第61話 私は神だと信じない

 ママは聖剣に触れて泣き崩れる……


「私は妹に続いて娘まで守れなかった……もうこの世界に興味はないわ……」


 パパはママに寄り添って語り掛ける。その後にマグノリアは、魔王が消滅する間際に残した言葉が気になると口にした。


「この世界に神は居ないのか……世界を守る事に貢献したのに慈悲はないのか」

「私は魔王が最後に残した『お前達の信じる神が……どんな者かも知らずに……』の言葉が気になってます」


 マグノリアの言葉の後に、少し間を置いて魔王が消滅した跡が光りだして、光が集結して人のような形へと変わっていく。


『この世界の神【ジャミア】である。よくぞ魔王サーノスを倒してくれた感謝するぞ』


 突然、神と名乗る者ジャミアが現れて、魔王を倒した事に感謝すると言ってきた。ママはジャミアが私達サツキを転生させたのかを確認した。


「あなたが私のサツキをこの世界に転生させたのですか?」

『うむ、正確には異世界転生ではない。魔王サーノスを倒す為に必要な生贄として、異世界召喚させたのだよ。アレは本当に役に立ってくれたよ』


 ジャミアは魔王を倒す事たげの為に、私達サツキを異世界召喚させて聖剣を発動させる為の生贄にしたらしい……


「生贄……なぜそんな事をする必要があったのよ?神なら魔王くらい倒せるでしょう!」

『出来ぬのだよ。サーノスは我が神から唯一神に成る為に捨てた闇の部分で、言わば我の半身だから自ら手出し出来なかったのだ』

「だから、魔王はあの言葉を残したのね……」

『これで我が世界に仇なす者は居なくなった。皆の者よ我を崇めるがよい』

「ふざけないで!どうしてサツキはこの世界で生きては生きられないのよ。もっと違う方法があったでしょ?」


 ママはジャミアに対して怒りを顕にして、私達サツキが生きる世界があった筈だと言ったの。


『愚問だな。アレをこの世界で生かせば、必ず神の如く崇められるだろう。そんな事を我は望まぬのだよ』

「私のサツキをアレ呼ばわりしないで!自分が崇められたいが為にサツキを弄んだお前を、私は神だと信じない」

『唯一神たる我を崇めない?この世界で生きられなくなるぞ?』


 ジャミアはママを脅して、無理にでも崇めさそうとする。ママは脅しに対しても一歩も引かなかった。


「サツキの居ないこの世界に未練はないわ。そんな脅しでお前を崇めると思わないで!」


 このままではママが危ないと思った時、お兄ちゃんがジャミアに聖剣を向けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る