3.5 勇者の印
声
私をいじめてたやつ。全員殺してやりたい。
私がいじめられてるのは、私に原因がある。そんなことをほざいた大人たちも殺そう。
あ、そうだ。せっかくだし、なんか沢山殺して大事件にして、私の悲鳴を全世界に訴えようかな。
「そんなこと出来っ子ないや。はは」
私は全身濡れた状態で1人夕方の廊下を歩いていた。
「そんなことしちゃいけないに決まってるもんね」
ああああああああ、こんな低偏差値の高校なんて来るんじゃなかった。
もっと勉強してマシな学校行けば良かった。
私はよく妄想をする。
いじめてきた人達を全員拘束して、一人一人部位を分解してみたいんだ。
でもそう言うのは、心の内側に留めておいている。やっちゃいけない事は理解してる。
でもそう言うのを理由にして、妄想を実行できない自分が嫌いでもある。
「はァ。一服しよ」
私は学校のトイレの個室に入り、筆箱から彫刻刀を出した。
左腕の袖をまくり、刃先で腕に一本の線を入れた。スっと綺麗な直線が腕に描かれた。その線は徐々に赤くなり、血を漏れさせる。
「ああ気持ちいい」
心のモヤモヤが溶けて消えていく。
「1日1本って決めてるしね」
私は彫刻刀をしまい帰ることにした。
だが、再びいじめ主犯たちの顔が思い浮かんだ。ワナワナと負の感情が湧いて出てきた。
それからは私はイライラに任せて左腕を切り続けた。これでスッキリすると決めたのに、涙がどうしても止まらない。
私は家に帰れば、テレビもゲームも禁止されている。勉強に必要ないからだ。スポーツは得意じゃない。吹奏楽部に入っているが足でまといだから、部活も楽しくない。好きな男はいじめてきた奴と付き合った。
私は腕の傷が親にバレたことがある。
「お前の体はお前のものだが、その前にお父さんとお母さんが作ったものだ。お前の人生は自由だが、自分を大切にしないのだけは辞めて欲しいってお父さんは思う。お父さんの意見はね」
じゃあ、私の人生って何なん? 我慢ばかりすることか?私はこんな生きがいのない人生で自殺しないために、腕で全部受け止めてやってきたんだよ。
私は親からカッターを没収された。それ以降、毎日爪で腕を引っ掻く日々だった。自分の顔面を殴ることもあった。でも美術の授業で彫刻刀が必要になってからは救われた。こうやって、自分なりの息抜きができるんだ。
とは言えど、そろそろやばいな。便器の中が真っ赤になっちゃった。
私はトイレを流し、トイレットペーパーで腕を押さえた。
我に返ると、少し反省してしまう。流石にこんなに血が出ちゃったら、トイレ汚しちゃう。なんかまだイライラするし右腕が空いてるけど、右利きだしやめとくか。
私は個室を出て、水道で左腕を流すことにした。めっちゃヒリヒリするのが気持ちいい。
「自分じゃなくて、アイツらを切ろうぜ」
そう、目の前の鏡から聞こえてきた。
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