第48話 ペンドルトン聖教国へ

 私と姉様はペンドルトン聖教国で神聖魔法を学ぶ事を決意した。


「デッカート、貴方にはオドレイとサツキの護衛としてペンドルトン聖教国へ向かって欲しいのですが、受けてもらえますか?」


 デッカートはお祖母様の言葉の意味を理解したようで、姿勢を正してから返事をした。


「私にお任せください!」

「では、ファビオへこの事を報告しにいきましょう」

「「はい」」


 私達はお祖母様と共にお父様の元へ向かい、神聖魔法を学ぶ為にペンドルトン聖教国へ渡る事を報告をした。

 お父様とお母様は少し考えられたが、国同士の争い以上の難問だと理解してくれたので、正式にペンドルトン聖教国へ渡る事が決定した。


 ただ、お兄様はデッカートではなく、自分が護衛としてついて行くと言いだして両親を困らせた。お母様は解決策として、お兄様とデッカートが模擬戦を行って、勝者が私達の護衛になるという事になったの。


 城にある兵の訓練場へ移動して、お兄様とデッカートの模擬戦が行われようとしていた。


「ヴァネッサが言った通りだ。アントワーヌとデッカートの模擬戦を行って、勝者がオドレイとサツキの護衛としてペンドルトン聖教国へと向かう。両者に異存はないな!」

「「ありません」」

「では、模擬戦を開始する。はじめ!」


 開始の合図と共にお兄様が槍で閃光のような突きを放つと、デッカートは剣で軽くあしらって剣を構えなおす。


「アントワーヌ、本気を出しても良いんだよ」

「舐めるな!」


 デッカートに挑発されたお兄様は、私達では捉える事の出来ない速さでデッカートへ攻撃をする。


『ガッ、ガキッ、ガッ……』

『シュン…………カタンッ』


 2人の打撃音しか聞こえなかったけど、お兄様が手に持っていた槍が地面に落ちる音がすると、デッカートの剣がお兄様の首元に添えられていた。


「そこまで、勝者デッカート!」


 お父様の一言で模擬戦は終了した。お兄様は地面に両手を着いて悔しそうに口を開く。


「ぼ、僕の負けだ……」

「私が必ず2人を守ると約束する。君はマルグリット共和国を守りきってくれ」

「護衛は任せてやる……だがサツキは絶対に渡さない!絶対にだ!」

「それは、君が決める事ではない。サツキが君を選ぶのなら私は2人を祝福するよ」

「クソッ……」


 お兄様は言い返せずにその場から走り去って行った。私は追いかけようとしたけど、姉様に手を掴まれ止められた。


「今の兄様がサツキに慰められる事が1番辛い筈だから放っておくのよ」

「うん……」


 姉様と私がペンドルトン聖教国へ渡る時の護衛はデッカートに決まり、明日の朝には出発する事となったの。

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