第3話

『鏡の件 人為的な呪いの可能性あり。一旦解呪しましたが、追加で原因の呪術師を探しましょうか』


 らのの学校で鏡に関する怪奇現象が発生したらしく、解決させるため現地の鏡オーブの専門家に調査を依頼していた。

 俺は「他の被害者が出ていないか調べてケアをお願いします」と返信した。


「灯さん! こっちこっち!」

 道頓堀川の上を架ける橋の上から、巨大な『グリコ』の看板がある。

 俺は夜奈に呼ばれ着いていくと、グリコの看板を背景にツーショットを撮られた。

「やった! 撮ってみたかったんですよ!」


 こんな物の何がいいのだろうか……というのは俺には言えないな。俺の職の方が魅力も意義も理解されないものだし。

 とは言えど、旅行客らしき若い人たちも謎にグリコの看板を撮るように群がっている。


「インスタ、顔隠した方がいいですか?」

「?」

 夜奈はスマホ画面を見せてきた。SNSに投稿する前の画像編集画面のようだ。ネットリテラシーは意外とあるんだな。

「別に構わないけど、私の顔なんて隠した方が映えるんじゃないですか?」

「え? 灯さんは普通にかっこいいんじゃないですか? 今まで付き合ったのは何人くらい?」

「そんないないよ。中学の時は何回か告白されたけど」

 俺は1人の女性の顔を思い出した。

「告白されても振ったんですか?」

「いや、俺的には中学生以下の恋愛はノーカウントだから。あれはごっこ遊びだと思う」

「あ、さては。付き合ったけど何もデートとかもしないまま自然消滅した?」

「そうそう。そういうのは全部ノーカン」

「へえー。でもノーカウントされちゃった女の子可哀想だなー」


 そんなこんなで会話をしていたら、1人坊主男がこちらにやってきた。

 今回のもう1人の同業者、一条いちじょうだ。

「少し遅れました。すみません」

 一条はそう言った。

「どうも、初めまして。映嶋夜奈といいます。呼び方はどちらでも。よろしくお願いします」

 一条は前回の大阪の仕事は一緒ではなかったため、夜奈と一条は初見ということになる。とは言えど、数年前俺と初めて会った時は礼儀もクソもなかったが、今の夜奈は少し大人になったな。

「映嶋さんですね。私は一条と申します。よろしくお願いします」

 一条も頭を下げた。

 一条は僧侶で仏教を信じる身だ。

 日本は神仏習合、神道と仏教がこうして互いを弾圧しない非常に稀な国だ。だからこうして協力関係になれる。

 なぜなら八百万の神の信仰する神道にとって、仏という神的存在も受け入れられるからだと思われる。


 さて、我々は揃ったところで仕事開始だ。

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