第7話

 俺の目には木造の天井が映された。俺は地獄から復活したようだ。

 これで二回目だが今回も手足の感覚が悪くなったり少し青ざめている。そりゃそうだ。この肉体はさっきまで死んでいたのだ。


「おかえり、まだ立たない方がいいぞ」

 赤鼻徒は俺を上から覗き込むようにして言った。

「おう、……いてて」

 頭が上手く回らないし、少し頭痛もする。

「この魔導書からオーブが減っていない。この怪物はまだ閻魔から奪われてないという事だな。よくやったじゃないか」

 赤鼻徒はそう言い魔導書を渡してきた。しかし手を触れた瞬間

「いっッッッた」

 右手の甲に爪で引っ掻かれたような3本の傷ができた。サイズ的に猫の爪か?

 らのの想像体は人間だが、あの日現れた100%のらのは巨大な猫の怪物だった。傷は大きくはないが、猫という特徴的にらののオーブが暴走したことで俺の手に傷が出来たと考えて良さそうだ。

「まだ、こいつの使役が出来ていないようだな重紙」

「いやそんなハズないんだけどな……。おかしいな汗 らのちゃーん?」

 俺は情けなく魔導書に優しく呼びかけた。

「反抗期かよ」

 赤鼻徒はそう言い、もっと俺に魔導書を近づけると、俺の右腕に何発も引っ掻き傷ができた。

「痛い痛い痛い痛い!」

「いや、違うか」

 右手を抱えて悶える俺をよそに、赤鼻徒は何やらぶつぶつ言っていた。


「おい重紙」

 赤鼻徒は魔導書を投げ置き、俺の額に手のひらを当てた。熱でも測ってるのか。いや違う。ようやく回り出した頭で俺は地獄での出来事、契約内容を思い出した。


「オーブが……半分もない」


 俺はオーブを閻魔に差し出すことを代償に、閻魔の力を借りることに成功した。


 エントロピー増大。


「重紙のオーブが過剰に減った事で、怪物の膨大な量のオーブが勢いよく流れようしている」

 つまり、俺は元のオーブに回復するまでこの魔導書に触れることが出来ないと。

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