次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

第3話 カルロス様を避けようと思います

「ルミナス、落ち着いたのね。よかったわ。あなたが狂ったように笑い転げるから、心配したのよ」

心配そうな顔でお母様が話しかけて来た。隣ではお義姉様と甥のドリーを抱いたお兄様が心配そうに私を見つめていた。

「もう大丈夫よ。心配をかけてごめんなさい」

「それならいいのだけれど…もし何か体に異常があるなら、すぐに教えて頂戴。ミリー、ルミナスの事を頼んだわね。今日は早めに休むのよ、分かったわね」

そう言うと、お母様たちは出て行った。

カルロス様のせいで、酷い目に合ったわ。あんな180度違う顔を見せるのだから…

思い出したらまた笑いが込みあげてきたのを、必死に別の事を考えてやり過ごす。このままだと、本人の顔を見た瞬間、笑い転げそうだ。明日カルロス様に接触するのは控えよう。

「お嬢様、本当に今日はどうされたのですか？私の名前をミジーと呼んだり、狂ったように笑い転げたり…何か悩みがあるなら、何でも話してください。大旦那様が亡くなってから、急に大人びたと申しますか、自分1人で溜め込む様になってしまわれたので、私はずっと心配しておりました」

「ミリー、あなたの事をミジーと呼んだことは謝るわ。笑いすぎてうまく話せなかったのよ。特に悩みはないから、安心して頂戴」

そう笑顔で答えた。いくら子供の頃からずっと一緒に過ごしてきた信頼しているミリーでも、さすがにカルロス様のあの姿を話事は…ダメだ、また思い出して笑いが込みあげてきた。とにかく寝よう。寝たらきっと少し落ち着くだろう。

そう思い、寝る準備を済ませ目を閉じたのだが…

ダメだ、目をつぶるとカルロス様の顔が脳裏に浮かんで、笑いがこみ上げてくる。

落ち着くのよ、ルミナス。そう自分に言い聞かせ、何とか眠りについたのだった。

翌日、さすがに一晩眠ったおかげか、もうカルロス様のあの顔を思い出しても、笑いがこみ上げてくることもなくなった。

本当にあんな顔を見せられたせいで、昨日は酷い目に合ったわ。そう思いつつ、学院に行く準備を始める。

「ルミナス、あなた今日は学院を休んだ方がいいのではなくって？」

心配そうにお母様が話しかけてくる。お父様が亡くなってから、人一倍心配性になったお母様。

「大丈夫ですわ、実は昨日、ちょっと面白い事がありまして。それで昨日はあの様な見苦しい姿を晒してしまいましたが、もう大丈夫です」

「それならいいのだけれど…」

「それでは行って参ります」

そのまま馬車に乗り込んだ。お父様が亡くなってから8年、お母様も侯爵家を支えるため、必死に生きて来たことは知っている。家族の前では気丈に振舞い、陰でお父様を思い涙を流していたお母様。

そんなお母様の心配そうな顔を見ると、胸が締め付けられるのだ。とにかく、あまり家族に心配をかけない様にしないと！そう思い、学院へと向かう。

馬車から降りようとした時、一瞬視界にカルロス様の姿が入った。

その瞬間、昨日の姿を思い出し、吹き出しそうになるのを必死に堪える。ダメだ、このままカルロス様の姿を見たら、爆笑してしまうわ。

馬車から降りると、一目散に自分の教室へと向かった。

「あの…ルミ…」

一瞬こちらに近づいて来ていたカルロス様が目に入るが、悪いが今は彼の顔を見る訳にはいかない。そう思い、教室へと急いだ。やっぱりまだ、本人の顔を見るとはダメね。昨日みたいな笑い転げている姿を、さすがに友人たちに見られる訳にはいかない。カルロス様をなるべく視界に入れないようにしないと！

「ルミナス、おはよう。どうしたの？あなた、そんなに急いで教室に入ってくるだなんて」

「おはよう、マリーヌ。ねえ、今日のお昼は教室で食べましょう」

カルロス様は3年、私は2年なので、教室にいればまず会う事がない。とにかくしばらくは、カルロス様に会いたくはないのだ。

「どうしたの？今日は天気もいいし、テラスで食べましょうよ。カルロス様の姿も見られるかもしれないし」

カルロス…その名前を聞いた瞬間、笑いが込みあげてきた。いけないわ、こんな顔、友人に似られる訳にはいかない！必死に下を向き、笑いを堪える。

「ちょっと、急にどうしたのよ？大丈夫？もしかして、体調が良くないの？」

「な…なんでもにゃいわ…ど…どにがく…ぎょうしつで食事を…」

「…分かったわよ。変なルミナスね」

耐えるのよ、ルミナス。そう自分に言い聞かせ、必死に笑いを堪えた。とにかく学院を出るまでは教室から出ない様にしないと！