第12話面倒な元カノ
品野紅は大学二年生である。
大学入学祝に娘に車をぽんと買ってあげてしまうぐらいには実家の経済状況は良好だ。
そんな彼女が何故僕のような高校生に好意を持ったのか…。
それは実に簡単な理由だった。
彼女は年下がタイプでたまたま同じバイト先で出来た仲の良い後輩である僕を好きになっただけに過ぎない。
きっとその好意も彼女の気まぐれに過ぎないのだ。
彼女は自由気ままな猫のように勝手で気まぐれなのだ。
それを僕らは理解しているので彼女が口にする言葉にいちいち驚いたりしない。
本日は夏休み中の水曜日。
つまりはバイト先の店休日なのであった。
先日、品野から届いたメッセージではバイト仲間で遊びに行くという旨が記されていた。
それ以降、連絡がなかったので安堵していると目覚めてすぐに電話が掛かってくる。
電話を無視すると僕は身支度を整えて家の外に出る。
本日は圭子の家で遊ぶ約束をしていたのだ。
予定通りに家を出ると見覚えのある軽自動車が家の前で止まっていた。
「凛く〜ん!何で電話に出ないの〜!遊び行くよ〜!」
車内には関川涼子と梶響の姿もあった。
彼女らは呆れたような表情を浮かべている。
それを目にして彼女らの苦労が伺えた。
きっと今みたいに無理矢理に連れ去られたのだろう。
僕は一つ嘆息すると口を開く。
「ごめんなさい。今日は予定があるので…」
「関係ないよ。私が誘ってるんだよ?」
その意味不明な言葉に改めて首を左右に振ると断りの言葉を口にする。
「すみません。こっちの予定の方が優先なので」
そう答えると僕は車の脇を抜けて駅を目指した。
「ちょっと待ってよ!彼女と遊ぶの?そんなの許さないよ?」
「品野さんの許しなんていりませんよ。あんまりしつこくしないでください。僕だって問題を起こしたくないんですから」
追いかけてくる品野に冷たい言葉を投げかけると彼女は少しだけショックを受けたような表情を浮かべた。
「紅もいい加減しつこいぞ。恋人の居る相手につきまとうのはやめな」
後ろから追いかけてきた梶は話に割って入ると品野を制御しようと口を開く。
「響は黙ってて」
品野は冷たい言葉を口にすると再度僕に向き合った。
「本当に遊んでくれないの?」
「はい。恋人以外の女性と遊びに行くことはもう無いです。ごめんなさい」
それだけ答えると僕は先を急いだ。
「凛くん…変わっちゃたな…」
品野はそう呟くと少しだけ残念そうな表情を浮かべた。
だがすぐに表情を切り替えると彼女は何でも無いように口を開く。
「じゃあ今日は女子だけで盛り上がりますか!」
それを耳にした梶は軽く嘆息すると口を開いた。
「最初からそうしようって言ってただろ?甘いものでも食べに行こ」
「そうね。私の傷ついた心を癒やして」
「そんなに傷ついてないだろ。凛くんと付き合っていたのだっていつもの気まぐれでしょ?もう気にせずに次の恋を始めなよ」
「そうだね…」
品野はそこで影のある表情を浮かべると車に乗り込んで街へと向かうのであった。
ちなみに僕と圭子は夏休みの宿題をしつつ三人で日が暮れるまで遊ぶのであった。
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