第17話 3日目(月)② 櫂の水着を買いに行く
お昼ご飯を食べた俺たちはラッシュガードと俺の水着を買うためにショッピングモールにやって来ていた。
「じゃあ、まずは私たちのラッシュガードを買いに行きましょうか」
「は~い」
ラッシュガードは水着売り場にあった。
そこには男性用の水着も売ってあったがまずはアリスが言ったように三人分のラッシュガードを買うことになった。
「せっかくだし櫂に選んでもらいましょうか」
「賛成~」
「そうですね」
「櫂~。私たちに似合うやつ選んで~」
「責任重大だな」
店内にはいろんなラッシュガードが並んでいた。
中にはフードが付いたラッシュガードもあった。
黒はさすがに暑いだろうから、黒以外から選ぶことにした。
とはいえ、有紀と彩海は決まっている。
「有紀は白だよな。彩海は赤だな」
俺は白色と赤色のフード付きのラッシュガードを二人に渡した。
「アリスはそうだな。黒は暑いだろうから水色とか?」
「櫂が選んでくれたなら何でもいいわ」
「じゃあ、水色で」
俺は水色のフード付きのラッシュガードをアリスに渡した。
「それじゃあ、次は櫂の水着ね」
男性用の水着コーナーに移動した。
店内には俺たちと同じように水着を買いに来たお客がたくさんいた。
その大半がカップルで一緒に水着を選んで楽しそうにしている。
「来年はお店で一緒に水着を買うのもいいわね」
「だね! 櫂に私に似合う水着を選んでもらいたい!」
「いいですね。楽しそうです」
三人は来年のことを想像して楽しそうに笑い合っていた。
その中に俺が入っていることに俺は嬉しかった。
「そういうわけだから、来年は櫂が私たちに一番似合う水着を選んでね!」
「分かった」
「さて、それじゃあ、櫂が一番気に入った水着を選んだ人が勝ちっていう勝負でもする?」
彩海がアリスと有紀にそう提案した。
「面白そうね」
「いいですよ。やりましょうか」
「櫂に選んでもらった人はどうする?」
「そりゃあ、櫂から何かご褒美でしょ!」
「ご褒美か。何をすればいいんだ?」
「それは勝った人が決めるってことでいいんじゃない?」
「分かった。俺にできることならなんでもするよ」
「決まりね!」
彩海は指をパチンと鳴らした。
「それじゃあ、それぞれ櫂に似合うと思う水着を一着選んでここに集合ってことでいい?」
「いいわよ」
「分かりました」
「ナンパされたらすぐに呼べよ?」
「は~い!」
「了解」
「分かりました」
三人はバラバラに分かれて水着を選びに行った。
俺は試着室の前に設置されていた椅子に座って三人が戻って来るのを待つことにした。
待っている間、俺は三人のうちの誰かの声が聞こえたらすぐに助けに行けるようにずっと警戒していた。
☆☆☆
店内に男だけで来ている人があまりいないからか、三人はナンパをされることなく俺の元に戻ってきた。
「誰からいく?」
「は~い! 私からいく~!」
彩海が元気よく手を挙げた。
「じゃあ、彩海からね」
二人に見えないように彩海は俺に水着を渡してきた。
「私たちはここで待っとくから着てきて!」
「分かった」
俺は彩海から渡された水着を持って試着室の中に入った。
彩海が渡してきたのはシンプルな水着だった。
黒色で横に赤色の線が一本入っている水着だった。
彩海ならもっと派手な水着を選ぶかと思っていたから予想外だった。
でも、これくらいシンプルな水着の方がいい。
派手なのはあまり好きではなかった。
「てか、水着の試着って直に履いてもいいのか?」
初めての水着の試着に勝手が分からなかった俺は試着室から顔だけ出して三人に聞くことにした。
「なぁ、水着の試着って直に履いてもいいのか?」
「パンツの上からの方がいいかもね」
「分かった」
俺は言われた通りに下着の上から水着を着た。
そして試着室から出た。
「意外ね。彩海なら派手な水着を選ぶかと思ったのに」
「ですね」
「櫂は派手なやつは苦手かな~って思ってこれにしてみた!」
「彩海には余裕で勝てると思ってけど、これは誰が勝つか分からなくなったわね」
「で、櫂の感想は~?」
「うん。シンプルで俺は好きだな」
「だよね! それにしてよかった~!」
彩海は嬉しそうにその場で飛び跳ねた。
「勝負だからね! 二人に負けたくないし、櫂からのご褒美も欲しいしね!」
「私も負けるつもりはないから。次は私の番でいい?」
「構いませんよ」
俺はアリスから水着を受け取って再び試着室に戻った。
アリスが選んだのも黒色で横に青色の一本線が入っているやつだった。
彩海と同じやつの線の色が違うだった。
アリスが選んだ水着を着て試着室を出た。
「え~! 私と同じじゃん!」
「考えてることは同じということよ」
「どうやらそのようですね」
「もしかして有紀も!?」
「それは櫂君に来てもらってからのお楽しみです」
そう言って微笑んだ有紀から俺は水着を受け取って再び試着室に戻った。
「仲が良いのか、俺が分かりやすいだけなのか」
有紀に渡された水着は二人と同じだった。ただし線の色は白色だった。
三人とも同じ水着では勝者を選ぶことが出来ない。
そう思いながら俺は試着室から出た。
「彩海も一緒じゃん!」
「これじゃあ勝負にならないわね」
「どうしましょうか?」
「引き分けにするか、その三着から櫂が履きたい物を選んでもらうかのどっちかね」
「さすがに選んでもらおうよ。勝負だし」
「そうですね」
「そういうことらしいから、櫂。その三つの中から一つ選んでくれる?」
「マジか……」
「そんなに難しく考えなくても今回着たい水着を選べばいいのよ」
「て言われてもな。正直、線の色が違うだけだしな。引き分けじゃダメか?」
「それだと櫂からのご褒美がないじゃん!」
「じゃあ、全員が勝ちってことで」
「その場合ご褒美はどうなるの?」
「三人が欲しいなら、ご褒美ありでいいんじゃないか?」
「まぁ、櫂がそう言うならそれでいいけど……」
「仕方ないわよね。三人とも同じ水着を選んだんだから」
「そうですね。まさか三人とも同じ水着を選ぶとは思ってもいませんでしたけどね」
「それね! 私たち仲良すぎでしょ! 三人ともバラバラに水着選んでたのに!」
「そうね」
「ですね」
三人は顔を見合わせて笑い合った。
それが三人の仲の良さを物語っていた。
「本当に仲良いな」
「中二からずっと一緒にいるからね~」
「毎日ゲームしてれば仲良くもなるわよ」
「そういうこと!」
「で、勝負は全員勝ちということにするのはいいけど、櫂はどの水着を買うの?」
「それだよな」
この三着の中から選んだら、その人が本当の勝ちみたいになる。
だから、この三着から選ぶことは出来ない。
けど、せっかく三人が選んでくれたのだからこの水着を買いたい。
「ちなみにこれって他にも色違いがあったりするのか?」
「たしかあったと思います」
「じゃあ、それを買うかな」
「まぁ、そうなるわよね。じゃあ、買いに行きましょう」
そういうわけで、俺は三人が選んでくれた水着の色違いの黄色の線が入ったやつを買うことにした。
目的の物を買った俺たちはショッピングモールを後にして家に帰った。
☆☆☆
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