第6話元カノとのバイト

恐ろしいバイトの日が訪れる。

元カノと同じシフトの日がやってきていた。

加えて言うのであれば僕に新たな恋人ができてから初めて品野紅と直接会うこととなる。

もしかしたら関川から話を聞いているかもしれない。

品野に何を言われるか想像するだけで少しだけ胃が痛いというものである。

休日の日曜日ということで僕らは午前中からシフトに入ることになっていた。

目覚めてすぐに支度を整えると原付きに乗ってバイト先に向かうのであった。


バイト先に着くとエプロンを着用して店内に顔を出す。

僕よりも先に開店作業をしていた品野とマスターに挨拶をすると仕事に取り掛かった。

「彼女出来たんだってね」

テーブルの上に砂糖などの瓶をセッティングしていると品野は唐突に話しかけてくる。

「関川に聞いたんですか?」

「そうだね。でも酷いじゃん。私の気持ちを踏みにじるなんて…」

「僕らはすでに終わっていたじゃないですか。踏みにじってなんか無いですよ」

「私が気持ちを引きずっているの知ってたでしょ?」

「まぁ…」

僕はそこで少しだけ気まずくなると言葉を濁して顔を背けた。

別れてから出来るだけシフトを被せないように努めていたのだが今日はどうしようもなかった。

関川はテスト勉強のためバイトには入れず梶も大学の課題があるとかでシフトには入れずに居た。

僕だってテスト勉強をしたかったが昨日の土曜日は関川に入ってもらっていた。

しかしながら昨日の土曜日は圭子と妹の聖子と彼女らの家で遊んでしまってテスト勉強は出来なかったのだが…。

その話はひとまず置いておくとして…。

「どんな彼女なの?私に似てる?」

品野は意味深な言葉を口にすると再度僕に質問を投げかけてくる。

「似てないですよ。全然違うタイプです」

僕の答えを耳にした品野は何処か満足気に微笑んで頷く。

「それなら良いんだけど。同級生なんでしょ?凛くんと釣り合ってるの?」

「何がですか?」

「ほら。凛くんって大人の女性が好きでしょ?子供っぽい人好きじゃないじゃん」

「そんなことは…。品野さんがたまたま年上だっただけで年上好きってわけじゃないですよ」

正直な気持ちを口にすると開店準備が整い店内の時計を確認した。

時計は11時5分前を指していて店の扉を開けてボードを店先に出した。

扉に掛かっているボードをOPENに切り替えると客が入ってくるのを待った。

「彼女の何処が好きなの?」

開店して間もない店内にはまだ客が入ってきておらず僕らの他愛のない世間話は続く。

「何処がって…普通に性格とか外見もタイプだったから」

「ふぅ〜ん。私のことはもう全く興味ない?」

「………」

僕は元恋人を傷つける趣味はない。

加えて言うのであれば、これからも同じバイト先なため関係を悪化させる必要はまるでない。

それなので黙ってやり過ごすことを決めるのだが…。

「よかった。まだ私にもチャンスがあるみたいで♡」

品野の言葉を必死で否定しようとするのだが丁度客が来店してきてこの話は流ていくのであった。


20時に閉店すると僕らは作業を終えて店の外に出る。

ふっとスマホを手に取ると恋人である圭子から通知が届いていた。

「明日、放課後にテスト勉強しよ?バイト休みだったよね?」

それに了承の返事をすると原付きにキーを指した。

「これから暇?ちょっとファミレスでも寄っていかない?」

品野の誘いを受ける事は出来ず首を左右に振る。

セルでエンジンを掛けるとスタンドを倒した。

「逃げる気?ちゃんと話ししたいんだけど…」

「ごめん…また今度で」

そう答えることしか出来ずに僕は逃げるように帰宅するのであった。

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