第60話 悲しき勝利
聖剣を握りしめるお兄ちゃんは今にも泣きそうになって、呆然と立ち尽くしていた……
劣勢から巻き返すチャンスと思った魔王が、お兄ちゃんへ向かって攻撃を仕掛ける。
「何が起こったのか判らんが、このチャンスを逃さんぞ!」
「ルーク!なにをしてるんだっ!」
『パシッ』
パパがなんとか魔王の一撃を受け止めると、お兄ちゃんを怒鳴った後に頬を叩いた。それでもお兄ちゃんは呆然としたままだったので、パパは魔王と戦いながらお兄ちゃんを諭す。
「そんな腑抜けてどうするんだ!お前がそのままだと……サツキが報われないんだぞ!」
パパが声を詰まらせながら掛けた声に、マグノリアも続けてお兄ちゃんを諭す。
「サツキ様の覚悟を受け止められるのは、ルーク様だけなんです!その聖剣はサツキ様の想いで出来ています。サツキ様と一緒に魔王を倒してください!」
「この聖剣にサツキの想いが?サツキ……そうなのかい?」
お兄ちゃんが聖剣に意識を向けてくれたので、やっと意識を繋げる事ができた。
私から話しかける事は出来ない。〚確定未来〛で魔王を倒すまで導く事しか出来ないの。それでもお兄ちゃんは魔王の動く未来が視えた事で、私の繋がりを感じた事で力が漲ってきた。
「あっ、魔王の動きが視えるよ!僕とサツキは聖剣を通して繋がってるんだね!うん、一緒に魔王を倒そう!」
お兄ちゃんは聖剣を強く握り直してから、魔王へ立ち向かって行く。攻撃も防御も全てが手に取るように視える為に、魔王は何も出来ずに一方的に傷を負っていく。魔界から魔素の供給が出来ないので、傷を回復する事もままならず体が徐々に崩壊していく。
「ぐっ……お前はいったい何者だ……」
「お前を滅ぼす者だ!このまま消滅してしまえ〚絶対領域〛!」
お兄ちゃんがスキル〚絶対領域〛を発動した事で、これでお兄ちゃんの領域内では無敵状態となり、魔王は逃げる道すら断たれた。
お兄ちゃんの猛攻は更に増して、遂に魔王の外殻は全て崩壊して胸にある魔神核が顕になった。
「それを壊せば僕とサツキの勝ちだ!」
「まっ、待ってぇえええええーーー」
『ガッシュン!』
「ぐっそぉおおおおおおーーー、お前達の信じる神が……どんな者かも知らずに……」
お兄ちゃんの聖剣が魔神核を貫くと、魔王は凄まじい断末魔と共に消滅していく。そして恨めしそうに言葉を放って完全に消えていった。
お兄ちゃんは魔王を消滅させた後は、聖剣を愛おしそうに胸に抱いた。ママがお兄ちゃんの元にやって来て、聖剣に手を伸ばして触れた後に泣き崩れたの。
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