第10話夏休み突入
「それでは夏休みに入りますが問題行動を起こさずに学生らしい休暇を楽しむように」
担任の話が終わると帰りのHRを終えるチャイムが鳴る。
「夏休みだぁ〜!」
クラスの男子生徒の叫ぶ声が教室中に響き渡り僕らはつられるように両手を上げた。
「これから何処行く〜?」
「明日って暇?」
「早速海行こうぜ!」
クラスでは夏休みの予定を今すぐにでも決めてしまいたい雰囲気に包まれていた。
圭子は僕のもとまでカバンを持ってやってくると右手を差し出す。
「早く帰ろ?」
彼女の手を取ると僕らはクラスメイトの誰よりも早く教室を抜けていく。
校舎を抜けて校門をくぐり抜けると手を繋いだまま帰路に就く。
「この間さぁ〜…」
何処か嫌な予感がしたのだが僕は適当に頷いて相槌を打った。
「来栖に会ったんでしょ?」
「あぁ…うん…ファミレスでね」
正直に答えた所で僕は自分のミスに気付いて口を噤んだ。
「誰といたの?来栖が言うには大人の女性と来たっていうんだけど?」
「それは…」
「それは?」
圭子は僕の顔をじっくりと覗いていて誤魔化すのは不可能だと感じる。
「元カノです」
その答えを耳にした圭子ははぁと嘆息する。
「なんで元カノといたの?よりでも戻す気?」
「違くて…しつこかったからきっぱりと断ってきたんだ」
「しつこい?復縁でも申し込まれているの?」
「うん。でも同じバイト先だから無視はできないし…正直な話をすると僕も困っている。絶対に復縁はないって言っても聞いてくれないし…」
僕の話を聞いていた圭子はうんうんと頷くと面倒くさそうにため息をつく。
「彼氏がモテるっていうのも問題ね。しつこい女に絡まれて大変でしょ?」
「まぁ…でも僕の問題だからどうにかするよ」
「そうしてもらわないと困るけど…無理はしないで。でも何で元カノは話を聞いてくれないの?」
「気まぐれな人なんだ。自分が感じたり思ったことは誰にも曲げさせないと言うか他人の意見を聞かないんだ」
「ふぅ〜ん。面倒な性格ね。思い込みが激しいタイプだ」
それに頷いて応えると圭子は軽く笑った。
何がおかしいのかと彼女の様子を確認する。
「いや、何でも無い。今、私が凛と付き合えていて良かったなぁって思って」
それに笑顔で応えると圭子はクスッと微笑んで別の話題に切り替えた。
「それで…いつ海かプールに行く?」
「えっと…」
僕はスマホのスケジュールアプリを開くと圭子と予定をすり合わせた。
「そうだ。聖子も行くって言ってるけど良いよね?」
「僕は良いけど…。二人はいいの?」
「良いわよ。聖子はしつこいから…さっきの話の元カノさんぐらいにはね」
などと言って圭子は再び笑っていた。
もしかしたら先程笑っていたのも自分の妹のことを思い出してのことだったかもしれない。
そう思うと途端に自分の恋人が可愛らしく思えてくる。
「今日はバイト?」
「無いよ」
「じゃあこのまま街に行こう」
それに了承の返事をすると僕らは放課後デートを楽しむのであった。
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