第26話 11日目(火)① ゲームセンター編(UFOキャッチャー、レーシングゲーム)
ゲームセンター開店五分前。
俺たちはゲームセンターの前に並んでいた。
俺たち以外の人は今のところいない。
「暑すぎる! 最近マジで暑すぎない!?」
「暑いですね」
「暑いわね」
「早くオープンしてよ~!」
「後三分の辛抱だな」
「仕方ない。ドリクエのフィギュアのために我慢するか~」
我慢すること三分。
ゲームセンターがオープンして、俺たちは中に入った。
「涼しい~」
「生き返りますね」
店内は冷房がガンガンに効いていた。
「そんなことはいいからさっさとドリクエのフィギュアのところに向かうわよ」
「そうだね! 行こう!」
俺たちはドリクエのフィギュアが置かれているUFOキャッチャーのところに向かった。
「あった! よかった~。ちゃんと入荷されてる!」
UFOキャッチャーの台にドリクエのフィギュアがずらりと並んでいた。
開店後すぐなので当り前だが、たくさんあった。
「よ~し! それじゃあ、全種類取っちゃいますか~」
「お一人様一つまでみたいなので四人で来てよかったですね」
有紀がUFOキャッチャーに貼られていた紙を見て言った。
「前回はこんなの張ってなかったですよね?」
「そうだな。それだけドリクエが人気になったってことだな」
人気消商品の台にはこの紙が貼られている。
むしろ前回がなかったのが不思議なくらいだ。
「二台あるから手分けして取る?」
「そうね。そうしましょう」
俺と有紀、彩海とアリスペアに分かれてフィギュアを取ることになった。
「それじゃあ、やるか」
「私はUFOキャッチャー苦手なので櫂君にお任せします」
「了解」
フィギュアは二本の突っ張り棒の上に乗っている。
その突っ張り棒の間に落すことができれば景品獲得となる。
この手のタイプは取り方があって、俺はその取り方を知っている。
その取り方をすれば数回で取ることができるのだが、一回でもミスをすると取ることがほぼ不可能になってしまう。
そうなってしまった時はいさぎよく店員さんを呼ぶことにしている。
俺が取るとなると有紀が何もやることがなくなってしまうので、有紀にお金を入れてもらうことにした。
「それでは入れますね」
「あぁ」
有紀が百円玉を入れてゲームがスタートした。
取り方の手順に沿って一手目を行った。
狙い通りに箱がズレてくれた。
「いい感じにズレたな」
「取れそうですか?」
「もちろん」
「では、次入れますね」
俺が頷くと有紀は百円を台に入れた。
☆☆☆
UFOキャッチャーをすること十分。
俺たちは目的を達成した。
「無事に四種類取れたね!」
「そうね。案外時間かからなかったわね」
「ですね。十分しか経っていませんよ。さすがですね」
「てことは、一時間五十分くらいは遊べるってことだね!」
「そうね」
「じゃあ、三本勝負やっちゃう?」
「そうだな。先に三本勝負の方をやるか」
「そうね。途中で時間が来て、中途半端に終わるのは嫌だから先に三本勝負をやりましょうか」
「ゲームは前回と同じですか?」
「でいいんじゃないかな~。どう思う?」
「俺はそれでいいと思う」
「私もそれで構わないわ。そっちの方がリベンジ感あっていいし」
「そうですね。私もそれで構いません」
「じゃあ、決まりだね!」
「てことは、まずはレーシングゲームか」
「だね! 移動しよう~」
そういうわけで俺たちはレーシングゲームが出来る場所に移動した。
レーシングゲームは四人で対戦をすることが出来る。
俺たちはそれぞれの台に乗って、お金を入れた。
そして、店内対戦を選択した。
「車はみんな同じやつね!」
彩海の言葉通り俺たちは四人とも同じ車を選択した。
各車体にはスピードや曲がりやすさや重さと、どれを選ぶかで戦略が変わってくるが、俺たちの勝負ではそれが関係なくなる。
完全なる技術勝負。
どれだけコーナーギリギリを攻められるか、ブレーキのタイミング、ドリフト、勝負の分け目は各自の技術次第となる。
前回の勝負では俺が圧勝した。
「みんな準備はいい~?」
「あぁ」
「OKよ」
「大丈夫です」
「それじゃあ、始めるよ!」
四人で同時にスタートボタンを押してゲームがスタートした。
カウントダウンが始まる。
ゲーセンのレーシングゲームと携帯用ゲームのレーシングゲームの違いは実際に自分が運転をするということだ。
指でボタンを押せば車が進むのではなく、足でちゃんとアクセルを踏まなければならない。
俺は何度もやっていたから操作方法に慣れていて前回勝つことができた。
しかし、今回はどうなるか分からない。
三人はゲーマーだ。
あれから練習をしている気配はなかったと思うが、一度やれば操作方法を理解するくらいには三人はゲームセンスを持っている。
だから、今回も俺が勝てるという保証はどこにもない。
それでも勝つつもりではいるけど。
カウントがゼロになり、俺たちは走り始めた。
このレーシングゲームにアイテムはない。
純粋に一番先にコースを三周した人が勝者となる。
「私が練習をしてないと思ったら大間違いだからね! ちゃんと練習してるんだから! 前回、櫂に負けたのめっちゃ悔しかったからね!」
「彩海だけが練習してると思ったらそれこそ大間違いよ。私だって練習してるんだから」
「お二人も練習をされたんですね。私もこの日のために練習をしましたから負けませんよ?」
どうやら三人ともしっかりと練習をしていたらしい。
その成果が走りに出ていた。
前回に比べて段違いに上手になっている。
さすがゲーマーで負けず嫌いな三人だ。
「櫂~。私たちを前回の私たちと同じだと思ってたら痛い目見るよ~」
「どうやらそのようだな」
一瞬も油断できない勝負になりそうだ。
俺は今一度気合を入れ直した。
誰もミスをしない、一度のミスが勝敗を分けるゲームが始まった。
一周目は誰もミスをすることなく順位は拮抗していた。
俺が一位、彩海が二位、アリスが三位、有紀が四位。
その差はほとんどない。
誰かが一回でもミスをすれば順位は瞬く間に変動するだろう。
「さすがに櫂はミスしないか~」
「まぁな」
「コーナリングも完璧すぎね」
「まだまだ練習不足でしたか」
「悔しい~! 次は絶対に勝つからね!」
結果、レーシングゲームは僅差で俺の勝ちとなった。
(ふぅ、危なかった)
内心ものすごくヒヤヒヤしていた。
まさか三人が練習していると思っていなかったし、やっぱり三人ともゲームセンスが抜群だ。
次に対戦をする時までに俺もちゃんと練習をしておかないと負けるかもしれないと思った。
それくらい良い勝負だった。
☆☆☆
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