第11話海〜

夏休み本番。

僕と圭子と聖子は三人で電車に乗って海まで来ていた。

海よりもプールのほうがお金が掛かるという理由から海になったのであった。

海に着くと更衣室で着替えを済ませる。

浜辺にレジャーシートを敷いてパラソルを借りた。

彼女らを待っていると二人はお揃いだが色違いの水着を着てやってくる。

白いビキニを着ているのが聖子で黒いビキニを着ているのが圭子だった。

「似合ってるね」

二人に向けてお世辞ではない褒めの言葉を口にすると嬉しそうに頷いてくれる。

「どっちがどっちって分かってる?」

圭子の言葉に頷くと、

「黒が圭子で白が聖子ちゃんでしょ」

と自慢げに口を開く。

「まぁ彼氏なら分かって当然だけどね」

などと圭子は照れくさそうに口を開く。

「私のほうが可愛いでしょ?♡素直じゃない圭子よりも私のほうが可愛いって言ってくれたら良い事してあげるよ?♡」

聖子は僕の腕にしがみつくと胸を押し付けるようにして微笑む。

それにデレデレとすることは出来ずに無表情を決め込もうと努めていると圭子に尻を蹴飛ばされた。

「何喜んでるの?変態…」

その不名誉な言葉に困っていると圭子は反対側の腕にしがみついてきて僕は逃げ場を失ってしまう。

「どっちが可愛い?」

圭子の質問にどう答えるのが正解なのか困ってしまうと彼女は仕方なさそうに嘆息した。

「同じ顔にそんな事言われても困るよね…」

圭子は呆れたように腕から離れると僕らはそのまま海に向けて歩き出す。

「今日は目一杯遊ぼうね」

圭子の言葉を合図に僕らはそこから時間を忘れるほど海で過ごす。

昼頃には海の家で味の濃い焼きそばやイカ焼き、焼きとうもろこしにかき氷などを食べて満足するまで過ごした。

夕方になった頃、疲れを覚えた僕らは海から上がるとシャワーを浴びて着替えを済ませる。

夏休みが始まってすぐのデートはとても有意義なもので終りを迎える。

彼女らを家まで送り届けると聖子は先に家の中に入っていった。

圭子とマンションの外でふたりきりになると僕は照れくさそうに口を開いた。

「その…海では言えなかったけど…圭子のほうが可愛いと思うよ…」

その何とも言えない僕の言葉に圭子は照れくさそうに微笑んだ。

「言うの遅い…でも嬉しい…」

僕と圭子はそこで見つめ合うと吸い寄せられるように顔を近づけていく。

そのまま暑さに充てられたように情熱的にキスをすると圭子は僕に手をふる。

「また遊びに行こうね。今日も楽しかったよ。ありがとう」

「僕も楽しかった。それじゃあまたね」

マンションの前で別れると僕は帰路に就く。

帰りの電車内で疲れ果てていると唐突にポケットの中のスマホが震える。

それに気付くと眠さを誤魔化すようにスマホを手にした。

「高校生諸君!夏休み本番おめでとう!ということでバイト仲間で遊びに行こう!」

急激にテンションが高い品野紅からのグループメッセージに既読だけ付けると僕は返事もせずに大人しく帰宅するのであった。

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