第2話
朝のホームルームでうちのクラスの担任の御堂はいつものように事務連絡をしていた。
いつもはどうでもいい情報を話しているが、今日は不穏なニュースからだった。
「3年生の男子生徒が昨日の夜に帰宅してないそうだ。連絡も繋がらないらしい。まあまだ事件とは考えられてないけど、今晩も連絡が付かなかったりしたら、警察に相談して捜索するらしい」
との事だ。
死亡事故の次は失踪か……。などと思ったが、この学校では家に帰らずに外で夜を過ごすような生徒が多いらしい。だから御堂も周りの生徒もそこまで気にしていないようだ。
HRが終わり、私はカコに誘われトイレに来た。この想像体は特に排泄物を作らないため、トイレには基本用事がない。だが個室である程度待った後トイレを流し、手洗い場でカコと合流する。
「らのちゃんって手洗うの長くない?」
そうカコは言ってきた。私が石鹸で手を洗っている間にカコはもうハンカチで手を拭いている。
これは私を作った宗教団体の仕業だろうな。多分私を作ったのは日本の神道だろう。トイレなど不浄な場所から出る時は身を清めたくなる。
だとしても本心ではどうなのだろう。
実は潔癖症なのだろうか。それとも儀式だからなのか。いわゆる、人としての性格によるものなのか、怪物として持っている習性なのか。
私はふと鏡を見た。鏡には自分とは別の、同い年くらいの女性が立っていた。
「……は?!」
私にしては大きな声を出して鏡を2度見した。来ている制服も同じ。ただ顔付きが別なのだ。
そして突如鏡が波打つ水面のようにゆらゆらと振動しだした。
これ、もしかして……。
そう私は霊的な勘が働き、咄嗟にカコの腕を引っ張り、目の前の鏡から遠ざけた。その瞬間に私たちの目の前にあった鏡から手が飛び出してきた。
この鏡は呪われている。
「いッ!」
この手の爪に引っかかれたのか、私の右手に切り傷が出来ていた。しかしカコを見てみると特に怪我はないようだ。
しかしこの手の持ち主は誰だ。さっき映っていた女か。それともまた別の誰かか。または悪魔か。揺れる鏡面では、手の持ち主の顔も歪み、見ることはできない。だが大方先程の女だろう。
「カコ! 行こう!」
私はカコの腕を引っ張り廊下に出ようとした。
足を踏み出した瞬間、鏡は大きな音を立てて大破した。呪いの力に鏡が耐えきれなくて壊れたのだろうか。
廊下には鏡の割れる音に気になってきた人が集まっていた。
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