第5話
『わんちゃん死ぬから、遺書を置いておく。もし俺が帰ってこなかったら、もう好きに生きていい』
その下に味噌汁のレシピが書かれていた。
正直なところ、私の96%の体を封印されてしまっては、暴走欲求もない。カコなんかと毎日話してる方が退屈しない。だから、とりあえず灯と直接話して状況を整理しないと私はどうすればいいのか分からない。
このように手紙で『好きに生きていい』って言われても、私は灯の命令を聞くことと、人の命を脅かさない事を条件に契約して、4%の封印を解かれているから、私は本能で契約を破る行為はできない。自由に生きることは出来ない。
私の本体が封印されている魔導書は灯が所持している。
つまりここで想像体を殺し、魔導書に戻って復活し直せば、灯の所へ行ける。
しかし、今自宅にいる想像体でできることを済ませなければならない。無闇に魔導書に戻ってもこの何も分からない状況を良くすることは出来ないかもしれない。
私はリビングにある1枚の護符を手に取って、ある儀式を行うことにした。この護符には「目」とだけ書かれている。
「明回様。私の本体に第三の目を」
そう念じ、ライターで護符を燃やした。
突如、想像体の右目、左目に次ぐ、第三の視界が広がった。
「うわ!!」
恐らく、第三の目は私の本体の魔導書にできた。私が見たのは、赤い肌に下駄を履き、右手に
くそ、ガチで分からない。
天狗以外に得れる情報としては、木造建築の中にいることだ。ここで怪物の力を全て発揮すれば、建物を壊しながら脱出可能だろう。でも灯はどうなっている。本当に死んでいるのか。
いや、絶対ない。多分天狗なんかに灯はやられない。先に除霊をしているはず。
スマホと魔導書を天狗に奪われて、灯は取り返すまで帰るに帰れない状況と見るのが妥当だろう。
私は体を力ませて、魔導書から少しずつ封印を漏れさせて、10%程の力を取り戻した。
猫のような髭が生え、その他も産毛のような体毛が全身を覆った。牙は尖り、爪も髪も長くなった。
爪切りを使って爪を鋭くなるように切った。ヘアゴムを取り洗面台へ行き、後ろに1本で髪を結んだ。
私は怪物なのか。それともこの想像体である限り人なのか。灯は私にとって何だ。敵なのか? 親なのか?
いやそんな事、生まれた時から決まってる。
「少なくとも
私は鏡の私に伝えた。
「違う。私は人だ」
そう前から聞こえてきた。
私は一瞬の出来事に目を大きく開いた。鏡に映るのは私じゃなく、さっき学校のトイレの鏡に映った女性だったのだ。
こういう時はどうすればいい。
最も私が安全なのは逃げることだ。しかし、この呪いを解決することはできない。
まずこの女の正体を探らなければ。
「お前は……あなたは誰ですか」
私は聞く。
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