懸命綱を引くかのようにナギさんに抵抗する。その様子にメイドさんは少し驚いている。


「お嬢様がそんなにわがまま言うなんて、珍しい……しょうがないですね、あと少しだけですよ? 少しでも長くなったら、そのときは問答無用で連れ戻しますからね」

「うん……ありがとう…………ナギは、戻ってて……」


 そう言うとナギさんは少し困った顔でその子にぺこりと頭を下げるとどこかに行ってしまった。


 いなくなるのを最後まで見届けると、私の方に向かってその子が手招きをした。


「もう……出てきても……いいよ……」

「いいの? 戻らなくても」

「だって……あなたが、心配…………帰るところ……あるの……?」

「あ……」


 言われてみれば確かにない。空には月が高く浮かんでいるし、さっきナギさんも遅い時間だと言っていたし、今はもうベッドに入るような時間なのだろう。元いた場所への帰り方もわからない以上、どこかに泊まらないといけない。


「やっぱり…………ついてきて……私の部屋に……泊まって……」

「さすがに悪いよ! だって、赤の他人だよ? それに、さっきのメイドさんだって……」

「大丈夫…………困った、ときは……お互い、様……」

「えぇ……? そういう問題じゃ……」


 そう言いかけると、その子は小さな子供がくいくいと引っぱるように私の服の袖を下から引っ張ってきて上目遣いで私の目を覗いてくる。


「こっちに……抜け道が……ある…………ついてきて……」


 その視線に負けた私はなし崩し的にその子の部屋に泊まることになった。



***



 庭の裏側の壁と壁の間に隠れるようにひっそりと通っている道を進んで、少し行ったところの壁に穴の空いた部分があるのでそこに入ると今度は倉庫のような暗い場所に出て、その中にあった上の段に繋がっている梯子を登って、また穴が空いている場所があるのでそこを通り、この穴を防ぐように居座っている壁をその子が動かすと、今までの埃っぽい場所とは違う綺麗で上品で、可愛らしい部屋に出た。


「けほっ、けほっ」

「だいじょう、ぶ……?」

「大丈夫。ちょっと埃っぽかっただけだから。って、うわぁ、広い……!」


 その部屋が目に飛び込んでくると、感嘆の声が自然と漏れ出てきた。普通の家のリビング一個分くらいありそうなその部屋は、淡いピンクを基調として、華やかな、されど派手すぎない装飾で彩られている。真ん中には天蓋付きのベッドが置いてあって、とてつもない広さを誇っている。後ろを振り返ると部屋の隅っこに先ほど通ってきた穴が一際異質に空いていた。その隣には本棚があって、それをその女の子は穴を隠すように動かした。なるほど、先ほどの壁は本棚の背中だったのか。


「申し、訳……ない……けど……ここに……隠れてて……」


 女の子は本棚で穴を隠し終えると、本棚とはの反対側にある隅っこのクローゼットを開いて、そこに入るように促した。


「え? どうして?」

「ナギが……あ、えっと…………メイドが……くるから……」

「ああ、さっきの人。わかった。頑張って音立てないようにするね!」

「うん……ナギがいなくなったら……呼ぶから……」


 私はクローゼットの中に入る。人一人余裕で入ってしまえる大きさで、座り込んでも窮屈じゃない。クローゼットの中には女の子が着ていたような可愛らしいふわふわな服がたくさんあって、ものすごく心地がいい。女の子からしていた優しい匂いでクローゼット中が埋め尽くされている。その匂いと心地よさで安らいで、うとうとと眠りそうになってしまう。


「あれ、お嬢様? いつの間にお帰りになられていたんですか?」


 クローゼット越しにクローゼットのある壁と反対側にある扉を開ける音が聞こえて、心臓が飛び跳ねた。外からは少しくぐもった声で女の子とナギさんの会話が聞こえる。


「つい……さっき……」

「そうでしたか、気づきませんでした。ではさっそくですが、そろそろお休みしましょうか」

「うん……」


 扉の方向から足音が近づいてきてビクッとする。ハッとして物音を立ててないかと一瞬身体が硬直する。幸い、なにもなかった。先ほどまで感じていた心地よさは今は感じる余裕もない。


「それではお嬢様。ベッドに横になってください」


 近づいてきた足音は、ベッドのある場所に止まった。こちらに来たわけではないと胸を撫で下ろす。


「お布団、おかけしますね。……あら? 今日はあまりわがままをおっしゃらないのですね」

「……わがままなんて……言ってない、もん……」

「そうですか? いつも『まだ寝たくない』とか『寝るまでそこにいて』とか言っているではありませんか」


 二人のなんてことない話が続くたび、ナギさんの笑い声が静かに響くたび、時間の進みがゆっくりになっていく感覚がした。もしやもうバレていて、私を弄んでいるのではないかという気すらしてきた。


「それではそろそろ戻りますね。おやすみなさいませ、お嬢様」


 その言葉が聞こえて長かった時間に終わりが来ることに期待が膨らんだ。パタン、と扉が閉まる音が聞こえて、ひとりでに肩の力が抜けていった。


「もう……出てきて……いいよ……?」

「うん……あれ、これどうやって開けるの?」

「あ……待って……」


 とてとてと可愛らしい足音が近づいてきて、クローゼットの中に光が戻ってきた。


「はあぁ……バレるかと思ったぁ……」

「ふふっ……大きな溜め息…………ごめん、ね……? ずっと……クローゼットの、中……寒かった……でしょ……?」

「ううん、大丈夫だよ」

「そう……? でも……寝るときは……ベッド……入って……」

「ありがとう。あれ? でもベッドって……?」


 部屋の中を見渡してみるが、ベッドは真ん中にある大きな天蓋付きのものしか見当たらない。すると女の子はそのベッドを指差した。


「一緒に、寝る…………嫌……だった……?」

「えっ!? いや、だって、二人で一緒に寝るの!?」

「うん…………私の、ベッド……広いから……四人くらい……まで、なら……寝れる……」


 確かにそのくらいの大きさはありそうだ。小さい子一人で使うには何回寝返りを打っても落ちる心配はないくらいに大きい。


「そうじゃなくて、えっと、なんというか……誰かと一緒に寝るの、嫌じゃないの?」

「時々……ナギに……一緒に……寝て、もらったり……してる、から……平気……」

「そういう問題じゃなくて……」


 さっき知り合ったばかりの相手と一緒に寝るのはなんともいろいろダメな気がするのだが、相手はまったくもってそんな風には感じていないよう頭を小さく掻いた。


「それに……嫌だったら……言ってない……」

「あー……まあいっか!」


 私は思考を放棄して頷いた。遠慮したところで寝る場所なんてほかに見当たらないし、床で寝るくらいなら一緒に寝たほうがよほどいいと思って、一緒に寝ることを承諾する。


「それじゃ……寝よ…………あ……その前に……服……着替えて……」



***



 私は着ていた服を脱いで、クローゼットにあった今目の前の女の子が着ているパジャマと同じものを借りた。その子のものを借りてしまうのは大丈夫なのかといろいろ頭の中で巡ったが、一緒に寝るのが決まったうえではもうどうにでもなれという気持ちのほうが強かった。普通の服で寝るのも正直嫌だったし。その女の子のものだから少し小さいけど、ゆったりとしてるものだからあまり気にならなかった。


「この、リボン……綺麗……」


 部屋の中に仕切りなどなかったため女の子に後ろを向いてもらいながら着替えていた最中、そんな声が聞こえてきた。ちょうど着替え終わって何事かと振り向くと、女の子が先ほどまで私が髪につけていたリボンを手に取りながらそれを眺めていた。


「えへへ。それ、綺麗でしょ。私のお気に入りなんだ〜。いつもつけてるの」


 肌触りのいい、つややかな青色のリボン。真ん中の部分は深海のような濃い青で、端に行くほど段々と淡い色になっていき、一番端に行く頃には透き通った水色になる。私はそれでいつも肩くらいまである茶色の髪を後ろで結ってハーフアップの形にしている。


「確か、誰かから貰ったもののはずなんだけど……誰だったか、憶えてないんだ。けど、ものすごく大切な人から貰った、大切なものだってことは憶えてる」


 数年使っているものなのだが、いつから使っているのかすらも覚えていない。気づいたらもう使っていて、前からずっとそうだったように当たり前に髪を結んでいた。けれど誰かから貰ったものだということだけははっきりと覚えている、不思議な宝物だった。


「そうなんだ…………なんだか……不思議な……匂い……」

「匂い? ああ、もしかしたら潮風の匂いかな。ずっと使ってるから、染み込んでるのかも」

「しお……?」

「うん。私、海辺の街で暮らしてて……あ、そっか。ここ、海の中だから、よくわからないか。えっとね、私の住んでたところでは、海が下にあって……」

「海が……下……!?」


 逢ってから一番驚いた様子の声が女の子から聞こえてきた。穏やかな口調がほぼ変わっていないのに、驚いているのがわかるくらい。


「海が地面……って、こと……?」

「えっと違くって。な、なんていうんだろう……そうだ、長くなりそうだし、寝ながら話さない? もう私も着替え終わったし」


 私は着替え終わったことを自分の姿を広げて見せて示す。その提案を受け入れた女の子はこくりと首を縦に振る。


「確かに……もう遅いし…………それじゃあ……入って……」


 その女の子が毛布を持ち上げて、先に中に入るよう手で誘導する。私は促されるままベッドに入って、続いて女の子もベッドに入ろうとしたとき。


「それじゃあ……明かり……消すね……」


 そう言って女の子が部屋の明かりに向かって小さな手を伸ばした。しかし女の子の今いる場所から手を伸ばしても、明かりに触れることはできそうにない。なにをしているんだろうと眺めていると、その女の子はゆっくりと手を握った。


 すると、手が閉まるのと同時に部屋の明かりがふっと消えた。


「えっ!?」

「……? どうしたの……?」

「いや、だって、えっ!? なにもしてないのに、明かりが……」


 一瞬で暗闇に包まれたパニックでなにがなんだかわからなくなる。暗くなった部屋には、先ほどよりも声がよく響くような感じがした。今の光景、ひとりでに明かりが消えてしまったように見えたその光景に、驚きのあまり出てくる言葉がまとまらない。


「なにも、って……魔法……ちゃんと……使った、よ……?」

「まほ……え魔法!?」


 ついさっき響いた驚きの声が消え去る前にもう一度違う驚きの声が部屋に響く。


「うん……もしかして……魔法を、知らない……?」

「いやっ、知ってるけど、いや実際に見たことはないっていうか、え、魔法でしょ!? 絵本に出てくるような……」

「絵本、に……出て……くるのは……出てくる……だろう、けど…………そんなに……驚く、もの……? みんな……使ってる、よ……?」

「みん、な……!?」


 そのみんなが目の前で首を傾げている女の子の友達なのか、はたまたこの街の住人全員のことなのか、どのくらいのものを指示しているのかはわからないけれど、少なくともこの場所には当たり前に魔法というものが存在している、別段驚くことでもない、そんな声色だった。


「珍しい……もの、でも……ない……のに…………私にとっては……あなたの……住んでた……場所の、方が……気になる……」

「あ、そうだ、そんな話だったね……驚きすぎて忘れるところだった……」


 私的にはその魔法の話を広げたかったが、すると言ってしまったのでまず私の住んでいた場所の話をすることにした。


 女の子が明かりを消すための身体を起こした体勢から布団の中へと沈んでいって、完全に横になったとき、ぽつんと言った。


「そういえば……お話の前に……あなたの、名前……聞いてない……」

「あ、確かに」


 やわらかなベッドの上で横になった暗闇の中では、声だけが聞こえる。寝返りを打って横を向いても、輪郭がぼんやり見えるくらいで相手の表情もわからない。


「一緒に寝てるのに、名前も知らないなんて、なんか変」

「そう、だね…………私は……ミナモ……あなたの名前は……?」

「私はシオネだよ。ミナモかぁ、いい名前だね!」

「そう、かな……嬉しい…………お婆さまが……つけてくれた……らしい……」

「そうなの?」

「うん…………東の方の国の言葉で……ゆったりしてる、って……意味、らしい…………お婆さまは……お淑やかに、育ってほしいって……願ったんだって……」

「へぇ……! ミナモは、お婆さん大好きなんだね」

「うん…………もう、いなくなっちゃったけど……」

「あ……そうだったんだ……」


 暗がりに広がる空気が少し重くなった気がした。仰向けになって天井を向いて、目を瞑って軽く深呼吸をした。


「それで……シオネの、住んでた場所の……お話……聞かせ、て……?」

「そうだった。さっきから忘れてばっかりだね。えっとね、私の住んでた場所はね……」


 海が下にあって、海の天辺が見られること。街の上には海の代わりに空が広がっていて、夜になると真っ黒になって、星というキラキラした光が広がること。天気というものが変わると、空から水が降ってきたり、雲というもくもくした白いもので覆われたりすること。そのすべてが、ミナモにとって刺激的だったらしく、眠気がやってくる様子はなかった。


 けれど時間が経てば瞼は重くなっていくもので、潮風に吹かれても色褪せることのないリボンの話をしたところで話を終わらせて、また明日寝るときに続きを話そうと約束して瞼を瞑った。

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