第3話

 職員室に呼ばれ、学年主任に鏡を割ったのを私とカコのせいにされたが何とか弁明した。そして1時限目が始まる前に灯にこの状況をスマホで連絡して伝えた。


 灯はすぐに既読を付けたが、どうやら今日は県外で仕事があるらしく来れないそうだ。そこで灯はここら辺に住んでいる鏡オーブの専門家を依頼してくれた。

 私たちが授業を受けている間に解決してくれるらしい。ただそこで灯から1つだけ念を押された。

『重紙灯の娘と名乗るなよ』

と。深入りしないが大人の事情とかいうやつだろう。


 カコもカコで、あの能天気な性格のおかげか、あんな危険な思いをしたのに、特に精神が病んでいるなどはなかった。


「いやあ! あの時のらのちゃんカッコよすぎィ!」

 なんてことを言ってるだけだった。こいつは先天的というより、何か地獄のようなどん底を経験したような後天的なポジティブ思考なのではないだろうか。そう出ないと説明がつかないくらい楽観思考だ。


 と、いろいろあったが、いつもと変わらず授業を受け、カコと昼食をとっていた。

 灯の言う、鏡の専門家とやらはまだ学校に来ていないのか。それとも学校の警備員に止められて校舎に入れないのか。


「あ、らのちゃん来た来た」

 カコは急に小声&高音になった。カコが見ている先は歯机風馬の席だ。

 私もそちらに目をやると、風馬はこちらに歩いて来ていた。


「なあ、怪我大丈夫なん?」

 風馬が聞いてきた。

 私は自分が答えていいのか分からず、カコの顔を見た。

 カコは私と目が合うと即座に

「うん! らのちゃんが素早く動いてくれたからね!」

 と言った。心配されるのも面倒だから、右手の切り傷は敢えて教えてない。想像体作り直せば傷のない状態で復活できるし。

 カコはそのまま

「手洗ってくるー!」

 と立ち上がろうとした。

 まさか私と風馬を2人きりにするつもりか。そんな面倒臭いのは嫌だ。と思い私も腰をあげようとしたが、カコは私の頭をガシっと掴み杖代わりにして立ち上がったため、私はそのまま椅子に座り込むことになった。

 カコは逃げるように立ち去ったため、私はその場に残ることにした。


「重紙さん、手痛くないの」

「え」

 風馬は気づいていたのか。

「絆創膏くらい持っとけって」

 風馬はそう言うと絆創膏を出した。


 人間は少量の出血の怪我を負うと絆創膏を貼るらしいが、私は付けていなかった。右手の患部に力を込めて力んだら、すぐにカサブタになる。


「私は別にいいよ。すぐ治るし──」

「重紙さんって変だね。女子なんだから傷残ることやめなって」


 ……そうか。私は女子なのか。

 灯が私の裸を直視出来ないといって立ち去ってしまうのも、この想像体は人間の女性の形状をしているからか。


「親切だね」

 私は絆創膏を受け取った

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