第45話 緊急帰国

 私達は寝る間も惜しんでマルグリット領国を目指した。少しでも早くレンドルド王国で起こっている事を、お祖母様に相談する為に……


 レンドルド王国とリュミエール王国の国境近くにある泉があったので、私達は休憩を取る事にしたの。


「サツキ、流石に休息しないと体調崩してしまう。この泉で今日は野営しようと思う」

「判りました。私は泉へ水を汲んでくるから、デッカートはテントの用意をお願いね」


 急ぎたい気持ちもあるんだけど、デッカートの言う通りで身体を休めないと、体調を崩せばかえって到着が遅くなる。

 先を見据えて冷静な判断をするデッカートは本当に凄い人だと思った。


 泉でしっかりと休息をとった翌朝は、身体が軽く感じたの。ベッドでまだ寝てるデッカートへ近寄って感謝の言葉を言ってからキスをして起こす。


「貴方のおかげで体調がいいわ♪本当にありがとう。愛してる♪」

「私もサツキを愛してるよ」


 その後は、マルグリット領国を目指して馬を走らせ、数日後にはマルグリット領国内へと辿り着いたの。私は領軍に事情を説明して、領都に居るお祖母様へ連絡を入れてもらい、領軍が用意してくれた場所で領都を目指した。


「これで、お祖母様に相談ができるわね」

「メルヴェイユ様が浄化方法を知ってる事を願うだけだね」

「私……少し疲れたから横になるね」

「あぁ、ここまでくれば安心だ。ゆっくり休ませてもらおう」


 これで全てが上手くいくと思っていたんだけど、そうは行かなかったの……


「サツキ起きて、様子がおかしいんだ」


 デッカートが外の様子に違和感を感じたみたいで、寝てる私を起こして警戒するように伝えてきたけど、マルグリット領国内なので私達に害を与える筈がないと思った。


「デッカート!サツキを巻き込みたくなければ、対抗せずに馬車から出ろ!」


 お兄様が馬車を止めて、デッカートに馬車の外へ出るように命令をする。


「どうやら私は、この国にとっては罪悪人みたいだね。君を巻き込む訳にはいかないので投降するよ」

「そんな、私が説明するから少し待って」


 私はお兄様へ事情を説明する為に馬車から降りた瞬間、お兄様が私の鳩尾に拳を入れた。


「お……にい……さま……」


 私の記憶はそこで消えてしまったの……


「ん……ここはっ!」

「お目覚めになられましたね」

「アザレア、あっ、デッカートは?」

「アントワーヌ様が捕らえました。今は地下牢で幽閉してますので、ご安心を」

「安心って……直ぐに牢から出さないと!」


 私はベッドから起きあがろうすると、お兄様が部屋へ入ってきて私へ笑顔を向けたの。


「ヤツはサツキを攫った罪人だ。然るべき罰を受けてもらう」

「違います!私が望んだ事です。直ぐにお祖母様に相談する事があります。デッカートを牢から出して話合いの場を設けてください!」

「それは出来ない!ヤツは僕のサツキを攫ったんだ……本来なら処刑するところなんだ!」

「お兄様……私はデッカートとレンドルドで起ってる、魔素の異常の原因を突き止めました。お祖母様の意見を聞かないといけないの。お願いだからデッカートを解放して!」


 お兄様は複雑な顔をしながら、アザレアへ目線で部屋を出るように指示をすると、小さく頷いてからアザレアは部屋から出ていった。

 お兄様は上着を脱ぎながら私へ近づくと、そのままベッドへ押し倒して耳もと囁く。


「僕があんなヤツの事は忘れさせてあげるよ。さぁ、深く愛し合おう」

「嫌よ……私はデッカートを愛してしまったの。もう、お兄様と愛し合う事は出来ない……」


 私は、お兄様にデッカートを愛してる事を伝えて、お兄様の求めを拒否したの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る