第25話 10日目(月) アリスは甘えん坊
「ただいま」
午前十時。
アリスが帰って来た。
「アリスおかえり~」
「アリスちゃんおかえりなさい」
「おかえり」
「やっぱり櫂の家が落ち着くわ~」
そう言いながらこちらに向かって歩いてきたアリスは俺に抱き着いてきた。
「はぁ~。櫂の匂いも落ち着く~」
抱き着いてきたアリスは俺の胸に顔を埋めて匂いを俺の嗅いでいた。
「なぁ、なんか最近のアリスは甘えん坊じゃないか?」
「そんなことないわよ。もともと私はこんな感じだから」
「て言ってるけど、二人はどう思う?」
俺は彩海と有紀に聞いた。
「アリスはもともと甘えん坊で寂しがり屋だよ~」
「そうですね。私たちからしたらこれが普通です」
「そうなのか?」
「そうそう! 櫂と出会う前までは私と有紀によく抱き着いてきてたし。私たちからしたら見慣れた光景だね!」
「ですね。でも、まさかアリスちゃんがここまで櫂君に心を開くとは思っていませんでしたけどね」
「それね! 完全に櫂に心を奪われちゃってるよね!」
「何? 悪い? 櫂のこと好きなんだからいいでしょ」
「別にいいよ〜。私も櫂のこと好きだし」
「そうですね。私も櫂君のこと好きですから」
「けど、独り占めはダメだからね! 櫂はみんなのものだから!」
「分かってるわよ。でも、少しくらいいいでしょ。昨日一日会えなかったんだから」
そう言ってアリスは俺にさらに密着してきた。
出会った頃からは想像できないほど甘えん坊だ。
甘えられる分にはいいのだが、こうも素直に甘えられると甘やかしたくなってしまう。
だから、俺はアリスの頭を優しく撫でた。
相変わらず、サラサラで綺麗な色の金髪だ。
「櫂に頭撫でられるの幸せ」
「そうなのか?」
「うん!」
アリスは満面の笑みを浮かべて俺のことを上目遣いで見た。
甘えてくるアリスはいつもの何倍にも増して可愛い。
可愛すぎて反則だ。
「ずるい! 私も櫂に頭撫でられたい!」
「私もです! 櫂君に頭を撫でられたいです!」
「ダメ〜。今は私が撫でられてるんだから」
「独り占めはダメって言ったじゃん!」
「そうですよ」
「俺は逃げたりしないから順番な」
その後、三人の頭を順番に一時間くらい撫で続けた。
☆☆☆
十二時になり、俺たちはお昼ご飯を食べていた。
「いよいよ明日だね。ドリクエのフィギュアがUFOキャッチャーに入荷されるの」
「そうね」
「そうですね」
「そうだな」
明日、ドリクエの新作フィギュアがUFOキャッチャーに入荷される。
その情報が公開された日から入荷されるのを今か今かと俺たちは待っていた。
「もちろん、朝から行くよね?」
「当たり前じゃない。私はお昼からボイトレだから、それまでに絶対に全種類取るつもりよ」
「だよね! 取ったらさ、櫂のマンションに飾っていいよね?」
「いいぞ。今まで俺が取ったフィギュアも並んでるしな」
「あの部屋マジで神部屋だよね!」
「そうね。初めて見た時、感動したわ」
「ですね。私も感動しました。櫂君のあの部屋を見て私もグッズを集めたいって思うようになりましたから」
今は使っていない一人暮らしをしていたマンションの一室(今は全室)がドリクエのフィギュアを置くためのコレクションルームとなっていた。
「そうね。ドリクエのグッズは全て揃えるわ」
「そうですね。ドリクエは私たちを繋いでくれた大事なゲームですからね。全部揃えましょう」
「全部は流石に無理じゃないか?」
「新商品が発売するたびに買えば大丈夫でしょ」
「今はまだそんなに発売されてないからいいけど、これからもっと人気になればいろいろ出るだろ。グッズを全部揃えるのは絶対に無理だって」
俺も今までに出たすべてのグッズを買っているわけではない。
本当に欲しいやつや推しキャラのグッズだけを集めている。
フィギュアに関しては一応全種類揃っているけど。
「まぁ、フィギュアだけなら不可能ではないかもだけど……」
「では、フィギュアは全部揃えることにしましょう。細々としたグッズは揃えれたら揃えるってことにしましょうか」
「そうね」
「そうだね~」
これからどれだけのフィギュアが登場するか分からないが、四人の財力なら見逃さなければ、すべてのフィギュアを揃えられるだろうと思った。
有紀もアリスもお嬢様だし、彩海は自分で稼いでるし、俺も親の残してくれた財産がある。
「それにしてもゲーセンに行くの久しぶりだね~」
「そうですね」
「ドリクエのフィギュアが入荷された時しか行かないものね」
「だね~。久しぶりにプリクラ撮りたいな~!」
「いいですね。撮りましょう」
「そうね。撮りたいわね」
前回ゲームセンターに行ったのが六月下旬、俺たちが出会って一週間後くらいだったから、三週間くらい前になる。
その時もプリクラを撮ったし、ゲーム対決もした。
その時のプリクラは大事にしまっている。
「ゲーム三本勝負もしちゃう?」
「そりゃあ、やるに決まってるだろ」
「早く四個取ることができたらね」
「アリスのボイトレが一時からで、ゲームセンターの開店時間が十時。お昼ご飯を食べる時間を考慮すると、制限時間は二時間ってところか~」
「まぁ、四個取るのに二時間もかかんないだろ」
「たしかに~。櫂がいれば余裕か~」
「そうね。前回もサクッと全部取ってたものね」
「じゃあ、ゲーム対決できそうだね」
「前回は櫂にボロ負けだったから今回は勝たせてもらうわ」
「私だって負けないから!」
「私も負けません」
「俺だって絶対に負けないから」
「明日が楽しみだ~」
「そうね」
「そうですね」
「そうだな」
お昼ご飯を食べ終えた俺たちは学校の課題に取り組んだ。
毎日なんだかんだコツコツとやっていたから、後数日で終わりそうで、このペースでいけば、夏休みの半数以上は残りそうだった。
☆☆☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます