第6話
茶封筒には30万円と手紙が入っていた。
最初灯が読んだ後、私には読ませてくれなかった。しかし、灯がトイレで手紙から離れている瞬間に目を通した。
私は人ではなく怪物であるため、集中して読めば2秒程で手紙の内容は把握できる。
怪物の力の4%だけ封印を解かれたと言えど、踏ん張ればゆっくりと力を漏れださせることができ、5%で超人になることができるのだ。つまりこれを長時間続ければいつか100%になれるわけだ。まあやりすぎると灯にバレるが。
私は普段の想像だとショートヘアなのだが、封印を解かれている割合を上げていくと髪や爪が伸びるためバレるのである。今の5%の想像体も、よく直視してみると髪の毛が伸びているのが分かるが、まぁどうせバレないだろう。
さておき手紙にはこう書かれていた。
『私は息子が亡くなっていることは知っています。事故で亡くなっていました。
あの日私は仕事に出ていたのでその場にいませんでしたが、息子が自転車の運転の練習をするということで、息子がカゴにお気に入りの犬のぬいぐるみを乗せ、妻が付き添う形で街中を通っていたんだと思います。
そして、次に現場にいた人の証言なのですが、息子と妻が横断歩道を渡る時にスマホ運転をしていた車に轢かれたらしいです。妻は大きくぶっ飛ばされましたが怪我は軽症でした。しかし息子は体を強く打ち、その場で亡くなりました。
妻は今も現実を受け入れていないと思います。ぬいぐるみと息子が入れ替わったんだだとか呪いだとか言っています。でもぬいぐるみに微笑みながら話す姿を見た時、私はこのままの方がいいんじゃないかって思ってしまいました。私は妻と話を合わせて一緒にぬいぐるみに話しかけたり出かけたりしています。
私は事故の後、妻の実家に1人で行き事情を話しました。そこで私はお義父様と、妻の笑顔を守ると約束しました。私は今でも妻の笑っている顔が見たいんです。
なので次回私たちがまた来る時にお願いしたいのですが、今妻には新たな子を授かっています。なので、犬のぬいぐるみに封印された息子は、また妻のお腹に戻り、そして再び私たちのところに産まれてくるんだと伝えてください。そうすれば妻も納得してくれます。どうかよろしくお願いします。』
今回も怪奇現象じゃないんじゃ私の出番がないじゃないか。
トイレの前を通ると灯のすすり泣く声が聞こえた。人って他人のことで泣くんだよな、おかしなことに。
私には涙の意味が理解できなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます