第7話

「さて、夕飯は少し早いけど寿司にしよう」


 時計には5時半を示していた。


「お前、それは誰が財布を出すんだよ」

「そりゃもちろん割り勘っしょ」

 うらのはポケットから財布を出した。

「鏡って便利だよね」

「私の所持金が倍になったってことか」

「そう」


 という事で私たちは歩いて、回転寿司へ向かっていた。

 うらのは私と性格は違えど、私の内部の人格であり、私が得た記憶は全て共有されている。それに加えて、物の好みも割と同じなことが多い。だから、意外と話は合う。


「んー、私は別に馬鹿な男でもいいけどね」

 でも男の趣味は少しズレていた。

「え、なんでよ。私はむしろ底辺高校入っちゃって、あんな奴らと関わってたら疲れるわ」

「でも退屈はしないじゃん。とは言えど正直私って頭良いしさ、あんな底辺校じゃなくて、もう少しいい所行けたと思うんだけど?」

 どうやら裏側の私は少し自信家のようだ。

「まあ、私は本来は人じゃないしな。しょうがない」

「それな。でも私もこの底辺校に来て、カコと出会えて良かったよ」

「あんまそう言うの、堂々と言うな」

 裏側の私、うらのは私の本音を全て知っている。

 普段表に言葉として発しずらい気持ちも、こいつはペラペラ話すから少し恥ずかしい。

「私はカコが話しかけてくれて、ボッチ回避できた訳じゃない? 安心したけどな」

 これも私の本音だ。


「あ、そうそう。表の私があまり気にしてなさそうだから聞きたいんだけどさ。月見ちゃんの件」


 ああ、あの呪われた写真の子か。

 なんか母親が宗教にハマってたやつ。その上、月見は怪奇現象なんかにはかかってなくて、精神疾患だった。


「覚えてるよ」

「あれさぁ、明らかにおばあちゃん殺されてるよね」

「……は?」


 他殺……? あれは病死じゃなかったのか


「おばあちゃんは病状が悪化して死んで、それを看取ったのは月見ちゃんだけ。何故病状の悪化を素人の子供が気付くことができたのか。または心電図がアラートを鳴らして病状の悪化を通知したんなら、流石の医者も急いで駆けつけるだろうしねー」

「……待て待て待て、それはお前……、月見が……」

 どうやらうらのの発言全てが私の本音という訳では無さそうだ。私は一切そんな考えはなかった。

「やっぱ、人の言葉って鵜呑みにしない方がいいよね。人は本音を隠して、表では嘘を付くんだから。素直に話してくれない」

 うらのは言った。

 いつも私によって本音をひた隠しにされた、うらのの言葉だ。少し重みを感じた。

 だとしてもだ。

「お前、子供が。しかも親から色々守って優しくしてくれた祖父を殺すなんて、月見になんの利益があるんだよ」


 回転寿司チェーン店が見えてきた。


「私は、月見ちゃんの精神疾患の名前は『強迫性障害』だと思うな」

 うらのはそう言うと店内へ入った。

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