第4話次のデートは恋人の家

例えば、元彼女が同じバイト先な場合の現在の恋人の心境とはどういったものだろうか。

それを少し想像するだけで僕は恋人に真実を告白するのに腰が引けていた。

昨日、バイト先で関川に尋ねられた質問を思い出して僕は軽く嘆息する。

「どうしたの?何か心配事?」

圭子は教室でため息をつく僕の顔を覗き込む。

「あ…うん。まぁそうなるのかな…」

歯切れの悪い答えに彼女は軽く首を傾げた。

「なに?彼女には話せない内容なの?」

「いや…まぁちょっと…」

その答えを耳にした圭子は普段よりも目を見開いて僕の後ろめたい感情を見抜いているようだった。

「何か後ろめたい感情を隠してるでしょ?」

その鋭い視線から逃れることは難しそうだった。

困り果てた表情を浮かべる僕に圭子は問い詰めるように顔を近づけてくる。

「教えて?恋人に秘密はダメでしょ?」

「秘密というか…」

「というか?」

「あ…えっと…バイト先に元カノがいまして…」

「………」

僕の後ろめたい秘密を耳にした圭子は何かを思案するような表情を浮かべる。

そして圭子は一つ頷くと一度首をポキっと鳴らす。

「名前は?」

「えっと…誰の?」

「その元カノの」

「品野紅」

元カノの名前を口にすると圭子はスマホを操作していた。

そのまましばらく無言でスマホを操作すると圭子は一つ頷いて隣の空席に腰掛けた。

「この人であってる?」

圭子は品野紅のSNSを見つけ出すと画面に表示させて僕に見せる。

そこには品野紅の写真が表示されていて僕はそれに頷いた。

「へぇ〜美人なお姉さんタイプだ。どっちから告白したの?」

「彼女から告白されて…」

「どれぐらい付き合っていたの?」

「半年ほど…」

「この人とキスをしたの?」

それに頷いて応えると圭子はかったるそうに一つ嘆息する。

圭子は再び僕に顔を近づけると耳元で小声で囁いた。

「もう好意は無いんだよね?」

それにゆっくりと頷くと圭子は仕方なさそうにため息を吐く。

「まぁしょうがないよね。元カノが居るのは聞いていたし。こういうことも起こるかなって覚悟していたから。でも…もしも元カノに浮ついた気持ちを抱いたとしたら…その時は分かっているよね?」

「………大丈夫。そんなことにはならないから…」

「そう。ならこの話はもうおしまい。そう言えば土曜日はバイト無い?デートしたいんだけど…」

「今週は無いよ。何処に行こうか?」

僕の答えを耳にした圭子は喜ぶように両手を上げると少しだけ顔を赤らめた。

「その…家に来ない?」

それを耳にして僕の心臓はやけに高鳴った。

頷いて息を呑む自分が少し情けなかったが僕は土曜日に初めて恋人の家に行くことが決定するのであった。

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