第2話 私YABEEEEE
全裸になった私の前にはウィンドウが表示されている。
そのウィンドウには私のと思しきステータスが書かれているけど、これがツッコミどころ満載だった。
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穂波怜 レベル:10000
職業:女勇者
身体能力:無限 攻撃力:ヤバい 防御力:すぅんごい 魔法力:もはや世界最強
属性:火 水 風 土 雷 光 闇 全
魔法:『聖剣メッチャヤバイワー 属性:光』『サラマンダーヨリズット速イ!! 属性:風』『闇ニ抱カレテ消エロ!! 属性:闇』
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何でレベル1万になってんの? 普通レベルって100くらいだよね?
身体能力の無限もアカンし、防御力のすぅんごいって比喩すぎにもほどがあるだろ。
そして属性の『全』って何だよ。
魔法の『聖剣メッチャヤバイワー』ってネーミングもダサくて、どんな効果なのか全然分からんわ。
「レイ様どうかなさいました……って、ステータスがすごい事に!? それに『聖剣メッチャヤバイワー』ってメッチャヤバイですわ!!」
隣で寝ていたセレナさんが起き上がるなり、私のステータスを見て驚愕した。
ちなみに私と同様全裸ですはい。
あとヤバイヤバイ言わないで。腹筋に悪いので。
「そんなにすごいんですか?」
「ええ! 魔法の効果は唱えてからのお楽しみですが、いずれも凄まじいものです! 間違いなくレイ様のお役に立つかと!」
「はぁ」
恐らくだけど、『百合百合レベルアップ』は女の子と一線を超えるとレベルアップするというものだろう。
それで『性技上手』は性技が上手になるスキル。
……これじゃあ、まるでレズビアンじゃないか。
女神さん女神さん、何故こんなスキルにしたんでしょうか?
「そういえば私、ここに召喚された理由を聞いてないんですけど」
「これは失礼いたしました。でしたら服を着ながら聞いて下さいますか?」
「おけい」
私達が服を着ている間、セレナさんが事の経緯を語ってくれた。
このナーロッパ共和国、1ヶ月前から魔龍エンペラーヒドラとその配下の侵略に見舞われているらしい。
エンペラーヒドラは共和国から南に鎮座していて、そこから配下の魔物を送り込んでは各地の村や街を襲撃しているとか。
もちろん共和国も黙っている訳じゃなく、エンペラーヒドラを討伐すべく兵士を遠征させていた。
が、全滅でもしたのか帰ってきた兵士は1人もいなかったという。
「そこで私達は禁忌とされている異世界召喚術を使って、あなた様を召喚した訳です。召喚された異世界人の能力は、私達よりもメッチャヤバイと又聞きしましたので」
「又聞きなんすか。とにかく私はその魔龍を倒せばいいんですね?」
「おっしゃる通り。なので勝手かと思いますが、どうか私達の為にエンペラーヒドラを倒してくれませんか? そして……倒した後は、私の元に戻ってきて下さると嬉しいのですが」
「魔龍退治は拒否権なさそうだから別にいいとして、どうしてセレナさんの元に?」
「……わ、私、あなた様なしでは生きられない身体になってしまいまして……。だから魔龍退治が終わった暁には、正式にご結婚していただく……」
「うん、考えておきます」
実のところ、彼女と結婚とか考えていない。
ここで嫌だと返すと面倒になるのは目に見えているし、私が旅している間に考えを改めるだろうとも思ったからだ。
という訳で、私は魔龍退治の為に城から出発する事となった。
勇者風の服装を着て、金貨入りの袋を持って、それから城門に出る。
なお魔法が強すぎて武器は必要ないとの事。そんなに強いんかコレら。
「確か魔法名を言えばいいんだっけ……スゥ……『サラマンダーヨリズット速イ!!』」
私は魔法名を叫んだ。
うむ、ハズい。周りに誰もいないけどめっちゃハズい。
オーソドックスな魔法名を叫ぶよりも相当。
≪中間地点に直行します。衝撃に備えて下さい≫
「えっ? うぉん」
そのナレーションの後、私自身がまるでジェット機のように超高速飛行を始めたのだ。
こういう効果なのかよおい。
Gとか大丈夫みたいだけど、一体どこに向かうんだ?
≪お待たせしました。中間地点『チュウカン街』に到着します≫
ってもう着いたのかよ。めっちゃ速いな。
私の視界に街らしきものが見えた瞬間、道へと激突し粉塵が舞う。
普通ならトマトよろしく四散になるところだけど、私の身体は無事だ。
まぁ、魔法で自滅とか笑えない話だし当たり前か。
「キャアアアアア!!」
「魔将軍カイ☆カンが出たぞお!!」
街の奥から悲鳴が聞こえてくる。
そちらに向かってみると、家々を壊しながら暴れ回る魔物らしき姿があった。
「ヒャハハハハ!! 家を壊すのはすごくカイ☆カンだぜぇ!! 恐怖におののけ人間どもぉ!!」
兄貴が好きな怪獣映画のサイボーグ怪獣にソックリだ。
そのサイボーグ怪獣の両腕をハサミ状にして、全体を真っ黒にした感じか。
「……あん、なんだこの小娘? この俺がエンペラーヒドラ様直属の部下、魔将軍カイ☆カンだと知っての無礼……」
「『闇ニ抱カレテ消エロ!!』」
「ア゛ア゛アアアアアアアアアアアアア!!! カイ☆カアアアアアアンン!!!」
ステータスにあった魔法を唱えた瞬間、右手からドス黒い波動が放たれる。
それがカイ☆カンを飲み込み、文字通り骨一片残さず消滅させてしまった。
これが『闇ニ抱カレテ消エロ!!』か。
名前厨二だけど威力ヤバいわ。
あとカイ☆カンが話している最中に攻撃して外道っぷりが増しちゃったけど、大丈夫だよねうん。
明らかに悪者だし街を破壊していたし。
「カ、カイ☆カンを一撃で!」
「もしや又聞きで耳にした異世界の勇者では!?」
「勇者様、ありがとうございます!!」
家の陰から住民が出てきて、私の周りに集まってきた。
あるある、こういうチートを披露してチヤホヤされるの。
まさに異世界ものって感じ、うん。
「それほどでも。ところでここに宿はありますか? もうすぐ日が暮れそうですし」
私とセレナさんが『おせっせ』したのが昼すぎだったので、空が夕焼けになってしまっている。
宿の事を聞いたところ、セレナさんに匹敵するような可愛い街娘さんが名乗り出た。
「でしたら私の宿に来てください。うんとサービスをして……」
≪『美少女魅了』発動します≫
「あっ」
「はうっ! なんて美しいんでしょう! それにこの胸の高まりとムラムラ感……勇者様、どうか私と宿に!」
「でしたらアタシを! アタシこう見えて結構スタイルよくて!」
「何よ、抜け駆け禁止!! わ、私でしたら夜のお相手を!!」
「な、なんなのこの気持ち! もうレズでいいわ! どうか抱いて下さい!!」
なんてこったい。
スキルが自動発動された事で、この場にいる美少女達がメロメロになったではないか。
どないしよう、あまり乗り気じゃないんだよなぁ。
いや、皆可愛いとは思っているけど、それとこれとでは話が別というか。
「あのー、私そんなに『おせっせ』上手くないですよ。あまり期待しない方が……」
――チュウ……。
その時、街娘さんの1人にキスをされてしまった。
しかも初対面でいきなりディープ。
セレナさんにもされたせいか、私もつい舌を動かしてしまった。
≪『性技上手』発動します≫
「あ、ああ……勇者様すごい……私おかしくなりそうです……」
トロンとした街娘さんが私の手を引っ張った後、自分のお尻や太ももへと撫でらせた。
いやいや、公衆の場で何やってんのあなた。
周りの殿方がガン見してムスコさんをたぎらせとるがな。
「ああん……! 勇者様の手、気持ちいい……! んん……!」
「ああずるい! ほらっ勇者様、宿に行きましょう! こうなればレッツパーティーです!」
「もう良いところだったのに……勇者様、今夜は寝かせませんよ♡」
「……はぁ」
こうして、私は流れで5人の街娘さんとヤッてしまった。
こんなはずじゃなかったのになぁ。
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