第46話 兄との決別
私はデッカートへの想いを伝えてお兄様を拒否すると、お兄様は表情を一変させた。
「な、何を言ってるんだ。あの日僕達は愛し合ったじゃないか?」
「そうね……でもごめんなさい。私はデッカートの事を愛してしまったの。自分の気持ちに嘘はつけないの……」
「嘘だ!サツキは僕だけの物だ!誰にも渡さないぞ!今すぐ処刑してやる!」
お兄様は私をベッドへ突き倒して、デッカートが幽閉されてる牢へと向かった。このままではデッカートが処刑されてしまう……私はお兄様の後を追った。
私はお兄様を追いながら疑問に思う。
私が城に戻ったのに、お祖母様や姉様が顔を出さない事に違和感を感じたの。あの2人なら誰よりも早く私の元に来る筈なのに……私がデッカートと国を出た事で、家族に見限られてしまったのかと思った。
そんな家族の事を考えながらも、私は必死にお兄様を追って行くと、牢の見張りをする兵士に声を掛けるお兄様の声が聞こえた。
「デッカートを出せ!サツキを汚した罪を償わせる!」
「アントワーヌ様、領王に指示なしに処刑を行うのは不味いかと思われます」
「僕の命令が聞けないのか!将来の領王となるんだぞ!」
「……判りました」
兵士が手枷をされたデッカートを牢から出すと、お兄様は剣を手にして斬ろうとした!
「ダメェ〜!」『ザシュッ』
「サツキ!そんな……私を庇って……」
「デッカート……無事ね良かった……」
私はデッカートが斬られる前に、なんとか間に合ったけど背中に深い切り傷を負った……
「そんな……どうしてそいつを庇うんだ……僕がサツキを傷つけたのか……」
「お兄様が、私の愛する人を……傷つける事を〚拒絶〛します……」
お兄様がデッカートを傷つける事を〚拒絶〛して、私はその場に崩れ落ちそうになる。
「うぉ~っ!」『バキンッ』
デッカートは両手首に傷を負いながらも、崩れ落ちる私を抱きしめた。
「サツキ……私の為に……アントワーヌゥー!」
私が傷ついた事で怒りを抑えきれずにデッカートは叫ぶ!猛烈な〚威圧〛の覇気が周囲を駆け抜けると、近くに居た兵士は立つ事も出来ずに倒れ込む。
「ッ……デッカート!抑えて……そうじゃないとサツキを治療する事が出来ない……」
デッカートの〚威圧〛に押されながらも、オド姉様が声を上げると『はっ』と冷静になり〚威圧〛を解いた。
「サツキ、ひどい怪我ね……応急処置しか出来ないけど、治療するわね〚
「ね、姉様……ありがとう」
「サツキ、良かった……無事で良かった……」
姉様は目を潤ませながら私に声を掛けて、いつものように優しく抱きしめてくれた。
「兄様!サツキの帰国を連絡しなかったのは何故なの?お父様の不在時は、お母様とお祖母様へ報告をする筈よ!」
「サツキを傷つけた……僕がサツキを……僕よりアイツを選んだのか……」
「話にならないわね。デッカート様はサツキをお祖母様の元へ運ぶのを手伝ってくださる?」
「任せてくれ。オドレイ嬢、サツキを救ってくれてありがとう」
「姉として当然の事をしただけです。お祖母様の元へ参りましょう」
私はデッカートに抱きかかえられ、姉様と移動しようとするとお兄様が声を上げる。
「オドレイは僕のじゃないのか?そんなヤツにサツキを奪われて良いのか!」
「良いわよ。私はサツキの味方だからサツキを尊重するのよ。兄様は自分の事しか見えてないわね……がっかりしたわ」
姉様の言葉を聞いたお兄様は、無言のまま下を向いて黙り込んだの。その様子を見た姉様はデッカートに目で合図をして、私達はその場を後にした。
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