第13話初

バイトを終えて原付きに跨るとスマホを手にする。

「今日、家に誰もいないんだけど…泊まりに来ない?」

圭子からのメッセージに心が踊ると僕は了承の返事をする。

両親に友達の家に泊まりに行くと嘘のメッセージを送ると僕は原付きのエンジンを掛けてアクセルを回して圭子の家を目指すのであった。


彼女の家に到着するとチャイムを押す。

圭子はすぐに応答すると僕を家の中に招いた。

「おかえり♡」

圭子は新婚夫婦のようなやり取りをすると照れくさそうに微笑んだ。

「ただいま…」

それに倣うように返事をすると僕らは玄関で軽く抱き合いキスをする。

「入って。夕飯作って待ってたんだ」

「そうなんだ。楽しみだな。そう言えば何で今日は一人なの?」

「ん?両親は海外で仕事してるから普段からいないよ。滅多に帰ってくることはないかな。聖子は友達の家に泊まりに行った」

それに数回頷くと僕は安心して彼女の家で寛げそうだった。

他人の家で寛ぐというのもおかしな話ではあるのだが…。

「カレー作ったんだけど…夏バテで食欲不振だと体調悪くなるからね。栄養しっかり取らないと」

「ありがとう。カレーは好物だから助かる」

それに笑顔で答えると僕らはリビングで夕食を取る。

少しの緊張から会話が少なく、ただ淡々と食事を済ませていく。

「洗い物は僕にさせてよ。その間にお風呂入ってきたら?」

そんな提案を圭子にすると彼女は黙って頷く。

圭子が使用した調理道具や食器を丁寧に洗うとリビングでテレビを見て過ごす。

この後に起こるであろうことを想像するだけで僕の心は高鳴り続けていた。

テレビの内容に集中できないでいると彼女は風呂から上がってくる。

「お先。凛も入ってきなよ」

それに黙って頷くと僕は素早く風呂場に向かう。

全身を丁寧に洗うとバスタオルで体を拭き、彼女の用意したスウェットに着替える。

男女兼用のスウェットだったためサイズも大きすぎず小さすぎずぴったりだった。

着替えを済ませると僕はリビングに顔を出した。

彼女は僕に無言で歯ブラシを渡してくる。

これは彼女からの了承のアピールだと感じると僕は洗面所で丁寧に歯を磨いた。

歯ブラシを持ってリビングに戻ると彼女は照れくさそうに口を開いた。

「一応いつでも持っておいてね。夏休みに聖子が居ない日だってあるんだから…」

その何とも言えない誘いの言葉に頷くと僕らは吸い寄せられるように近づく。

抱き合ってキスをすると僕らは圭子の自室に向かう。

キレイに整頓された圭子の部屋で僕らはこれから初めての…。

ベッドに向かうと僕らは夜が明けるまで飽きることもなくお互いを求め合うのであった。


「初めて凛と一つになれて嬉しい…♡これからもよろしくね?♡」

早朝に圭子の家を出ると彼女はすぐにスマホにメッセージを送ってきた。

帰宅すると僕はそれに応えるように返事をする。

昨日は眠らなかったので本日は夕方辺りまで幸せな気分に包まれたまま泥のように眠るのであった。

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