第9話ファミレスにて
品野の運転する軽自動車の後を追うと近場のファミレスの駐車場に入っていった。
それに続くように駐輪場に原付きを止めるとヘルメットを取る。
車から降りてきた品野は僕のもとにやってくると、
「何か食べながら話そ」
などと言って店内に入っていく。
それに続いて店内に向かうとテーブル席に案内される。
ポテトとドリンクバーを頼むと僕らはそこから少しだけ気まずい雰囲気に包まれたまま会話を進めていく。
「それで…私的にはよりを戻したいんだけど」
品野の勝手な話に僕は軽く嘆息すると首を左右に振った。
「それはできませんよ。僕には彼女がいますし裏切ることは出来ないです」
「私のことはもう飽きた?」
「飽きたとかそういう話じゃないです。それに振ってきたのは品野さんですよね?」
「それはそうだけど…あの時は事情があって…」
「どんな事情があったかは知りませんが僕らはもう終わってるんですよ。復縁するようなことは無いです」
「絶対?」
それに頷いた所で丁度ウエイトレスが注文したポテトを持ってやってくる。
「おまたせしました。フライドポテトです」
その聞き覚えのある声を耳にして思わず顔をあげると、そのウエイトレスと目が合う。
「あれ?凛じゃん。何してるの?」
「来栖。お前こそ学校休んでバイトか?テスト受けてないだろ?留年するぞ」
第三話で名前だけ出てきた来栖という女子生徒。
フルネームを
最近になって殆ど学校で見かけていない。
そんな女子生徒が今まさにバイト中という状況に鉢合わせてしまう。
「あぁ〜…学校は退学すると思うんだ。お金が必要だから」
「そうなのか?何か困りごと?」
「そういうわけじゃないんだけど。とりあえず仕事に戻るね」
来栖はそれだけ告げるとポテトの乗ったお皿をテーブルの上に置いてバックヤードに戻っていく。
「同級生?友達?」
僕らのやり取りを見ていた品野はポテトを一つ摘むと世間話といった体で口を開く。
「そうですね。最近は学校にも来ないで心配していたんですけど…元気みたいで良かったです」
「友達思いなんだね」
「そんなんじゃないですよ」
適当に相槌を打ちながらポテトを食べてドリンクバーのジュースを何杯か飲む。
「私達って何で終わっちゃったのかな…」
品野は唐突に口を開くとコップの中身をストローで啜っていた。
「さぁ。品野さんの気まぐれじゃないですか?」
「そう…かもね。気まぐれって言うのが一番しっくり来るかも…今の復縁したい気持ちも気まぐれかもね」
「そうでしょ。僕も傷つきたくないのでこれからは普通にバイト仲間でいてください。問題を起こしたくはないですし」
「問題?」
「はい。バイト先でも学校でも…私生活で問題が無いほうがストレス無く生きられるじゃないですか」
「それも…そうね」
品野は適当に頷くと伝票を持って席を立った。
彼女は僕の分の会計を一緒にするとそのまま店の外に出る。
「まだ私は諦められないと思うから。それは分かっておいて?私の気持ちを強制的に変えることは誰にも出来ないでしょ?」
「そうですね。それに僕が応えることはもう無いと思いますが…」
正直に気持ちを伝えると品野は不敵な笑みを浮かべる。
「必ずもう一度振り向かせるから」
その一言に戯けた表情を浮かべると首を左右に振る。
「じゃあまたバイト先で」
僕らはその場で別れると各々の帰路に就くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。