第5話
俺、夜奈、一条の3人は閻魔と契約すべく、大阪にもある獄門の祠へ向かうことにした。
道頓堀駅から乗り、某駅に到着した。
そこから徒歩15分。上り坂ということもあって、体力のない夜奈はもはや息絶えるかのように弱っていた。しかも先程天候を変える儀式を行い、かなりのオーブを消費したのだろう。
途中、町から外れて森の中を進むと目的地である獄門の祠に着いた。
「ここまで着いてきて貰っちゃってごめんなんだけど、ここから先は俺1人で大丈夫だから」
「……は?」
夜奈は少しキレているようだ。
「ごめんなさい。でもトンネルはもう少し登るので。とりあえずここからすぐ近くの市街地は色々店があるので回っててください。その間に閻魔と契約を取ってきます」
そう説明すると2人は何やら言いたそうにしていた。
「灯って……サラリーマン気質ないか」
「ですね。事務的な感じで」
と、どうやらどうでもいい事を思っていたようだ。
「そうだ、夜奈さん。さっきのスタバの代わりじゃないですけど、モンスタードリンクの赤いやつをお願いします。あと串カツ」
そう言い俺は祠へ入った。
中に行くとモゾモゾと何かが動いた。
「久しぶり、
そう言うと、そのモゾモゾは起き上がった。
背丈は子供サイズだが、立派な髭と険しい顔。装束姿の赤鼻徒という名前。
それよりもっと重要な特徴は、真っ赤な肌と長い鼻。天狗そのものだ。
「3ヶ月か……? それ程前にある人間の儀式を行って以来、ずっと寝ていた。この時代は仕事がなくて困るな」
「天狗なら風を司るんだろ? 人間と契約して風の能力者として働けば?」
「じゃあ聞くが重紙灯。俺と契約するか?」
「しないな。この現代、風の能力は需要がない」
「そうだろ。しかも、西洋から日本に上陸してきた風の精霊の方が人気が高いんだ。可愛いから」
「上位互換が生まれてしまった訳ね」
「……で、今日もあれか? トンネルの幽霊か?」
赤鼻徒は立ち上がり外を見た。気づかないうちに雨がパラパラと降っていた。
「いつの間に」
「数年前もそうだったな。トンネルの幽霊『シク』 あいつが現れると天気の変化が酷くなる」
「シクを今回こそ地獄に送る」
「重紙……。前回みたく、契約をキャンセルするのはあんまり良くない。もうしないでくれよ」
「大丈夫だ。もう、幽霊に情はなしだ」
「それと、お前が持っている本を俺に預けろ」
「……え?」
らのが封印されている本のことか。
「早く渡せよ。幽霊と馴れ合わないんだろ。別にこの怪物を除霊したりはしない」
「……じゃあ、何のつもりだ?」
俺は意識的に胸ポケの魔導書に触れた。
「そして言っておくが、それを持って地獄へ行けば、確実に怪物の命は無くなる。この怪物と馴れ合うことは、閻魔様からしたら罪だ。契約以前に処罰を受けるだろう。だからお前が今持っておくのはマズイかもしれない」
らのが怪物……。確かにあの日街中で暴走した。でも……。
いやでもそうか。やつは、人間じゃなくて怪物なんだ。あいつのせいで
「済まなかった。今まで俺は甘えていた。こいつは……祓ってくれて構わない。でも、許すなら俺に祓わせてくれないか」
俺は魔導書を赤鼻徒に渡した。
「一応、俺と重紙の契約内容は『怪物を除霊しない代わりに本を俺に貸し出す』だ。何があっても俺は除霊しない」
俺と赤鼻徒は祠の中に進み、儀式に必要な石の前に立った。この石は紙と糸で周りを囲まれており、地獄の悪いオーブが盛れださないようにされている。
「では儀式を始める」
そして、今。
俺は地獄にいる。
「思い出せたか?」
閻魔が問いかけてくる。
「俺は何故からのを守ろうとしていた。その罰を受けます」
「そうか。では契約の代償兼罰はこうだ。お前の固有オーブの6割を差し出せ」
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