第14話夏休みの一幕
眠りから覚めたのは17時頃だった。
昨夜の幸せな経験を思い出しながらベッドから這い出る。
スマホを手にすると先日ファミレスで偶然鉢合わせた来栖成からメッセージが届いていた。
「圭子と付き合ってるんだって?なんか圭子に余計なこと言っちゃたかも…ごめん」
先日、品野とファミレスに来店したことを言っているのだろうと思うと適当に返事を送った。
「大丈夫だよ。圭子には誤解だって分かってもらえたから。それよりも来栖はなんで学校辞めるんだ?」
世間話の延長として質問をすると彼女もなんでも無いように返事を寄越す。
「やりたいことあるんだよね。学校に通う必要性も感じないから今の内にお金貯めているんだ」
「やりたいこと?」
「そう。夢みたいなものだよ。そのためにはお金が必要なの」
「それってどんな夢?」
「グイグイ聞いてくるね…海外に行きたいだけだよ。英会話に通って喋れるようになったら向こうで暮らそうと思ってる」
「へぇ〜。なんか凄いな。今から夢があるのは羨ましい」
「そう?昔から憧れがあったからその延長だよ」
「そうか。頑張ってな」
「そっちもね」
そこでやり取りを終えるとスマホをポケットに入れて階下に降りていく。
両親は仕事に出ていて家には誰も居ない状況だった。
冷蔵庫の中を開けても食事の用意はなく一度自室に戻ると財布を手にした。
家を出ると近所のコンビニへと向かう。
おにぎりを2つ買って店外へと出たところで出勤途中の梶響と遭遇する。
「凛くんじゃん。眠そうな顔してるね?夜遊びしてたの?」
それに首を左右に振って応えると彼女は続けて口を開く。
「じゃああれだ。噂の恋人と過ごしてたんでしょ?」
その言葉にギクッとして表情を引きつらせていると梶はハッとした表情を浮かべる。
「マジだったの!?紅には絶対に秘密にしなきゃ…」
「そうしてください。何故かはわかりませんがしつこく付きまとわれているので…」
「面倒な性格してるよね。相手が自分のもとに居るときは安心してそんなに興味を示さないのに離れた途端にしつこく付きまとう。そういうのいい加減にやめなって言ってるんだけどね…でも紅って顔が良いでしょ?だから過去にもそれをやって成功している経験があるんだよね…だから癖になってるんだよ。悪癖だね」
梶はやれやれとでも言うように首を左右に振って口を開くと呆れるように嘆息した。
「でも普通に友達として付き合う分には悪いやつじゃないんだよね。だから嫌いにはならないであげてね」
梶からの品野のフォローに軽く頷くと彼女とはその場で別れる。
僕は大人しく帰宅するとリビングで買ってきたおにぎりを食す。
テレビをつけて夕方のニュースをぼぉ〜っと眺めているとスマホが震える。
「昨日、うちに泊まった?」
そのメッセージは圭子の妹である聖子からのものであった。
正直に答えるべきか悩んでいると追加でメッセージが届く。
「まぁ良いけど…程々にね。それと今度は私が居るときにも来てね?」
それには適当なスタンプで返事をしてメッセージのやり取りを無理矢理に終了させる。
両親が帰ってくるまで自室でスマホゲームをして過ごすと夏休みのなんでも無い一日は終わっていくのであった。
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