第8話
翌日。
魔導書は赤鼻徒に預け、俺と一条、夜奈は合流し、祠から10分ほど登り、心霊現場であるトンネルに到着した。
前回もここでシクと戦ったから同じことをすればいい。
夜奈が天候を操りサポート、俺が基本的にシクの封印、一条がシクとメインで戦い弱体化させる。前回は俺自身が封印と戦闘をどちらもやっていた。
雨の時にしか姿を現さない。そして自ら雨を降らせることも出来ると言われている。なぜなら、シクが世に解放されている時は大阪ではゲリラ豪雨が多発する。そして、雨の時のみ白い服の女性の目撃情報があるからだ。そしてシクは周辺の雨に妖術をかけ、その雨に濡らされた者の精神を削ったり麻痺させる力を持っている。西日本では「針涙」と言われている。この妖術によって、大阪府全域で被害が多発しているのだ。
しかし、シクなどという名前は皮肉にもかなりこの地域で忌み嫌われているのだろう。単純なネーミングだ。『
元凶はシクだが、あのトンネルには無数の霊が沢山縛られている。前回はシクのみを現地に封印し、他の霊は放置した。そのため他の霊の力によってシクの封印は解除されてしまったのだろう。
シクの封印の手順はさほど変わらない。シクはこちらが意図的に雨を降らしたとしても顕現する。そして我らが1人でもシクの姿を視認した上で雨を止ませてもシクは姿を消さない。雨のない状態のシクは針涙を使えないただの霊だ。
一条はてるてる坊主を逆さに吊るした。夜奈は合掌しそのてるてる坊主に何やら念じ始めた。
前日に心斎橋で見たのと同じだが、てるてる坊主は逆さに吊るされている点だけ異なっている。
生者が逆さごとをすることで負の方向にオーブが働き、影響も逆になる。
と、思っていたのだが、夜奈いわく、このてるてる坊主に関してはそういう事では無いらしい。てるてる坊主の逆さ吊りはそれはまた別の儀式という扱いらしく、正の方向にオーブを働かせているようだ。
「今から10秒後に雨を降らせますよ。いいですね」
「おう」
俺が答えると夜奈は「10、9、8……」とカウントを始めた。
「……、5、4」
夜奈はカウントを止める。そして、みんな自分の中で残りの3秒を数える。
3
2
1
パキっと木の音が鳴る。
一瞬にして半径30 mを囲うようにドーム状の膜が張られた。遅れるように雨も降り注ぐ。
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