3 反対側の私 #鏡編
第1話
「結局、どこからが詐欺師なのかわからないよな」
灯は長浜志人との約束通りに志人の妻、杏花に嘘をつきこの件は解決した。
灯はこのオカルト現象を扱うこの職業を「詐欺」とほとんど変わらないものだと割り切っている。だからこそ、依頼人を騙すことになってもそこまで躊躇しないし、でも解決できるオカルト現象はプロとして解決させる。
灯はこの件に関して気が滅入っているようだが、普段の灯らしくない。私は普段の灯のやり方に納得していたから、この灯の落ち込み様は正直気色が悪いと思った。
「らの、そろそろ寝るか」
灯はそういい、魔導書を取り出した。
私はいつも通り和室へ行き、灯によって封印され、私は本の中で眠った。
……
私は翌朝、灯に4%だけ封印を解かれることで、人型の想像体を現世に召喚した。何度か説明しているが、私の本体は魔導書に入っている。
床には下着と制服とヘアピンが置かれている。灯が私を封印から解く前に毎回こうして用意してくれている。
灯は私の裸を直視したくないようで、すぐに部屋から去っていった。
服を全て着、リビングへ行く。
私は特に栄養がいる訳ではないが、味が嫌いではないため、灯と一緒に朝食を取った。
重紙家は朝食は米と味噌汁に日替わりで主菜が出る。
灯はテレビとラジオを両方付け、電子タブレット端末で新聞を読んでいる。
灯はこの『彩山新聞社』の株主であり、社長とも深い関わりがある。文字や紙を用いたオーブの実験の紙類などの資源はこの会社から株主優待で得ている。元々は灯自身も彩山新聞で勤務しながらオカルト相談的な仕事もしていたようだ。実際、ここら辺の地域では神主や住職、神職以外に、会社勤務する人は珍しくない。
ラジオとテレビの音が同時になりうるさいが、内容は頭に入ってくる。灯はそれに加えて新聞も読んでいるのだ。テレビでは長浜夫妻の息子、
『新人は体を強く打ち……』だなんてニュースでは言われているが、灯曰くこれは原型を留めない程の傷だそうだ。新人は猫に荒らされたぬいぐるみのように、原型の面影すら残さず弾けたのだろう。母の杏花が犬のぬいぐるみを新人だと勘違いしてしまうくらいに。
ところで私は灯の味噌汁が好きだ。この風味とかが美味しい。
「灯、これってどう作るん」
私は味噌汁を持ち上げて言った。
「え、いや。普通に出汁と味噌と、それにネギ、豆腐……。今度教えてやるよ」
……いやいやいや、それはいい。面倒だ。
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