第15話面倒な元カノ2

お盆にお墓参りに向かうともうすぐ夏休みは終わりを迎えようとしていた。

本日はバイトのため身支度を整えると原付きに跨った。

バイト先に到着するとバックヤードでエプロンを着用する。

「おはようございます」

店内に入っていくとマスターは軽くお辞儀をして応えた。

今日のパートナーは関川涼子だったはず。

だが実際に店内で開店作業をしていたのは品野紅だった。

「品野さん。おはようございます。シフト交代したんですね」

「おはよう。そうなの。この間、涼子ちゃんに迷惑かけちゃったからね。いつでも交代してあげるよって言ったんだ。そしたらたまたま今日になったってわけ」

「そうですか…今日はよろしくおねがいします」

軽く頭を下げると僕らはそこから素早く開店作業を行う。

11時5分まえにボードを出すとドアのボードをOPENに切り替えた。

「彼女さん。学校でも人気者なんだって?」

開店してすぐに品野は僕の隣にやってくると世間話を装って問いかけてくる。

「そうですね…」

あしらうわけではないが適当に返事をすると彼女は呆れたように嘆息する。

「凛くんの趣味で学校ではすっぴんでいさせてるってホント?」

「僕の趣味じゃないですよ。どんな趣味ですか…」

「すっぴんの方が好きだよって言う人いるじゃん」

「いますけど…僕はどっちも好きですから」

「へぇ〜。元カノの前で惚気?」

「………」

言葉に詰まっていると彼女はからかいが成功したのが嬉しいのかクスッと笑う。

「なんてね。気まずいのは未だに私のこと意識してるってことでしょ?」

「そうじゃないですよ。元カノと恋バナするのは普通に気まずいです」

「意識してるからじゃん。何も思ってなければ普通にできるでしょ?」

「普通が何か知りませんが…僕は出来ないです」

正直に答えると丁度来店してきたカップルの接客に向かうのであった。


閉店までのロングシフトを終えて疲れ切った身体を伸ばしていると品野はバックヤードにやってくる。

「おつかれ。高校生はそろそろ夏休みも終わりだね」

「そうですね。名残惜しいですけど」

「恋人とは過ごせたの?」

「バイトのない日は殆ど一緒に過ごしました」

「ふぅ〜ん。私のときとは違ってラブラブだ」

品野は少しだけふてくされるような態度を取るとエプロンを外してロッカーに閉まっていた。

「それは…品野さんが僕に向き合ってくれなかったからじゃないですか」

思わず反論の言葉を口にすると彼女は軽く微笑む。

「これからは向き合うよ。だからよりを戻そ?」

その言葉に必死で首を左右に振ると僕はカバンを持ってバックヤードを出る。

「お先に失礼します」

有無を言わさずに別れの挨拶をすると原付きのエンジンを掛ける。

そのまま帰宅すると僕は自室のベッドでやりきれない思いに駆られる。

(今更なんなんだよ…ほんとに面倒クセェ…)

イライラした感情が僕の心を蝕んでいくのを感じているとスマホがブルッと震えた。

何気なくスマホを手にすると恋人である圭子からメッセージが届いていた。

「バイトおつかれさま〜。見て見て♡聖子とオムライス作ったんだ〜」

追加で写真が送られてきてオムライスとともに圭子が写っている。

よく見るとオムライスには、

「大好き♡」

などとケチャップで文字が書かれていて僕は微笑ましくなり、本日のイライラなど瞬時に消し飛ぶ。

「美味そう!今度作ってよ!」

「いいよ〜♡楽しみにしててね♡」

僕らはそこから長いことメッセージのやり取りをしながら夜を過ごしていくのであった。

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