トンネルの幽霊

第1話

 新大阪駅にて。


「えれぇ人がおるべえな」

 そう俺は漏らした。

 ごりごりの地元方言だが別に俺は普段からこの言葉遣いという訳ではない。

 まぁ田舎住みの俺からしたら、少しでも都会に来たらこういうのがお決まりなだけだ。


「さて」


 俺は新幹線から乗り換えて電車に乗らなくてはいけないが、少し早めに着いてしまったため昼食をとることにした。

 そう言えば、急遽書き残したあのメモはらのに伝わっただろうか。せめて俺に封印されている訳だ。文字オーブくらい認識できるようになってもらわなくては。


 突如、通知音がスマホから鳴った。

『了解』とスマホの上部に映し出されていた。タップしてパスワード「631764」を入力し、チャット画面を開く。

 チャットの相手は地元にいる同業者の「保城ほしろ」という炎オーブの専門家だ。家に出る前に私はチャットでこうお願いしていた。

『あの日の怪物○○の想像体を置いて関西まで行くので、万が一暴走したらあまり根っこにバレないように殺さず確保してほしい』

 あの日の怪物とはらのだ。そしてここで言う「根っこ」とは地元での業界用語でオーブを扱えない一般人を示す暗語である。公の場で「除霊」だとか専門用語を使うと不気味がられるために使うことが多い。


 俺は食事を済ませると外へ出た。


 俺がどうしてわざわざここまで来たのか。

 今日読んだオンライン新聞に載っていた記事のことで来た。


『原因不明の全身麻痺患者多発』

 今現在大阪で発生している事件だ。数年前にも同じ事件が発生し、その原因を封印し解決したのだが、この様子だと再び封印が解けたのだろう。俺はその封印をやりなおしに来たのだ。


 俺はタクシー乗り場の近くまできた。ここが待ち合わせ場所である。この仕事はいろいろ専門家がいないとうまくいかない。


「お待たせしました」

 後ろから声をかけられて振り向くと誰もいない。

 と思いきや少し視線を落とすと一人の女性がいた。彼女は移嶋うつじま夜奈よるな。150cmという低い身長をもつが俺とは同い年の27歳だ。


「お久しぶりです」

 俺はそう言うと、あらかじめ地元で買っておいたお土産の入った紙袋を渡す。この中にはラスクが入っている。

「あ、ありがとうございます」

 夜奈はそういい受け取った紙袋を腕にかけた。

 これは彼女のお気に入りのようで、毎回俺が関西まで出張して夜奈に会う際は用意している。


「さて、行きますか。グリコ」

 夜奈はそう言った。


 なぜこの事件のためにわざわざ遠くから来たのか。

 これは他の人に任せたくない理由がある。

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