第38話 14日目(金) 十色市旅行編⑦
旅館を出た俺たちはバスに乗って十色砂丘にやって来ていた。
「ここが十色砂丘か~! 広い! 凄い! けど、暑すぎる!」
「そうね。まさかここまで暑いとは思ってなかったわ」
「あの丘を登るつもりだったのですが、やめておきますか?」
「登りたくない~。かき氷食べたい~」
十色砂丘の近くにかき氷屋があった。
後で食べに行く予定になっていた。
「これだけ暑いと登るのは危険かもしれないわね。また、夏じゃない時に来て登ることにする?」
「そうだな」
「そうですね。またみんなで来たらいいですもんね」
「賛成~! じゃあ、かき氷食べに行こう~!」
「そうね。行きましょうか」
「あ、その前に写真だけ撮りませんか?」
「たしかに! 忘れるところだった!」
十色砂丘で記念撮影をする人が多いらしく、ご丁寧にスマホを置いて撮影ができる台が置いてあった。
有紀がその台にスマホを置いた。
「並んでください。タイマーをセットしますよ」
「は~い!」
「この辺でいい?」
「大丈夫そうです」
俺たちは有紀が入れるスペースを開けて並んだ。
「それではタイマーを押しますね。十秒でシャッターが切れるのでそれに合わせてポーズしてください」
「了解よ」
「は~い!」
有紀がタイマーをセットしてこちらに向かって走って来た。
この砂で有紀は最後の最後でこけそうになった。
そこを俺がしっかりと受け止め有紀はこけずに済んだ。
「大丈夫か?」
「はい。ありがとうございます。櫂君」
「もう、何やってるの! 早くしないと十秒経っちゃうよ!」
「あ、はい。今行きます!」
俺と有紀はなんとかギリギリ間に合い、無事に四人で写真に写ることができた。
記念撮影を終えた俺たちは近くのかき氷屋に向かった。
名前は「まるぼし氷」。
店内はオシャレで、こじんまりとしていた。
席は全部で八席。
すでに数人が座っていてかき氷を食べていた。
店員さんに案内され俺たちは四人席に座った。
「この前行ったかき氷屋とは違うね~」
「そりゃあ、そうでしょ」
「え~。何にしよう~」
「どれも美味しそうで迷ってしまいますね」
「ね~」
珍しいかき氷も何種類かあって、例に漏れず俺も迷っていたが、少しだけ悩んですぐにどのかき氷にするか決めた。
定番のメロン、いちご、マンゴー、宇治抹茶、この時期ならではの桃、このお店限定のプリン、半分ずつにも出来るみたいで、どれも美味しそうだ。
「櫂君決まりましたか?」
「一応」
「え、早くない?」
「たしかに珍しいわね。もう決まったの?」
「まぁな」
「どれにするんですか?」
「桃のかき氷」
「プリンじゃないんですね」
「プリンは誰か頼むだろ?」
「は~い! 私がプリン頼む!」
「ほら、だから俺は他のしようかなって」
「いつもの櫂ならもっと悩んでるはずなのにどうしたの? 即決なんて珍しいね」
「いや、なんかいつもみんなを待たせてるから早く決めようと思ってな」
俺がさんざん悩んで三人の時間を無駄にさせているのではないかと最近思うようになった。
だから、今日はあまり悩まずに決めようと思って決めた。
「別にそんなこと気にしないのに。悩んでる時の櫂って可愛いからむしろ私的にはご褒美なんだけど」
「ですね。私も真剣に悩んでいる時の櫂君のお顔好きです。ずっと眺めてしまいます」
「そうなのか?」
「はい。だから、その気持ちは嬉しいですけど、しっかりと悩んでくれてもいいのですよ?」
そう言ってくれるのなら、これからも思う存分悩んでから決めようと思った。
それから俺たちはかき氷を堪能し、ここのお店の隣にあったプリン専門店でプリンを全種類買って旅館に戻った。
☆☆☆
十色砂丘から旅館に戻って来た俺たちは汗を流すために温泉に向かっていた。
「ラッキ~! 貸し切り温泉空いてるよ!」
「本当ですね」
「空いてるなら入りましょうか」
「入ろう~!」
昨日は空いていなかった貸し切り温泉が運よく空いていたので俺たちは貸し切り温泉に入ることになった。
「こうやって四人でお風呂に入るのって初めてじゃない?」
「そうね。櫂と二人っきりならあるけど、櫂の家のお風呂じゃ四人一緒には入れないものね」
「四人一緒に入れるお風呂がある方が珍しいと思うけどな」
「私の家は四人一緒でも入れますよ?」
「マジ?」
「確かに有紀の家のお風呂は四人くらい余裕ね。ここより大きいものね」
「そんなに広いのか?」
「広いわね。泳げるわよ」
「マジかよ」
「次に実家に行った時は一緒にお風呂に入りましょうね。櫂君♡」
「そうだな」
そんな会話をしながら俺たちは服を脱ぎ始めた。
当然、誰も体にタオルを巻くなんてことをせずに全裸になった。
「それじゃあ、入ろう!」
「そうだな」
彩海が扉を開けて俺たちは中に入った。
「お~。広い~」
「でも、有紀の家のお風呂よりは狭いわね」
「そうですね」
俺からしたら十分に広いと思うのだが、有紀の実家のお風呂はここより広いらしい。
一体どれくらいの広さなのか。
なんて考えていたら両腕と背中に柔らかな感触が伝った。
見てみると右腕に彩海、左腕に有紀、背中にアリスが抱き着いていた。
「私たちが体洗ってあげる♡」
「じゃあ、俺も三人の体を洗ってやるよ」
「洗って~♡」
「洗ってくれるのね♡」
「よろしくお願いしますね♡」
俺は三人に体を洗ってもらい、三人の体を順番に洗った。
そして、四人で一緒に温泉に浸かった。
右に彩海、左に有紀、前にアリスがいる。
「お昼から温泉に入れるなんて最高~」
「ですね。気持ちいです」
「どう? 私たち三人と一緒に入る温泉は?」
「最高に決まってるだろ?」
言うまでもなく最高だ。
幸せ過ぎる。
「こんなに幸せでいいのかな。俺」
「いいに決まってじゃないですか♡」
有紀が俺の腕に抱き着いて肩に頭を乗せてきた。
「そうね♡ 私も櫂と一緒にいて幸せだし、櫂も幸せって思ってくれてるなら嬉しいわ♡」
アリスが俺のことを見上げて言った。
「私も幸せ~♡ だって、毎日ゲームに付き合ってくれるんだもん♡」
彩海まで俺の腕に抱き着いて肩に頭を乗せてきた。
本当に幸せだ。
幸せで胸が破裂しそうなくらいだ。
「これからもよろしくな」
「よろしく~♡」
「言われなくてもそのつもりだから♡」
「そうですね。これから先も櫂君には幸せでいてもらいますから♡ 覚悟しておいてくださいね?」
「俺も三人のことを幸せにできるように頑張るよ」
三人のことを愛して、三人のことを幸せにする。
俺にできることはそれだけだから。
それから俺たちは体が真っ赤になるまで温泉に浸かっていた。
☆☆☆
残り三話になります
最後までお楽しみください😁
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