第4話

 俺のオーブは三途の川を通り抜けやがて地獄の扉を抜けた。

 灼熱の世界。熱い。他のオーブの泣き声や呻き声もする。ここが地獄だと直感で理解した。


 俺は……死んだのか。一度ここに来てしまえば何だか呆気ないし、未練もないな。まだ現世ではやらなきゃいけないことが……。

 それもなんだっけな。よく分からないや。死ぬと頭が回らなくなるから、肉体を捨ててオーブだけになってしまった俺も思考が回らないのか。


「よう。お前は自然死でも他殺でもないな」

 突如目の前から声がした。目の前には神と同レベルのオーブ濃度を持つ存在があった。この存在も直感で理解出来る。閻魔だ。


「何か契約するために来たのだろう」

 閻魔はそう言うと不思議な力を放ち、周辺の景色と我々の存在を一変させた。

 俺は生前の肉体を具現化させることができた。これが想像体か。

 目の前の閻魔も巨大な肉体を見にまとい、背後にある玉座に座った。


 圧倒的な存在だ。身が竦む。閻魔の想像隊とは言えど、目を合わせるとこちらは何も逆らえないんじゃないかと感じさせられる。


「俺は……何を……?」

 俺はそう言うと、閻魔はため息をついた。

「やっぱり、覚えてないか。死因を」

「死因……。やっぱり、明確な何かで俺は」

 ここでこうして色々頭を動かしているとだんだん記憶が戻ってきた。

 俺は『らの』という怪物を使役していて、今は大阪の某トンネルの幽霊を除霊しにきた。しかし、その霊は強力ゆえに閻魔の力を借りなければいけない。

 しかし、道頓堀でツーショを撮って、一条と合流した辺りまでの記憶で止まっており、どういう道筋でここまで来たかは分からない。とは言えど、ここで閻魔に協力の依頼をするために必要な記憶は揃った。


「で、おおよその内容とかは私も現世を覗いていたから分かるが、改めて申せ。」


 閻魔と契約の儀式。

 全国各地にある、獄門の祠へ行き、祠内部にある石に二礼し、自身の血液を少量指にとって石に付け一礼する。やがて、現世で閻魔がオーブを送って儀式者の首を掴んで来るため、自死することで、オーブを地獄の入口まで持ち帰ってくれる。


 今みたいに一時的に記憶を失うが、地獄で改めて願い事を話すと、代償と引き換えに願いを叶えてくれる。


「早く願いを言わんか」

「今回こそ、トンネルの幽霊を封印してください」

 俺は頭を下げた。前回もこうしてお願いしたのだが、訳あって霊を地獄に送らず、現地に封印するに留めた。その結果封印が解け、再び発生してしまった。


「よかろう。ただし……」

 閻魔はオーブを強く放出し、何やら覇気を放った。

「重紙灯、お前は今悪行をしているな」

「……」

「我、閻魔なり。悪なる者は裁きの対象だ」

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