第16話 3日目(月)① 櫂の水着を買いに行く
「二人とも準備はいい?」
「バッチリ!」
「大丈夫です」
ソファーに座っている三人はスマホを握りしめて待機していた。
昨日話していた水着を買うためらしい。
なんでも、みよめぐ姉妹が宣伝をした商品は即日完売することは当たり前らしく、販売開始してから一時間以内に完売することもあるらしい。
だから三人は五分前から待機をしていた。
「絶対に買うのよ」
「絶対に買います」
「買ってみんなで海に行くんだからね!」
どうやらそういうことになったらしい。
無事に三人が水着を買うことが出来たら海に行くらしい。
もちろん俺は海になんて一度も行ったことはない。
「もうすぐ販売がスタートするわよ」
五分が経ち十時になった。
「十時になった!」
三人は一斉にスマホを操作し始めた。
「買えた!」
「私も買えました」
「私も買えたわよ」
「みんな買えたね!」
「そうね」
「よかったですね」
無事に水着を買うことができた三人はハイタッチを交し合った。
「無事に買えたみたいでよかったな」
「これで海に行けるよ!」
「海か。行ったことないな」
「そうなの?」
「行く相手もいなかったし、行こうとも思わなかったからな」
「そっか~。じゃあ、これからは毎年行こうよ! 行く相手いるし、私たちと一緒だったら行きたいって思うでしょ?」
この美少女三人に誘われて行かない男なんていないだろう。
もちろん行きたいと即答したいところだが、正直あまり乗り気で頷くことは出来ない。
「まぁ、行きたいとは思うけど……」
「けど?」
「行ったら絶対にナンパされるだろ。三人が」
この三人が海に行ったらナンパされるのは目に見えていた。
「なるほどね。つまり櫂は私たちの水着姿を独り占めにしたいってわけね」
「そうなの?
「まぁ、そうなるのかもな」
三人の水着姿を独り占めしたいなんて贅沢かもしれないが、他の男に見せたくはないと思っている自分がいた。
「どうしても櫂が私たちの水着姿を他の男に見せたくないって言うなら、別に海には行かなくてもいいわよ」
「そうだね~。櫂に嫌な思いさせるのは嫌だし、海に行くのはやめとく?」
「そうですね。もちろん水着姿は櫂君にしか見せるつもりはありませんけど、そういうことなら海に行くのはやめておきましょうか」
「いいのか? 三人は海に行きたいんじゃないのか?」
「そりゃあ、ちょっとは行きたい気持ちあるし、櫂と一緒に海で遊びたいって気持ちはあるけど、櫂が嫌な思いするなら別に無理して行かなくてもいいかな~」
「そうね。櫂が嫌なことを私たちもしたくないし」
「そうですね」
三人は俺に合わせようとしてくれている。
俺が行きたくないと言えば海には行かないだろう。
他の男には水着姿を見せたくないという気持ちと三人と海に行って遊びたいという気持ちが俺の中にあった。
どちらも半々くらいの割合だ。
俺の気持ちと彩海たちの気持ちをどっちも蔑ろにしない方法は何かないのだろうか。
「三人の水着姿を他の男に見せたくないけど、三人と一緒に海で遊びたいとも思ってるって言ったらどうする?」
「そうね。一つだけ方法があるにはあるけど。結局、それでも私たちがナンパされるのは回避できないと思うのよね」
「その方法って?」
「櫂の前以外ではラッシュガードを着て水着を見せないようにすることかな」
「ラッシュガードって何だ?」
「う~ん。簡単に説明すると、海で着る上着みたいなものかな。足も隠せるわよ」
「そんなのがあるんだな」
「だから、櫂以外の男の前ではそれを着てれば海で他の男に私たちの水着姿を見せることなく一緒に遊べるんじゃない? まぁ、さっきも言ったけどナンパを回避するのは無理でしょうけど。どうするかは櫂が決めて? ちなみにラッシュガードはこんな感じね」
そう言ってアリスがラッシュガードの画像を見せてくれた。
たしかにラッシュガードを着ていたらアリスの言う通り水着は見えなさそうだった。これを着ていたら他の男たちに三人の水着姿を見られることはないだろう。
その点はラッシュガードを着てもらえれば大丈夫そうだ。
そもそも、水着を着ていなくても三人はナンパをされるのだから、水着を着ていようと着てなかろうとその結果は変わらないのかもしれない。
だったら、ナンパされることは仕方ないとして、三人と一緒に海で遊ぶという思い出を作った方がいいのではないかと思った。
(もし、三人がナンパをされても俺が守ればいいだけだしな)
どんな相手が来ても三人を守り切る自信が俺にはあった。
「分かった。じゃあ、海にいる時は絶対にそれを着ててくれ。せっかく三人が水着を買ったんだし海に行こう」
「いいの?」
「あぁ、ナンパされても俺が必ず守る」
「カッコいい~。櫂がいるなら安心か~」
「そうですね。櫂君がいるなら安心して海で遊べそうです」
「そうね。なんだかんだ、私たちもナンパされるのが鬱陶しくて海に行ってなかったから、櫂が守ってくれるって言うなら行きましょうか」
「ほんとそれ。去年なんてそのせいで一回しか行けなかったよ~。海にいたら次から次へとナンパしてくるんだもん。本当はもっと行きたかったのに!」
「彩海ちゃん。ずっと言ってましたよね。海に行きたいって」
「だから、櫂。ちゃんと私たちのことを守ってよね。ちゃんと守ってくれたら私たちの水着姿独占させてあげるから」
そんなことを言われたら何が何でも守り抜かないといけない。
「分かってるよ。三人には指一本触れさせないから」
「決まりね。じゃあ、お昼から私たちのラッシュガードと櫂の水着を買いに行きましょうか海に一回も行ったことがないって言ってたから水着持ってないんでしょ?」
「持ってないな」
「もちろん私たちが選んでもいいわよね?」
「好きにしてくれ」
そういうわけで、三人と一緒に海に行くことが決定し、お昼からラッシュガードと俺の水着を買いに行くことが決定した。
☆☆☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます