第4話 カルロス様に捕まりました

私の努力?の結果、教室から出ることなく無事授業が終わり、後は帰るだけとなった。とにかく、一刻も早く馬車に乗り込まないと。万が一カルロス様の姿を見たら大変だ。


「それじゃあ皆、また明日ね」


そう伝えると、急いで教室を出る。後ろで友人たちが


「ちょっと、ルミナス!」


そう叫んでいる声が聞こえたが、今日は早く帰らないと。そんな思いで、校門を目指す。よし、後少しで我が家の馬車だわ。我が家の馬車をめがけ、猛スピードで走っている時だった。


誰かに急に腕を掴まれたのだ。


「待ってくれ、ルミナス嬢」


この声は…


声の方をゆっくり振り向くと、そこにはカルロス様が。


「ブゥゥ」


顔を見た瞬間、盛大に吹き出してしまった。いくら何でも、人の顔を見て吹き出すなんて失礼にも程がある。そう思ったのだが、もう止められない。必死に声を殺して笑う。


「…ガルドズざま…もうじわげございばぜん…じずれいいだじばず」


声にならない声を発し、お腹を押さえながら馬車に乗り込もうとしたのだが。


「…待ってくれ、とにかく君と話がしたいんだ。すまないが馬車に一緒に乗せさせていただくよ」


フラフラと馬車に乗り込む私を抱きかかえると、そのまま私の馬車に一緒に乗り込んできたのだ。そして扉を閉めると、そのまま走り出した。


「アッヒャハハハハ、ヒィィィッィ、ハハハハハ、ヒィィィィ」


我慢できずに馬車の中でお腹を抱えて笑う。私の向かいには、気まずそうな顔のカルロス様の姿が。人の顔を見て爆笑するだなんて、失礼にも程があるという事は自分でも分かっている。でも、本人を目の前にしたら、我慢何て出来ない。昨日の女の子のぬいぐるみに頬ずりをし、鼻の下をビヨーンと伸ばしたカルロス様の顔が、どうしても浮かぶのだ。


「ヒィィィィ、グルジイ、ヒィィィィィ」


お腹を押さえて笑い転げる私を見て、ついに俯いてしまった。やはりショックよね、こんな面と向かって笑われたら。


「ご…ごめんなざい…昨日のげんは、誰にも言いませんがら…ヒィィィィ、ハハハハ」


必死にそう伝えた。とにかく落ち着かないと!そう思うのだが、一度笑い出すと止められない。


「あの…なんて言ったらいいのか…その…大丈夫かい?君が涙を流して笑い転げるだなんて。でも、君の笑顔が見られたから、俺は嬉しいよ」


そう言うと、ニヤリと笑ったカルロス様。


えっ…


一気に笑いがおさまった。ただ、笑いすぎて体が辛い。必死に呼吸を整える。


「少し落ち着いた様だね。よかったよ」


ゼーゼー言いながら肩で呼吸をする私に、優しく話しかけるカルロス様。とにかく笑いが止まったのはよかった。


「改めて、あなた様を見て笑い転げてしまい、申し訳ございませんでした。令嬢として有るまじき行為でしたわ。それから、昨日の…その…」


あの時の姿を思い出し再び笑いが込みあげてきたが、必死に堪え深呼吸をする。よし!


「昨日のぬいぐるみを抱きしめていた事、誰にも言いませんわ。ですからご安心ください」


なるべくカルロス様の顔を見ない様にそう伝えた。


「その件なんだが、俺は別に…」


「確かに驚きましたし、あなた様の普段の姿とあまりにもかけ離れていた為に、失礼ながら笑ってしまったのは事実です。でも、別にあなた様が女の子のぬいぐるみを大切にしているからと言って、私は何とも思いませんわ。人には誰かに言えない様な趣味もあるでしょうし!」


まさか次期騎士団長が可愛い女の子のぬいぐるみを大切にしているだなんて…それにあの顔!ダメよ、今は真剣な話をしているのだから、笑っては!


自分の手を思いっきりつねり、必死に笑いを堪える。


「そんな風に自分の手をつねってはダメだよ」


力いっぱいつねっている私の手をすっと握り、つねるのを止めさせた。そして


「あぁ…なんて柔らかくて温かい手なんだ…やっぱり本物は最高だな…」


なぜかカルロス様がうっとりと私の手を見つめ、訳の分からない事を言っている。一瞬にして、鳥肌が立つのが分かった。すっと手を引こうとしたのだが、ガッチリと握られていて、引く事が出来ない。


「やっぱり俺は、君が好きでたまらない。騎士団長になったら、ルミナス嬢、いいや、ルミタン!俺と結婚しよう!」

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