第2話少し怖い部分も…かわいい
交際を始めてから初となるデートの日。
本日は電車に乗り栄えた街まで行こうという話に落ち着いていた。
田丸よりも早く駅に到着すると彼女を待った。
「おまたせ」
彼女は宣言通りバッチリとメイクをしてオシャレな姿で駅のホームに現れた。
「うん。行こうか」
彼女の手を握ると電車が来るまでの間、他愛のない会話をして過ごす。
数駅離れた街まで電車に揺られていると乗客の学生が田丸を見てヒソヒソと何かを話していることに気付く。
「かわいいよな…」
「男の方羨ましいな…」
「釣り合ってるか…?」
耳を済ませるとそんな声が聞こえてきて僕は苦々しく顔をしかめる。
うざったく感じていると田丸はそれに気付いたのか僕の腕を抱いて甘えた声を出す。
「今日は何処に連れて行ってくれるのぉ〜?♡ずっと楽しみにしてたんだよぉ〜♡」
わざとらしく芝居がかった彼女の声に頬が緩むと薄く微笑んだ。
「映画に行って街をぶらぶらって感じかな」
「えぇ〜楽しみぃ〜♡」
嘘くさい田丸の態度に笑いを堪えるのが限界だと感じた所で丁度目的の駅に到着する。
「早く行こう」
僕らは電車から降りるとホームに降り立つ。
「嫌な感じだったね。人の恋路を邪魔するやつは…」
彼女はそこから汚い言葉を吐くのだが僕は聞かなかったことにしておいた。
街に出るとそのまま映画館まで向かい僕らは二時間ほどの恋愛映画を観ることになる。
映画が終われば街を歩いて気ままにショッピングを楽しんだ。
夕方が訪れて再び電車に乗ると地元まで戻っていく。
駅に到着すると彼女は乗り換えがあるため一緒に降車した。
「ちょっと話していこ?」
彼女は僕を引き止めると駅構内にある喫茶手に入店した。
二人共、カフェラテを頼んで席に着くと彼女は話を始めた。
「中条くんって私が初カノ?」
「違うけど…」
「ふぅ〜ん」
彼女は少しだけ不機嫌な表情を浮かべるとコップの中身をストローで啜った。
「田丸さんは?」
「初カレだけど」
「そうなんだ…」
「田丸さん。じゃなくて圭子って呼んで?♡」
それに頷くと僕も自らの名前を口にする。
「僕も凛で良いよ。友達と家族以外で名前で呼ぶ人は居ないけど」
「え…それって私も家族ってこと!?」
圭子はわざとらしく大げさに喜んで見せる。
僕はそれに苦笑すると、
「そうかもね」
などと誤魔化してやり過ごす。
「今までの彼女とは何処までいったの?」
「えっと…何処までって?」
「どういうことまでしたのかなって」
「あぁ…キスまでかな…」
その答えを耳にして彼女は再び不機嫌な表情を浮かべた。
「キスしたことあるんだ…」
明らかに落ち込んだ表情を浮かべた彼女は最終的に目を大きく開けて僕に要求する。
「じゃあ私にもして?」
「え?ここで?」
「そう。ここで」
僕は言葉を失うと辺りを確認する。
幸いなことに客はそこまで居なかったので対面に腰掛ける彼女に近づくと音を立てぬように静かにキスをした。
「ふふっ♡これで何もかも私で上書きされたでしょ?」
などと言って妖しく微笑む彼女に若干の恐怖を覚えるが今のところは何の危害もないので僕はそっとやり過ごすのであった。
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