第一章 大

第一章



澄んだ空気は海の水のように漂っていた。夜空は、紫のような色になっていた。どこか非現実的だ。空はこんな色をするはずがない。

「なぜだ! なぜ私はここに飛ばされなければならない!」

声は響き反響した。しかしそこに広がるのは平原だけだ。

「私はなにもしていない!」

それは続けて言ったがその声は誰にも聞こえている様子はない。手には本が握られていた。

「なぜ、太陽が現れない!」

本を開き、ページを捲る。

「そうか、私は罪人を裁かなければならない。それが役目だから。それを命じられたから」

独り言とし呟き、それは納得した。

「堕天? 笑わせるな。罪人ども」

フッと足元の地面に穴が空き、それは背中から落ちていった。体は徐々に大きくなる。体の周りを赤い熱が包み込んだ。徐々に加速していく。地面までそう長く時間はない。

「これで終わり」

彼女は微笑んだ。

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