第5話
太陽は生命に光と熱と力を与えている。そんな教えをする宗教団体がいる。モドス教だ。
死後の世界が太陽だというのはモドス教の考えであり、母親の口からそれが出たことに恐怖を感じたそうだ。
モドス教は危険かつ倫理に反しており、しかも学校や病院を作ったり、政府や警察にも教徒がいたりと、かなり規模が大きな団体だ。だから逃げることにした。
「月見ちゃんにはちゃんと病院行って欲しいけどな」
灯はハンドルを握りながら言った。
信号が赤になり、車は止まった。
唯名家を出てから5分くらいすると、少しは落ち着いてきた。ちょっとした雑談もできるくらい。
「そうだね。……私、安らぎの儀、失敗したんかな」
「あれは成功だよ。でも、やっちゃダメだったかもしれない」
灯はそう言った。
「そうなの。奇声をあげたのが月見本人なら──」
「月見ちゃんはおばあちゃんの死のストレスから目を背けていた。それが月見ちゃんの精神面の自衛だったんだ。それをらのが安らぎの儀で無理やり直視させたってことだ。多分おばあちゃんの写真を見ればちゃんと顔を見れたと思う」
灯はそれ以上語らなかった。別に私には無縁だが、罪悪感が芽生えないように気遣ってくれたのだろう。
「月見ちゃんもあんな母親に育てられちゃ、そうなるよ」
「それって月見さんの症状が親のせいってことなの」
「あの精神疾患は家庭環境だろうね、どうせ」
本人も言っていたが、両親は月見に対して厳しかったそうな。厳しい環境だと人はメンタル歪んでしまうのか。祖母の死を真っ直ぐ受け入れられないくらいに。
「まあ、今回は依頼を解決どころか悪化させちまったけど、切り替えていくしかないか!」
灯はそう言った。
信号が青を示した。
……私も灯も今後知ることはないだろう。祖母の死因が他殺であることを。
*
家へ帰り、テレビを付けると各局である事故のニュースが流れていた。
どうやら私たちの住んでいる家のすぐ近くで死亡事故が起きていたようだ。
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