第2話自主退学と転入生
来栖成は二学期が始まったときには学校を辞めていた。
気付いた時には彼女の存在が学校から完全に消えてしまっていたのだ。
「来栖って学校辞めたんだ…今度あのファミレスに行ってみようかな」
圭子に世間話を振ると彼女は諦めたように首を左右に振る。
「会いに行こうとしないと会えないんじゃないかな」
「だから会いに行こうとしてるんだけど?」
「海外まで?」
「え?もうお金貯まったのか?英会話は?」
「それが伝手を辿って住まわせてくれる家を見つけたんだって。ホームステイ的な感じかな?だから予定を繰り上げて学校を辞めて出発したらしいよ」
それに数回頷くと未だに存在する一つ余った席を指差した。
「学校側はなんであれだけは片付けないんだと思う?」
「さぁ。昨日までは片付いてたよね?」
「そうだったような…気にしてなかったから覚えてないな…」
「私も他人のこと言えないけど…もうちょっとクラスのことにも興味持とうね」
僕らは顔を見合わせると数回頷きあった。
朝のHRの予鈴が鳴り生徒は着席した。
普段なら時間ギリギリにやってくる担任教師が予鈴が鳴った途端に教室に現れたのは珍しいことだった。
加えて言うのであれば本日の教室内は少しだけザワザワしているようだった。
「えぇ〜こんな時期なんですが転入生です。入ってきてください」
廊下から品のある美しい返事が聞こえてきて生徒全員がそちらに視線を移した。
如何にもお嬢様と言う風体のその転入生を目にして男子は色めきだっていた。
「
そこで拍手が巻き起こり男子は今にも話しかけに行きたい雰囲気を醸し出していた。
その男子の様子を見ていた女子生徒の冷めた視線を僕は後ろの席でバッチリと見ていた。
ふっと気になって圭子の様子を確認すると彼女は転入生に目もくれず僕のことを凝視していた。
「ああいう娘。タイプじゃないよね?」
とでも言いたげな視線を向けてきて僕は引き攣った笑顔を向けて応えた。
それでも安心できなかったのか圭子は僕にメッセージを送ってくる。
「お嬢様タイプは好き?」
「まだどんな娘かも知らないから。加えて言うなら何も心配ないよ」
「ホント?」
「本当」
そこでメッセージを終了させると柏崎は来栖が座っていた空席に腰掛けた。
「俺…」
前の席の男子生徒が自己紹介をしようと後ろを振り返り口を開きかけた時。
「結構です。タイプではないので」
きっぱりと一刀両断した柏崎を目にした女子生徒の彼女の見る目が変わった。
敵から一気に味方になった女子生徒達は男子生徒を笑う。
辱めにあった男子生徒はすぐに前を向くと席に突っ伏していた。
「あぁ〜騒ぐのは後にして…今日の日直は中条だな。放課後にでも柏崎さんに学校の中を紹介するように。お前もタイプじゃないって言われたとしても落ち込まないこと。それとちゃんと案内してあげろよ」
担任教師のいじりに苦笑しているとクラスメートは大げさに笑った。
案の定、そこから圭子の機嫌は最悪だった。
ずっとへそを曲げた表情を浮かべていた。
けれど圭子も分かっているのだ。
偶然が重なっただけで僕が悪いわけではない。
だから圭子は何も言わずにへそを曲げているだけなのであった。
放課後がやってきて僕は圭子の席に向かう。
「大丈夫だから。そんな顔しないで」
「だって…」
圭子は唇を尖らせて拗ねているようだった。
「心配ないよ。今日はバイトだから先に帰ってて。学校案内したらすぐにバイト先に行かないとだし…」
「わかった…でも何かあったら報告ね?」
「了解」
そこで会話を終えると圭子はクラスメートとともに教室を出ていく。
僕は柏崎カレンの席まで向かうと声をかける。
「僕で悪いけど…学校案内してもいいかな?」
「是非お願いします。中条さん」
柏崎は美しい微笑みを僕に向けるとキレイな所作で席を立つ。
「ではお願いしますね」
と言うことで次回…波乱の予感。
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