第二章 熾


彼が消えた日から私は無気力になった。元々めんどくさがりなところはあったけど、今回は特にだ。彼は私に何かを伝えようとしていたけど私にはさっぱりだった。彼の話をしようと思う。彼について少しは触れるべきだし。彼は私がここにくるより前にここにいたらしい。そこで一人の女性と恋に落ちていた。だがその女性も全て消え去った。私にはこの消え去ったという意味がわからなかった。彼によると落ちてきたらしい。何が落ちてきたかは、彼は詳しくは言わなかった。隕石やミサイルが落ちてきたのか。私が目を覚ました時にはもう世界は壊れていたからわからない。人は数えられるほどしか会っていない。そう、私は記憶がないのだ。だからここまで世界の破滅が楽観的というべきなのだろうか、悲観的には捉えていない。目が覚めた時から荒廃していた。様々な所に写真が落ちていて、荒廃前の様子は容易に想像することができた。そうだ、彼の話をしなければならなかったね。でもそこまで彼のことを知っているわけではないんだよ。話を戻そう。彼はよく本とノートを持ち歩いていた。ノートの内容は前に言ったみたいな内容が書かれてて、本は私には読めなかった。中は見せてくれなかったし表紙も何が書いてあるかさっぱりだったんだ。でもそれはすごく分厚かった。私じゃ到底読めないし、読む気もしないと思う。廃墟になったこの街は誰もいないから彼しかいなかったのに。そんな彼もいなくなちゃった。なんで人が誰もいないの。

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