第4話 無双と百合の果てに

 菜月ちゃんは、愛らしい小顔と黒髪ロングが特徴的な美少女後輩だ。

 それでいて胸やお尻がかなり豊かで、男子を虜にしているとか。


 まさかこんなところに会えるなんて偶然ですな。


「もしかして君もナーロッパ共和国に転移された口?」


「い、いえ……それとは別の王国です」


 聞くところによれば菜月ちゃん、とある王国に召喚されてから「はよ行け」と急かされたのだ。

 それでチートスキルでこの城へとワープして、エンペラーヒドラに返り討ちされたと。


 何という2コマ落ち。

 その王国、適当すぎじゃないですかね。


「しかも金貨1つもくれなかったし、服装も高校の制服のままだし、エンペラーヒドラに殺されそうになるし……散々だったんです……」


「それは災難で」


「……だから、最期に会えたのが怜先輩でよかったです」


「よかった? それはどういう……」


 私が言う前に、菜月ちゃんがキスしてきた。

 おふぅ、これまたすんごい柔らかい。


「私、ずっと先輩が好きでした……。カッコよくて、ぶっきらぼうで、テニスをよくサボって、同級生に怒られたり……でもそんなマイペースな先輩に惚れちゃって……」


「大半が罵倒にしか聞こえませんが。てか今エンペラーヒドラの前なんだけど」


「構いません……先輩と一緒に死ねるのなら私……本望です」


 死ぬ前提かよ。

 いくら何でも諦めが早いよ、菜月ちゃん。


 そんな菜月ちゃんがオッパイに押し付けてきたり、自分の股間を私の膝に擦り付けたり、果てはディープキスしたりとエッチィな事をし始めた。


「んんぅ……ハァ……ん……あっ……んぁ……」


 しかもどういう訳か、『美少女魅了』も『性技上手』も発動していない。


 つまり菜月ちゃんはシラフ状態でヤッているという事。

 なるほどなるほど、いわゆる同性愛者なのかこの子は。

 

 それは置いといて、今エンペラーヒドラの前なんだけどさぁ。

 こういう事をしていて大丈夫なのかな?


「さすが人間の女!! 我々魔物に出来ない事を平然とやってのける!! そこに痺れる憧れるぅ!!」


 うん、OKみたいだ。

 奴が馬鹿でよかったよ。


「ハァ……ハァ……ハァ……駄目……先輩……こんな……あん……! んんんぅ……!」


 さっきから股間を擦り付けてきた菜月ちゃんが果ててしまったようだ。


 ふむ、至近距離で見る彼女の顔、赤らんでいてエロいですな。

 あと股間から湿ったのが感じるのもまた。



≪『百合百合レベルアップ』発動します≫



 ----------------- 


≪緊急時なので追加された項目だけ表示します≫


 穂波怜 レベル:1那由他なゆた


 魔法:『死ネ 属性:全』

 

 ----------------- 


 オイオイオイオイ、とうとう那由他まで行っちゃったよ私。

 確か京よりもずっとずっと上のやつっしょ? もう化け物どころの話じゃないじゃん。


 しかも追加された魔法の『死ネ』って何?

 ドストレートすぎて逆に怖いんですが。


「グハッ!!」


 あれっ、エンペラーヒドラが倒れちゃった。

 私、魔法すら出してないんだけど。



≪『死ネ』発動中。自身が敵と定めた対象の心臓を、自動的に停止させます≫



 おうふぅ……ナレーションさん、そんな効果だなんて思わなかったよ。

 戦わずして相手を殺すとか怖すぎるじゃないか。


「……やった、やりましたね先輩!! 何でか知らないですけど、エンペラーヒドラが倒れました!!」


「ソウダネー。ところで私が召喚されたナーロッパ共和国に行かない? 菜月ちゃんの王国よりマシだと思うんだけど」


「はい、もちろんです!!」


 こうしてエンペラーヒドラを倒した私は、菜月ちゃんを連れてナーロッパ共和国へと戻っていった。

 そんでもって元の世界に帰してもらおうと思っていたら……、


「お帰りなさいませレイさ……レイ様……コレはどういう事でしょうか?」


「何ですか急にコレだなんて。そもそもあなたは誰なんですか?」


「私はナーロッパ共和国の王女セレナです! この不届き者、今すぐレイ様から離れなさい!!」


「嫌です。怜先輩は私の恋人なんです。あなたこそ離れて下さい」


「何ですと!? この無礼者!!」


 何故かセレナさんと菜月ちゃんが私の腕を掴んで、引っ張り合いを始めたのだ。

 私を綱引きにしても面白くないぞー。


「まさか旅を出ていた間に淑女を引っかけるなんて……レイ様あんまりです!!」


「旅って言っても、1日くらいしか経っていないんですけどね。それよりも元の世界に帰りたいので、召喚魔法いいすか?」


「召喚魔法はそう簡単に編み出せられるものではございません。精々1週間はかかります」


「1週間なら普通に待てますからお願いします」


「そういう訳にはいきません! 私、これからレイ様と結婚する予定なのです! そして夜には思う存分愛し合う予定なのです!」


「いきなりそう言われてもねぇ」


 さて困った。

 女神さんからもらった珍妙なスキルのおかげで、私の周りが大変な事になった。


 こりゃあ、解決するのに時間がかかりそうだ。


「結婚だなんて、この泥棒猫! 怜先輩は私のものです! 誰にも渡しません!!」


「泥棒猫はそちらではございません事!? そろそろレイ様を離して下さい!」


「嫌です! 怜先輩、私が好きなんですよね!? そうですよね!?」


「いやレイ様、このセレナを愛してますよね!? そうおっしゃって下さい!」


「怜先輩!!」


「レイ様!!」

 

 ヤレヤレ、まさかこの場でヤレヤレ系主人公の気持ちが分かってしまうとは。

 世も末だねぇ。


 ―完―

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異世界で百合百合行為したらレベルアップして最強な件~ただし主人公はノンケである~ ミレニあん @yaranaikasan

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