第35話 13日目(木) 十色市旅行編④

 海を後にした俺たちは十色市を見て回ることにした。

 旅館のチェックイン時間が十六時からで、今はまだ十五時なのでチェックインをすることがまだ出来ないからだ。

 それもアリスの予定にはちゃんと組み込まれていたようでこの散策も決まっていたことらしい。

 アリスには行きたいお店があるみたいで俺たちはそこに向かっていた。


「大福を買いに行くんだっけ?」

「そうよ。気になる大福があったからそれを買いに行くつもりよ」

「大福大好き~!」

「私も大好きです」

「大福美味しいよな。俺も好きだ」

「だから行こうと思ったのよ。しかもそこの金賞を取ったいちご大福が美味しいらしいんだけど、残念ながら今の時期は販売してないみたい。代わりにマスカットの大福が今は売られてるみたいで、それも美味しいらしいからそれを買うつもりよ」

「マスカットの大福か。美味しいそうだな」

「それから他にも何店舗か美味しそうな食べ物のお店を調べてあるからそこにも行きましょう」

「行く~!」


 アリスが調べてくれていたお店に到着した。

 名前は「甘糖屋あまとうや」。

 いかにも甘い物を売っていそうなお店の名前だった。

 お店の入口の隣にポスターが貼ってあり、そこにはマスカット大福の写真が載っていた。

 そのポスターを見ただけで食べたくなった。

 俺たちはお店の中に入った。


「いらっしゃいませ~」

 出迎えてくれたのはしっかりとした好青年といった印象の若い男の人だった。


「マスカット大福ってありますか?」

「ございますよ」

「じゃあ、マスカット大福四つと……みんなは何か食べたいのある?」

 アリスにそう言われ俺たちはショーケースを見た。

 ショーケースにはいろんな種類の大福の他に和菓子が売っていた。


「素敵な和菓子ですね。このひまわりという和菓子を一つください」

「かしこまりました」

「彩海と櫂は?」

「う~ん。私は栗きんとん!」

「栗きんとんですね」

「じゃあ、俺はちょこ餅を一つ」

「ちょこ餅ですね」

「以上でお願いします」

「ありがとうございます。すべてご一緒でよろしいですか?」

「はい」


 店員さんが注文した商品を袋に入れてくれた。

「お買い上げありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

 丁寧なお辞儀と爽やかな笑顔に見送られ、俺たちはお店を後にした。

 

☆☆☆


「甘糖屋」を後にした俺たちが次に向かったのは「甘糖屋」から徒歩五分のところにあった。

お店の名前は「君のスイーツ」というらしい。

かなりの人気店なのか行列ができていた。


「結構人が並んでるね~」

「そうね。最近できたばかりで話題らしいから、それで並んでるのかもね」

「そうなんですね。ここは何のお店なんですか?」

「ここはソフトクリームとかパフェのお店ね」

「ソフトクリームめっちゃ食べたい!」

「暑いからみんなソフトクリーム買いに来てるのかもな」

「かもしれませんね」 

 ほとんどの人がソフトクリームを頼むからなのか、俺たちの順番は意外とすぐにやって来た。


「いらっしゃいませ~。ご注文はお決まりでしょうか?」

「どれにする?」

 お店の外に看板が立っていて、そこにメニューが書いてあった。

 商品の名前と一緒に写真も載っている。


「え~。どれも美味しそうで迷う~」

「本当ですね。どれにしましょう」

「せっかくだから全員が違うのにしてみんなでシェアしましょ」

「賛成~♪」


 メニューに載っていたソフトクリームは全部で六種類。

 桃、メロン、すいか、紫芋モンブラン、栗モンブラン、宇治抹茶だ。

 どれも美味しそうで迷う。

 後ろに他のお客が並んでいなければ悩みたいところだが、この行列と暑さだ。

 いつもみたいに何十分も迷っていては申し訳なくなってくる。


「俺のは誰か決めてくれ」

「じゃあ、櫂は紫芋モンブランね!」

「あぁ」

「で、私が桃~!」

「じゃあ、私は宇治抹茶にしようかしら」

「では、私は気になるのでスイカにしてみます」


 決めた四種類のソフトクリームを店員さんに伝えた。

 お店は店内でも食べられるようになっているみたいだがテイクアウトにした。 

 カップのソフトクリームなので食べ歩き可能だ。

 カップなので、この暑さで溶けても手に垂れる心配はなさそうだ。

 ソフトクリームは五分もしないうちに出来上がった。

 俺たちはソフトクリームを受け取って次の目的地に向かって歩き始めた。


「このソフトクリームめっちゃ美味しいよ! 桃も瑞々しくて甘い!」

「スイカも美味しいですよ。スイカも瑞々しくて甘いです。たしか十色市はスイカが名産だったはずです」 

「へぇ~。そうなんだ~。一口ちょうだい~!」

「いいですよ」 


 彩海と有紀はお互いのソフトクリームをシェアし合った。

「私たちもシェアしましょ」

「そうだな」


 俺もアリスとソフトクリームをシェアした。

 もちろんその後、彩海と有紀ともソフトクリームをシェアした。


☆☆☆


 ソフトクリームを食べながら次に向かったお店はコッペパン専門店だった。

 ここもアリスが事前に調べたお店らしい。

 名前は「コッペン」。

 いかにもコッペパンを売っていそうな名前だった。


「コッペパン専門店なんてあるんだな」

「私たちが住んでいるところにもあるわよ」

「そうなのか?」

「えぇ、向こうに帰ったら一緒に行きましょう」

「そうだな」


 お店の外にメニュー表が貼ってある看板が置いてあったので俺たちは何を買うか決めてから入ることにした。


「結構種類があるんだな」

「そうね」


 メニューはおかずとおやつで分かれていた。

 おかずの方は唐揚げや、たまごサラダや、エビかつなどがあった。

 おやつの方はあんこホイップや、カスタードクリームなどがあった。


「おかずの方を買ったら夜ご飯が食べれなくなりそうだよな」

「そうですね。せっかく旅館での美味しいご飯が待っているのですから、おかずの方は買わない方がいいかもしれませんね」

「たしかに~。私は決めたよ~。ピーナッツクリ―ム&ホイップクリームにする~」

「早いな。俺はどれにしようかな」


 このお店は行列ができていないのでゆっくり考えることが出来そうだ。

「私は黒蜜きなこ&ホイップクリームにしようかしら。有紀。私と半分こにしない?」

「はい。一個も食べれないと思っていたので、そうさせてもらいます」

「ということは後は俺だけか」

「ゆっくり考えていいわよ。まだ、ソフトクリームが残ってるし」


 アリスがそう言ったので俺はソフトクリームを食べながらゆっくりと選ぶことにした。

 三人もソフトクリームを食べながら待っていた。


「よし! 決めた!」

「今回は意外と早かったわね」

「暑い中、三人のことを待たせられないからな」

「そう。じゃあ、中に入りましょうか」


 俺たちはお店の中に入った。

 そして、選んだコッペパンを店員さんに伝えた。

 俺はクッキー&バニラクリームのコッペパンにした。


☆☆☆

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