第9話
うらのは私の押し殺した私の裏側の人格だ。
つまりもう1人の私。姿形が少し違えど、同じ世界に私が二人いてはならない。だから、私は除霊でも悪魔を倒すのでも何をしてでも、うらのは鏡の世界に戻すべきだ思う。
このまま放置しておくのは不吉な予感しかしない。
灯が本当に死んでいないのなら、早く灯に相談したい。
「なあ、顔も違うし誰にも迷惑かけないし、らのにももう関わらないから、この世界にいさせてくれないか」
うらのは言った。
「それは……。いいことなのか?」
「……顔のパーツも配置も、らのと私とでは違う。だから悪いことでは無い」
「え、そうなのか」
「少なくとも、私たちは一卵性双生児よりかは似ていないよ。遺伝子も実は別物なんだ」
さすがにそんなことはない。遺伝子が違っていたら、じゃあ本当にうらのの正体が分からなくなる。
「頼むよ。さっきらのに関わらないと言ったが、何か命令してくれればたまには協力するからさ」
あ、それは少し便利。
「灯と相談したい。それで決めていい?」
私は言った。だが
「それは、らの自身で決めて欲しい」
と言われた。
私は正直うらのは死んでもいいと思ってしまった。
うらのは人間だが、私は怪物だ。勝手が違うのだ。何でもうらのの言う通りにしてあげられる訳ではないのだ。でもそんなの、少し可哀想だとも思ってしまう。こうやって、私の裏人格が目の前に現れて説得されると、私としてもやりずらい。
どうしたらいいんだよ。
「らの、困ってるね」
「悪いかよ」
うらのはこちらを見て笑っていた。
「生きているものはみな平等に自由なんだよ」
うらのは言った。
「そうだけどさ……」
そうだけど、それも含めて人間と怪物とでは話が違うんだ。私は人社会に憧れてるけど怪物だから。
「怪物だとか正直関係ないっしょ。その時街をぶち壊したいって思ったなら、それは壊すべきなんだろうし、今別のことしたいならそれをすべきなんだよ、らの」
「私でもやりたいことはやっていいのか」
「うん、勿論。誰がそれを咎めるんだよ。正直私が表のらのの嫌いなところはそういうところなんだよ。怪物だからってさ」
うらのは少し怒っていた。
私は魔導書に封印されているように、うらのは私に封印されている。
どれほど封印が窮屈なものか私は理解している。
うらのがここまで表の世界に固執するのは、私の心の奥底の本音とかいうものが、外に出たいからだろう。私は本当は本音を外に出したい。口にしたい。
「私、本当は、この想像体で人間みたく生きたい……かも」
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