03_17 木枯らしの街道

 マギーは元賞金稼ぎで、今も街道を脅かす盗賊や追剥の類を常に警戒している。ヘルナル中尉もまた、犯罪者の取り締まりや防壁の外からの脅威に目を光らせていた。外部との摩擦が起こるたび、遊牧民に鉱夫団、牧童や隊商との対峙を強いられて気を抜けない。黄昏の世では、その全てが武装集団である。そうした背景もあって、マギーやヘルナル中尉と言った人物には、疑念と偏見を持って他者を警戒する習い性がついてしまっていたのだろう。


 実際には、セフの村人に悪辣な目論見など大して無かったし、商売上でもマギーの脅威になることはなかった。朴訥な農民であったセフの衆たちは、ごく普通に努力して、ごく普通に報われなかった。


 たった二人しかいないマギーたちと違って人数が揃っており、最初からある程度の元手も持っていたし、頭の切れる村人もいたので、時には多少の利益が上げていたが、始めたての行商には波が大きく養うべき子供や病人を抱えてる集団には不向きであったし、なにより危険と気苦労の割に合うものではなかった。


 隊商に向かったセフの衆は、緩やかに元手を減らしていった。行商自体は黒字であったが、街道筋での飲み食いには全て金が掛かったし、旅慣れぬ者たちは節約の方法に疎かった。セフ衆はもはや畑も共有林も所有しておらず、そして大人数はいるだけで食べ物と薪を貪欲に消費する。街道の乏しい林は、ほぼすべてが他所の集落の村有林であり、大勢のよそ者が入会地いりあいちで薪を取る事は許されなかったし、時に盗賊に追われて旅籠に逃げ込むこともあって、仲間を失わずに済んだのは、まだ幸運だったと言えるだろう。



 一部の者は細々と行商を続けたが、大半の者はすでに意欲を失っていた。しかし、元の村に戻ろうにも、かつてのセフには巨大蟻が徘徊しており、その為、村人たちは故郷への帰還を諦めざるを得なかった。すでに巨大蟻の巣穴は街道付近に広がっており、不用意に近づけば旅人や荷物ごと捕食される可能性すらあった。


 村を奪還しようにも、所持する武装がクロスボウや火縄銃の数丁がやっとの村人たちでは、数十匹の巨大蟻(その中には当然に兵隊蟻や恐るべき戦士蟻!すら含まれている)を討伐するのは、余りにも望み薄だった。


 村人たちは何度か話し合いを重ねた。斥候を出して蟻の巣の規模を調べた者もいたが、命辛々に戻ってきた者が語るのは絶望的な情報ばかりだった。巣穴は地中深く広がり、蟻たちは昼夜問わず活発に活動しており、しかも数は減るどころか、さらに増えつつあるように思えた。


「こんな武器でどうしろってんだ……」老いた村人が貧弱なクロスボウを手に呟いた。弓弦はすり減り、火縄銃の火薬も残り僅かだった。蟻の硬い外殻を貫けるかどうかも怪しい状況では、奪還作戦など夢物語に過ぎなかった。


 傭兵や討伐隊を雇う案も出たが、それにも膨大な資金が必要で、今のセフの衆にとっては、とても現実的な解決策とは言えなかった。

 ポレシャに奪還を依頼しようにも、居留地も先年、巨大蟻の侵攻によって甚大な被害を受けたばかりだ。必死に防備を立て直してる最中、小さな村が救援を求めたからと言って、助けてくれる筈もなかった。



※※



 ポレシャの下層区画にある崩れかけた劇場跡は、とある小さな渡り人オーキーの徒党が拠点として利用している。建物には大型の貯水槽と鉄製のストーブが備え付けられており、徒党が手を入れて補修を行ったことで、現在では設備を利用した贅沢な風呂を楽しむことが出来た。


 もっとも、徒党の構成員でも風呂は基本、順番待ちであった。部外者がこの楽しみを享受する為には、2日分の食糧配給券という大枚を支払わなければならない。代価を払うことができる者でも、一時の享楽の為にそれだけ払うのは躊躇する筈であった。


 サングラスを額に掛け、口を半開きにしたマギーが風呂に浸かっていた。

 んああああ、と二十歳の娘が出してはならぬ重低音を洩らしながら、涎を垂らしている。風呂桶の横のテーブルには、酒瓶が氷塊と共にアイスバケットに入れられていた。


「こんなん要求する客は市民にもいないぞ」建物の主である『陛下』が酒瓶の前に崩壊前の高価なグラスを置きながら、そう愚痴った。

「ズールじゃ、結構当たり前のサービスなんだけどね」葉巻を吸いながら、裸のマギーが照れる様子もなく応答している。

「……ヤベェ町だな。燃料をどれだけ貪ってるか分からんが、曠野のド真ん中でよく維持できるものだ」


「そんで、セフの衆の商売は上手くいってない?」シガレットケースから細葉巻パンアテラを一本差し出しながら、マギーが尋ねる。口に咥えた『陛下』だが、考え直してポケットにしまった。

「そいつに関しては、娘の方が詳しい。なにしろ、お友だちが大勢いるようだからなぁ」





「……都市に持ち込んだガラクタは殆んど売れなかったみたい。値下げしてなんとか半分ほど売り捌いて、当座の資金は確保できたけど、期待ほどではなくて、皆がガッカリしたとか」ニナと並んでロビーの階段へと座り、奢りのチョコレートを食べながら、路地裏の王女さまは、セフ衆の子供が親から聞いたと言う話を、又聞きと釘を刺した上で口にした。

「彼らにとっては貴重な財産や戦利品でも、ズールの人たちには見飽きてるからね」ニナはこともなげに頷いている。そして村から持ち込んだ財貨も、様相を観察する限りでは尽きつつあるようだ。取りあえずの荷物置き場を見るだけで、理解できた。

 元は隊商の随員であったマギーさえ需要をよく調べ、物資不足のポレシャに持ち込んでいたにも関わらず、最初の数か月は小遣い程度の利益だった。元手が少なかったし、屋台や露店の商人たちにさえ相手にされないほどみすぼらしい風体だったから、渡りオーキーの日雇い仕事の方が稼げたほどだ。


「で、今は廃墟で漁った品とか、元の村から持ち出した家財とか。近隣の村とかへ売りに行ってるそうなのだわ。後はポレシャで仕入れたガラクタも、物資の乏しい村だと売れてるみたいね。まだ、何人か行商を続けてる人はいて、その人たちは上手くやってるみたいなのだわ」言ってから、王女さまは付け加えた。

「その中には、マギーの都市から仕入れてきた品物もあるみたい」

「ふうん」頷いたニナがなにを考えてるかは窺えなかった。

「でも、大勢で沢山運んでも、赤字にしかならなかったと……隊商みたいに動けるわけないし。人数だけいてもそれはそうか。そりゃ、そうだよね」自らを納得させるように繰り返したニナが、「でも、よく知ってる」と王女さまに視線を送った。

「父さまにも相談してたもの、あの人たち」王女さまは事も無げに告げたが、情報が集まっても、それを俯瞰し、筋道立てて整理できるかどうかは別の話だ。

 ニナの奢りのチョコレートを平らげた路地裏の王女さまが、立ち上がった。

「貴方たちの方は、上手くいってるようでなによりなのだわ」言った王女さまの衣服も、以前よりは大分、上等な白いフリルの付いたシャツと黒のスカートパンツだった。労働者階級の居住者や下層民は、金があっても子供に動きやすそうな格好を優先させる。郊外に出掛ける農民たちも同様だった。お洒落の為に時に動きにくい服装を選ぶのは、防壁の内部に住む市民の子女だけだ。


 

 ニナが駆け込んでくると、マギーはまだ風呂に入っていた。浴室の屋根の一部には亀裂が入って、青空がのぞいているが、今はシートで覆われているために、室内には若干の湯気が立ち込めている。

「あああ、気持ち良すぎて天国いきそう」入れ墨にサングラスで、葉巻を吸ってる筋骨隆々のデカ女なマギーちゃん、路地裏の王女さまはちょっと脅えた表情になって囁いた。

「最悪なセンスなのだわ」

「そう?凄く格好いいよぉ」身体中に銃痕や切り傷が刻まれており、見た目、完全にヤバい人物だが、ニナの性癖にはドストライクだった。

「マ、マギィ。すっごいイチャイチャしたいよ」ニナがもじもじして言うと、聞いたマギーが静止した。キリッと、真面目な顔で陛下の方を向いた。

「二人きりにしてくれないか?大事な話し合いがあるんだ」


「おぉ、好きにしろ。金は貰ってるしな」娘を促して室外に出た『陛下』が、我が子に言った。

「お前は、ああなるなよ」

「……頼まれても、御免なのだわ」王女さまは鼻を鳴らしたが、少し憂鬱そうに浴室を振り返った。

「でも、あの子もちょっと頭おかしくなってきてる気がする」

「そりゃ、お前……」なにかを言いかけた陛下が話題を転じた。

「三年くらい前か。盗賊に追いかけられた時の事覚えてるか?」

 父親の問いかけに、王女さまは身を震わせた。

「忘れるはずはないのだわ。生涯であんなに恐かったことはないのだわ」

「この半年だけで2回、追いかけられたそうだ。一度、捕まったと……」娘の頭に手を置いて『陛下』は告げた。

「誰であろうと、生死の緊張は、短期間に繰り返すべきじゃない」



 ※※



 ・三つの脅威 盗賊、屍者の群れゾンビ・ホード、そして変異獣


  曠野に暮らす人々にとって、最大の脅威が略奪者レイダー屍者の群れゾンビ・ホード、そして変異獣の三つである。街道筋に限っては、略奪者レイダー盗賊バンディットと言い換えてもいいかも知れない。



盗賊バンディット


 大抵の旅人にとって、盗賊バンディットは対処のしようがない存在である。

 何故なら、強力な火器を保有し、人数を揃え、土地を知り尽くしている盗賊団に対抗するのは、普通の人間たちにとって容易な術ではないからだ。下手に抵抗すれば家族や命を失うだけ――そうした恐怖が人々を縛り、無力にさせる。


 強力な護衛を雇った隊商、地元に根を張る武装農民の集団、或いは大きな居留地の警備隊など、盗賊団を寄せ付けない勢力も街道上に存在しているが、しかし、盗賊バンディットたちも馬鹿ではない。徹底的に相手を見極め、勝てると判断した場合にのみ襲撃を仕掛ける。武装勢力を避け、弱者を狙うやり口は狡猾そのもので、曠野を生きる人々の恐怖を一層深めている。



屍者の群れゾンビ・ホード


 盗賊団に比べれば、屍者の群れゾンビ・ホードには、限られた方法ではあるものの、まだ対処の余地がある。戦力としての脅威度は盗賊団よりも遥かに高いものの、注意深く情報を集め、事前に動向を把握することで、孤独な旅人でも迂回することが可能だ。


 総括すると、戦力的には屍者の群れゾンビ・ホードは盗賊団を遥かに超えるが、旅人から見れば、実際に直面した際の危険度では盗賊の方が恐るべき存在かも知れない。


 とは言え、群れホードを侮る事は誰にも出来ない。群れホードの最大の脅威は、圧倒的な「数」にある。死の群れホードの侵出した土地は、その瞬間から、最大級の危険地帯と成り果てる。

 どれほど武装した大規模な隊商や居留地の警備隊でも―――都市軍ですら、数千単位の屍者の彷徨う地域に迂闊に踏み込めば、呑み込まれてしまいかねない。


 そして、人々が最も恐れるのが『死の到来』である。居留地や宿場町など、人が集う拠点の防衛力を上回る大規模群れホードの襲撃――陥落こそが避けられない最悪の事態だった。もはや、住人たちに逃れる術はなく、死の群れはさらに膨れ上がって、程なく近隣一帯を飲み込むだろう。人々の姿は消え失せ、ただ緩慢な足音と虚ろな呻きだけが、風の噂に乗ってその地域の滅亡を人々に僅かに伝えるのみだ。


 個人や少数の旅人であれば、注意深く情報を集め、危険な領域を迂回することができるだろうが、町は逃げられない。もっとも、それは間違って旅人が『死の町』に踏み込まない限りの話だ。居留地や宿場町が壊滅し、屍者の巣窟へと変わった直後の町は、まさに地獄と化している。変わり果てたばかりの元住人、新たな屍者たちが地獄への道連れに、いまだ生きている人間の気配を飢えた獣のように嗅ぎつけるからだ。 

 『死の町』には、死にきれなかった亡霊たちの記憶が巣食っている。




・変異獣



 そして変異獣。種類は多種多様で、恐ろしいほど凶暴な巨獣や群れもあれば、成人がこん棒一本で対抗できるような小型の変異獣もいる。それでも、変異獣こそ、ある意味で人間にとって最大の脅威だった。盗賊なら金で話をつけられる者もいる。ゾンビなら近寄らなければ避けられる。しかし、変異獣は違う――それらは人を餌として狩りを行う、人間にとっての悪夢。地獄の底から這い出たような化け物たちだった。





 スカッター(Scatter)は、変異獣の一種で、名の通りまるで群れで散らばるように行動する。体格としては比較的に小型であり、単独で人間たちと遭遇すると、驚いたようにこそこそと逃げることが多い。しかし、集団となると脅威度は一変する。スカッターは群れで狩りを行い、動きは恐ろしいほど協調性を持つ。目立たないように動きながら、獲物の足や血管、関節を鋭い牙や爪で狙い、次第に追い詰め、瞬時に仕留める。


 一対一なら普通の成人男性、或いは女性でも対処できる者も多いが、数が集まると厄介さは倍増では済まない。スカッターは囮や複数での息を合わせての攻撃など、高度な連携を使いこなす為に、狩人やレンジャーの一部には、より大型の変異獣よりも脅威だと見做している者もいる。

 過去に単独、或いは、少数の群れを狩った経験から、スカッターを侮っている者たちは、集団で迫られた時、その真の恐ろしさを知ることになるだろう。



 木立の合間から、不気味な叫びが響いてくる。偶々、居合わせただけの十数人の旅人や農民、行商人や牧童たちは、思い思いの武装を構え、或いは遮蔽を取りながら、顔を見合わせたり、背中合わせになって緊張に喉を鳴らしていた。

「ニナ、出来るだけはなれない。木を背後、余裕あったら私の背後カバー。機を窺って離脱。どっちの指示でもよい」

 手早く端的に伝えたマギーの声も、やはり緊張を帯びていた。

「りょ」答えたニナの表情も微かに強張りながら、木立の合間を忙しく視線で探っている。


 風の音とともに、草や枝が揺れ、静かなはずの森の空気が次第に重く、冷たく感じられる。

「や、野犬かな」誰かが脅えを隠し切れない声で囁いた。

「どうにも、そんな生易しい相手じゃなさそうだ」落ち着いた声が返答する。

 旅人たちは身構えながら、到来する瞬間を待ちわびていた。


 マギーとニナにとっては、いつも通りの旅程。いつも通りの経路であった。晩夏の日、薄暗い雲に覆われた曇天のした、見通しは悪く、風が吹き荒れていて熟練の斥候二人にもあたりの気配を探る力は落ちていた。


 同行していたのは数人の小さな隊商や近くの村の農民たちなど。小型の魚群のように、怪しいものがいなければ、なんとなく集まって自然と隊列を形成するのが危険な街道を往来する人間たちの古来からの知恵だった。


 灌木や岩場、そして起伏の大きな丘陵に視界を遮られ、視界が薄暗く制限される中、足音や息遣いが確実に迫ってきいた。

 そして咆哮、幾重にも重なりながら、突然、地面の影や草むらから影が飛び出し、鋭い爪と牙が光った。


 スカッター――それは群れで狩りをする変異獣。数匹が素早く木々の間を駆け抜け、旅人たちに向かって突進してきた。動きは恐ろしいほど協調しており、まるで獲物を囲むように、逃げ場を奪うように迫ってくる。


 マギーは大振りのナイフを構えていた。賞金稼ぎの動体視力は常人よりかなり高く、怪物の喉首を確実に捉えていた。猪などに比べれば、比較的に容易い相手だった。マギーの畏れはニナの喪失にあった。絶命の痙攣に捉われた怪物を無視して、木を背後に二匹目に備える。


「囲まれてる!囲まれてる!」一人の旅人が叫び、剣を振り回してる。周囲を見渡しても、木々の隙間からはどんどんとスカッターの影が飛び出し、或いは見え隠れするばかりだった。何匹いるのか、それすらも混乱する旅人には分からないだろう。


「……十七、八かな?」マギーは呟いた。接近してきた二匹目を牽制するが、足首を狙ってきた三匹目を危うく躱して、ニナのカバーで突き出した槍に救われた。

 思ったよりも高度に連携が取れている。早めに離脱した方がよさそうだ。

 別の農民が家族の背中を守ろうと、槍を構えながら叫んでいた。「みんな、連携を崩すな!一匹ずつ倒すんだ!」弓は中々、当たらず、クロスボウは装填に時間が掛かる。火縄銃……特に長銃は、装填に時間が掛かって、これほどに距離を詰められては、ほぼ無力だった。


 スカッターは人間の言葉を理解してるかのように、即座に一斉に動き出す。何匹かが唸りを上げながら前へ飛び出し、別の者は左右から回り込んで来る。すべてが一体となり、まるでひとつの生き物のように連携している。動きに不気味さを感じながらも、旅人たちは必死に応戦していた。


 一人の旅人が槍でスカッターの一匹を突き刺すと、変異獣は悲鳴を上げて後ろに飛び退く。しかし、すぐに他のスカッターが隙を突き、太腿に食らいつこうとしてきた。獲物を狙う目は冷徹で、しつこく、容赦がない。


 何処かで悲鳴が上がった。「逃げるんだ!走れ!」誰かが叫び、旅人たちの怒鳴り声が交錯した。所詮は、烏合の衆。逃げようとするもの、固まって戦うもの、少しずつ後退を始めるもの。


 しかし、スカッターはそれを許さない。数匹が切り崩すように外縁の位置にいる者たちに襲い掛かり、また別の数匹が背後から迫っては揶揄うように唸りを上げて牽制し、獲物を追い詰める。数匹が牙を剥き、突進して人間たちの傍らを駆け抜ける。


「くそっ、こんなところで……!」旅人たちは恐怖に震えながらも、必死に反撃し続ける。槍を構え、剣を振り回しながら、身を守るために足掻くが、スカッターは決して一匹ではない。数が集まると、脅威は計り知れない。外縁では、背の高い娘が引きずり倒されたのが目の端で捉えていたが、助ける余裕はなかった。

「ああ、畜生……」


 マギーは、別に引きずり倒されてない。たった二匹の体重なら持ち堪えられる。攻撃しやすい態勢で、敢えて地面に倒れ込んだ。首と袖に分厚い包帯と厚手の布を巻き、噛みつかれても数秒持つ。合間に、鋭いナイフが煌めいて群がってきた獣たちの短い脚や腹を裂いたマギーが立ち上がった。ニナに向かって吠え立ててる四匹、五匹と殺して、飛び掛かってきた六匹目を宙で掴んで、頸椎をへし折った。投げ捨てると、包囲にあっさり穴が開いてる。

 かつて、ダリウス・スコヴァが死んだのは、他のものを見捨てられなかったからだ。しかし、マギーは、何の約束もしていなかったし、知り合いもいなかった。そして、他の旅人や農民がチャンスがあればそうした様に、マギーも躊躇しなかった。

「さて、逃げるよ」と事も無げに告げ「りょ」そうして二人は、尻に帆を掛け、とっとと逃げ出した。



 旅人の一団が必死に防戦している中、ふとした隙間で数匹のスカッターが背後へ回り込んでいるのが見えた。鈍い硝子のような目が獲物を探し、次の狩りのターゲットを定めているのが分かる。

「急げ!誰か後ろを!」一人が叫んだ。だが、動きは遅すぎた。スカッターは集団で動くことでその足を速くし、何度も攻撃をかわしながら次々に襲いかかる。

 あまりにも素早く、絶え間ない襲撃に、旅人たちはついに息を切らし始めた。そのとき、ふと一匹のスカッターが横切った瞬間、別の旅人が槍をしっかりと突き刺すことに成功した。しかし、それも一瞬のこと。すぐに群れが隙を狙い、数倍の勢いで押し寄せてくる。


「駄目だ、無理だ!」一人が絶望的な表情を浮かべ、剣を降り下ろすも、次の瞬間には別のスカッターが手首に噛みついていた。恐怖と絶望の悲鳴が上がる中、群れがさらに近づき、狭い範囲に閉じ込められた旅人たちは、無力に次々と押し潰されていった。








 8月下旬


  マギーたちの所持金 1266クレジット


   大型の背嚢と中型の背嚢を購入 450+250クレジット


   体重が分散して、運びやすく、走りやすい。あまり敏捷さを損なわない。


    残り95日

 

  ※自分で書いてて、此処は地獄かと思いました まる



 おまけ


 スカッター


・特性や狩り方


 スカッターは敏捷で素早く、かつ忍び足で近づくのが得意です。個体が小さく、一体、一体はあまり脅威に思えませんが、集団として連携すると高い狩猟能力を発揮する特性を持っています。小さな音を立てずに周囲を探り、獲物を罠にかけるように囲い込みます。


・外見


 体毛は薄いか、殆んどありません。汚れた灰色の体色を持ち、自然界では保護色として働くので、特に夕方は目立ちません。小型の獣として、鋭い爪や牙を持っています。特徴的なのは目。目が光を反射し、暗闇での視覚が非常に鋭い。また、皮膚は変異によって一部が硬化しており、高い耐久力も誇ってます。





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